教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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6/27 TBS系 世界遺産「ベトナム最後の王朝 古都フエ」

ベトナム最後の王朝の都

 今回の世界遺産はベトナム最後の王朝が築いた都・フエの建造物群。


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 フォン川の畔にある古都がフエ。川沿いに王宮が建築されている。王宮内には宮殿や楼閣が並び、その周りに旧市街が存在し、総延長10キロの城壁で囲まれている。フォン川から引き入れた水による堀が作られている。独得の出っ張りある城壁はフランスから伝わった城塞様式である。王朝が生まれた19世紀はヨーロッパ諸国がアジアに進出していた時期で、ベトナムはフランス影響を大きく受けているという。

 さらに王宮は中国の様式を手本にしている。黄色や竜という中国でも皇帝のシンボルだったものが使用されている。王宮の中心は宮廷儀式などが行われた太和殿。この宮殿は中国を参考にしながら、二棟造りと言われる独得の構造を取っている。広い室内の中央に皇帝の玉座が据えられている。

 

各皇帝が趣向を凝らした墓が残る

 さらに川沿いには仏塔を備えた寺院や皇帝の墓が建てられている。川の畔に建てたのは人工の池に水を引き込むためだという。皇帝ごとに趣向を凝らした墓が建てられている。中国のものを参考にした皇帝もいるが、山の斜面にヨーロッパの宮殿のような建物を建てたカイデン帝廟はフランスの建築家が設計したものだという。建物にはコンクリートが用いられている。中国と西洋が混ざった折衷様式で10年以上建設にかかったという。内部の装飾はベトナム独自のモザイク装飾で飾られている。瓶や陶器の破片が使用されており、中には日本のビール瓶もあるという。これが最後の皇帝となり、1945年に王朝は滅亡、フエの都も戦火に覆われる。

 ベトナム戦争の激戦地となったフエは多くの建物が失われて王宮も荒れ果てた。しかしその後に王宮の再建が始まった。全土から職人が集まって装飾品の製作などの作業が行われ、王宮は元の姿を取り戻しつつある。宮廷劇場は数少ない戦火を免れた建物であり、ここでは今も公演が行われている。

 

忙しい方のための今回の要点

・フォン川湖畔の古都・フエはベトナム最後の王朝の都である。
・王朝誕生の19世紀はヨーロッパのアジア進出がさんかだったことから、フエの町もフランスの影響をかなり受けており、都市はフランス式の城塞で囲まれている。
・王宮の建物は中国様式に倣っているが、その中にベトナム独自の様式を取り入れている。
・河畔には王の墓が存在するが、王ごとに趣向を凝らしている。最後の王のカイデン帝廟はコンクリートを用いてフランス式のデザインが取り入れられている。
・しかし王朝は1945年に滅亡、その後フエはベトナム戦争の激戦地となって荒れ果てた。しかし近年、王宮などの再建が始まってかつての姿を取り戻しつつある。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・かなり時代がかった印象のある王宮に対して、都市の作りはヨーロッパ的で非常にごった煮な印象を受ける町です。その辺りがなかなかに興味深いです。

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