教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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6/20 TBS系 世界遺産「北米で最古!カナダのリドー運河」

北米最古の運河

 今回の世界遺産は北米最古の190年前に作られたカナダのリドー運河。全長202キロに及び、カナダの首都のオタワとオンタリオ湖に臨むキングストンをつないでいる。


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 カナダの首都はかつては木材の集積所があるだけの小さな村だったという。リドー運河はここから始まる。ここにはまずはオタワロックと呼ばれる8つのゲートで船を25メートル上昇させるシステムが設置されている。ゲートの操作は手動で行われており、運河が完成した頃のシステムがそのまま利用されている。25メートルを登るのに1時間半を要する。

 ここを登り切ると運河を進むことになる。この運河は天然のリドー川に沿って流れているが、天然のリドー川は結構急流であると言う。やがて運河は12メートルの高低差を越えるロックを通ってからリドー川に合流する。河の水位を調整するための人工の湖が作られている。

 

手動で運用される長閑な運河は、実は戦争のために作られたものだった

 ここからはしばし天然のリドー川を通る。実は全行程202キロの内、人工的に作った運河は19キロ程度だという。だから6年で運河は作られたのである。ほとんどが天然の河川であるために沿岸の風景は昔と変わらない。ロックの前には船の待機のためのスペースが作られており、ロックステーションと呼ばれる。運河の旅は急いではダメなのである。

 運河には手動で回転する橋なども存在する。これも昔からのシステムだという。水門の開け閉めはロックマスターと言われる人々が手動で行う。また扉は木製であり、20年ほどで新たに作られる。その製造方法は昔からほとんど変わらず、金具は傷むまで使用される。人の手によって運河は守られているのである。

 蒸気船を運航するために運河の水深を増やす必要があることから、各地に堰が作られており、その横には高低差を克服するためのロックが設置されている。

 オタワの運河は冬になると凍結するので、全長7.8キロの世界一長いスケートリンクとして解放されるという。

 運河の旅の最後は運河を下っていくことになる。18メートルの高低差を4段のロックで降りていく。全部で45あるロックを通過するだけで11時間かかるという。そして最後のロックを越えるとようやくオンタリオ湖に到着する。この沿岸のキングストンはかつてアメリカと緊張状態の時に要塞が築かれ、そこに人員や物資を運ぶために作られたのがリドー運河だという。しかし結局は戦争に使われることはなく、そのまま運河が残った。

 

忙しい方のための今回の要点

・カナダには190年前に作られた全長202キロの北米最古のリドー運河がある。
・運河は首都のオタワとオンタリオ湖畔の町であるキングストンをつないでいる。
・高低差はロックと呼ばれる閘門で通過するが、これらの操作はロックマスターと呼ばれる人々の人力でなされている。
・また全行程の内のほとんどは自然の河川や湖を使用しているため、人工的に掘削されたのは19キロに過ぎず、そのために6年で開通した。
・元々はアメリカと緊張状態になった時に、最前線のキングストンに築かれた要塞へ人員や物資を輸送するために作られた。しかしこの運河が戦争に使われることはなかった。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあこの長閑さはいかにもカナダって感じです。しかしこの長閑さに反して、そもそもの目的は戦争のためだったんですね。

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