教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/20 サイエンスZERO「おっぱいの科学 "神秘の液体"の謎に迫る」

動物で異なるのおっぱいの成分

 哺乳類は子供におっぱい(母乳)を与えて育てるのを特徴としているが、このおっぱいには様々な特徴があるのだという。そのおっぱいの科学を紹介する。

 帯広畜産大学のおっぱい博士こと浦島匡教授は、母乳の成分を30年以上研究している。彼は世界中の様々な動物のおっぱいを50種類以上調査したが、生物や生態によってその成分は異なるという。おっぱいの主な成分は水分、糖、タンパク質、脂質などであるのはどの動物でも共通している。しかしその組成が異なるのだという。例えばタテゴトアザラシのおっぱいは脂肪分が多くてドロドロしている。牛のおっぱいの栄養分が1割程度で大半が水分なのに対し、タテゴトアザラシのおっぱいは脂質が大半である。

 タテゴトアザラシは寒い海の氷の上で暮らすため、この寒さに耐えるには分厚い皮下脂肪が必要である。しかも赤ちゃんの授乳期間はわずか二週間。この間にタテゴトアザラシの赤ちゃんは体重10キロから40キロに増加するのだという。この間に脂質の多いおっぱいを飲んで皮下脂肪を蓄えるのである。

 一方、キリンのおっぱいはかなりサラサラしている。これは赤ちゃんに水分を補給させるためだという。またキリンは授乳期間が長いので栄養分を大量に与える必要がないのだという。一方の人間のおっぱいだが、牛などに比べると糖が多いのが特徴である。これは巨大な脳を維持するためのものであると考えられる。なおキリンのおっぱいは最初はやや濃いめだが、これが出産から日にちが経つと薄くなるのだという。この時期から赤ちゃんが自ら葉を食べるようになるからだという。

 

スナメリの人工哺育

 人工哺育の現場では与えるミルクをおっぱいに近づけることが重要である。鳥羽水族館では2013年にスナメリの赤ちゃんが生まれたのだが、生後2日目に母親が母乳を与えなくなってしまったのだという。赤ん坊を救うために人工哺育が決定され、手探りで進められることになったという。最初はアザラシなどの人工哺育に使われていた犬用ミルクを使用してみたのだが、うまくいかず赤ん坊の体重は減っていった。血液中のタンパク質の量が減少していることが判明した。そこでスナメリのおっぱいを調べたところ、犬用ミルクよりも脂質やタンパク質が多いことから、犬用ミルクにサーモンオイルや生クリームを加え、さらに人間用のアミノ酸補給薬も加えたという。その結果、赤ん坊は順調に育つことになったという。

 

おっぱいの発祥と最新研究

 このおっぱいは進化の歴史から見れば、元々は汗から発生したものだと考えられるという。実際に原始的な哺乳類であるハリモグラは乳首がなく皮膚からにじみ出す体液を子供に舐めさせるという。この体液には殺菌作用を持つリゾチームを含んでいるという。このリゾチームが母乳の成分であるαラクトアルブミンに突然変異し、そのことが殺菌作用だけでなく栄養も与える母乳へと進化したのだという。このことによって哺乳類は環境適応力が高くなったのである。

 また病原体から赤ちゃんを守るタンパク質は多様に進化したという。人のおっぱいには病気から守るための成分が含まれている。その中でも糖には乳糖とミルクオリゴ糖の2種類があるが、ミルクオリゴ糖は腸内で病原菌やウイルスと結合することで病気を防ぐのだという。

 この機能を粉ミルクに与える研究が進められている。その開発に世界で初めて成功したのは日本の企業だという(ここで番組では研究員の胸に書いてあるKIRINの文字がチラッと見える)。人の母乳には250種ぐらいのミルクオリゴ糖が含まれているが、微生物を使用することでミルクオリゴ糖を作り出すことに成功したのだという。3つのミルクオリゴ糖の大量生産に成功したとのこと。

 

 以上、おっぱいについて。おっぱい博士によるとおっぱいとは「神秘」であるとか。確かに母乳保育の方が赤ちゃんが病気になりにくいというのは昔から言われています。恐らくまだ知られていない機能も秘めているのではないかと思われます。

 また母親が母乳を与えることによって赤ん坊とコミュニケーションするということの心理的効果なんてのも前から言われているところです。母と子の絆というものは、未だに科学では完全に解明しきれないものが含まれているのでしょう。

 ところで今回、やたら「おっぱい」という言葉が出てくるのですが、これで私のブログがエロブログに分類されてしまわないかちょっと心配です(笑)。ちなみに私のメインブログである徒然草枕の方は、ドラマ「ライジング若冲」を紹介したせいで、BLというキーワードでたどり着く人が増えており、ボーイズラブ系ブログと勘違いされているのでは? なんてこともあったりしましたが(笑)。

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忙しい方のための今回の要点

・哺乳類のおっぱいは生物や生態で異なる。寒冷地で子育てするタテゴトアザラシは、赤ん坊が迅速に皮下脂肪を蓄積するために脂質の多いおっぱいを与える。
・一方のキリンは授乳期間が長いこともあり、水分補給のための薄いおっぱいを出すという。
・おっぱいはそもそも汗などの体液から進化したと考えられる。
・人の母乳に含まれるミルクオリゴ糖は、腸内の細菌やウイルスと結合することで病気を防ぐ効果がある。
・このミルクオリゴ糖を粉ミルクに人工的に加える研究が世界中でなされており、日本のメーカーが初めて3種類のミルクオリゴ糖の大量合成に成功した。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・粉ミルクも昔に比べると進化したものです。もっとも私の世代は粉ミルクと言えば森永のヒ素ミルク事件の記憶があるために、どうも良くない印象がすり込まれています。

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