今回は人体の不思議に纏わるネタ三連発。いかにも怪しげなこの番組向きである。
人体発火現象の謎
最初は人体発火現象。なぜか人体だけが激しく燃焼してほぼ灰になっているが、部屋自体には焼け焦げた跡は部分的にしか残っていないという現象である。実際にそういう不審な死が今までにいくつか目撃されている。
人体が発火すると言えばガソリンスタンドなどで静電気で引火などと言う事故が良くあるが、これはあくまで燃えているのはガソリンであり人体ではない。そもそも燃焼が継続するには可燃性ガスが継続的に発生する必要がある。水分が60%と言われる人体にそれだけの可燃性ガスを発生するものが存在するのだろうか。
人体に存在する可燃物と言えば脂肪が考えられる。元火葬士の経験があるという作家の下駄華緒氏によると人体はよく燃えるとのこと。特に脂肪の多い人は燃えすぎることがあるという。もっともその時の温度は700~1200度のことなので、その場合は部屋は全焼である。
ここで登場するのがロウソク効果説である。人体発火というと人体が一気にバッと燃え上がるというイメージがあるが、そうではなくて何らかの火種が身体を溶かして脂肪の一部が服などにしみこみ、それがロウソクの芯の働きをして身体の脂肪を溶かしつつ燃え続けていくというものである。人体発火という言葉に惑わされたのでイメージが違っていたが、原理的にはあり得るという話。
実はこのロウソク効果は中国では既に2000年近く前に実験によって検証されている。後漢末に暴虐の限りを尽くした独裁者・董卓の死体が晒された時、そのへそに芯を立てて火を付けたところ、巨漢であった董卓の死体は数日にわたって燃え続けたという実験報告の記録が残されている。
剣でも死なない不死身の男
二つめの話題は不死身の男。第二次大戦後に話題となったミリン・ダヨという人物は、身体にフェンシングの剣であるフルーレを身体に刺しても元気に動き回れて死なないという芸を見せていた。実際に医師立ち会いで実験したところ、確かに血も流れずミリン・ダヨ自身は至って元気であり、しかも剣は殺菌もしていないのに彼は感染症になることもなかったという。これには医師も頭を抱えたという。
彼はナチスの絶滅収容所に収容されたことがあり、そこから脱走した時に背後から何発もの銃弾をうけたにも関わらずに生き延びたことから、自分は神の力で不死身になったと確信していたとか。ただ血が流れないことなどは意図的に身体に何カ所かの穴を開けていたのではとの推測もなされていた。いわゆるピアスの穴と同じ原理である。
なおその後の彼は、啓示を受けたとして30センチの釘を飲み込むという行為を行った後に、その釘が内臓などを貫通してそれが原因で死亡したとのこと。その後解剖を行ったところ、体内の多くの臓器が傷ついていたことが判明したとのこと。つまりは彼は決して不死身というわけではなく、その内臓は普通にダメージを蒙っていたらしい。痛みを感じないことについては無痛症など痛覚神経に障害があった可能性が考えられるが、彼がその状態で生き延びていたことには今でも謎はあるようだ。なお番組では「決して真似をしないでください」とのことだが、こんなものを真似して命を落とすような馬鹿のことまで責任持てるかというのが本音だろう。
魂の重さを測定したという医師
最後は魂の重さ。これは医師のダンカン・マクドゥーガルが臨終に瀕した患者の体重変化を観察したところ、臨終の瞬間に21グラムの体重の減少を観察、人の魂が質量を持った物質であると考えていたマクドゥーガルはこれを魂の重さであると判断した。
後にこのマクドゥーガルの実験が公になったことで彼の研究は様々な批判を浴びることになったという。まずは倫理的側面である。
ただそれ以上に言われたのは実験の厳密性であると言う。彼の実験の条件はかなりいい加減なところがあり、科学的検証には耐えないという指摘があったという。また人体は二酸化炭素の発生や水分の蒸発などによって常に微量の体重の変化はあり、どの時点を以て観察するのかという一番の問題があった。実際に彼はその後に何度か実験を行ったが、結局は体重は減る場合もあったら増える場合まであり、その値もバラバラで一貫した結果は得られなかったという。
また近年ではそもそもどの時点を以て死と見なすのかという根本的な問題も存在している。結局はマクドゥーガルの実験はあまりにも恣意的なものとして、今日ではほとんど相手にされていないとのこと。
以上、人体の不思議に関する話なんだが、タネが分かってみたらオカルトでもなんでもないというものばかりで、現実には世の中に存在するオカルトのほとんどはこういうものばかりである。オカルトネタを科学的に検証するというこの番組らしい内容であった。
忙しい方のための今回の要点
・人体発火現象と見られる事例が過去に何件か観測されている。それは人体のみが灰になるまで燃焼しているが、部屋などには燃焼跡が見られないという事例である。
・これについてはロウソク現象で多くが説明されている。これは何らかの理由で意識を失うなどをした人体の一部に火がつき、それが脂肪を溶かしてシャツなどにしみこみ、それがロウソクの芯となって身体の脂肪を溶かしながら燃え続けると言うものである。
・第二次大戦後、剣を刺しても死なない不死身の男ミリン・ダヨが登場した。彼は剣を刺しても痛みもなければ血も出ずに元気であると言う。ただ彼の死後に死体の解剖では内臓に多くの傷が見つかり、実際はダメージがなかったわけではないことが分かったという。
・医師のダンカン・マクドゥーガルは患者が死亡した際に21グラムの体重減少があったとして、これを魂の重さと考えたが、この実験には実験条件の厳密性に疑問が持たれており、今では科学的には相手にされていない。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・ミリン・ダヨについては無痛症に始まり、いろいろな意味で神経がかなり麻痺していたということが考えられそうです。つまりは実際は身体はボロボロになっていたにもかかわらず、彼自身は命を落とすまでそのことに気づかなかったと。実際に彼は2年ほどで亡くなっているようですから。
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