氷山を生み出す海
世界最大の島グリーンランドのイルリサット・アイスフィヨルドは北半球で最大の氷山を生み出す海である。
小さな町イルリサットの沿岸には大小様々な氷山が浮いている。大きな氷山は最早島のようにしか見えない。高さ30メートルを越す氷山がゴロゴロと浮いているのである。
これらの氷山は湾の奥のフィヨルドからやって来ている。フィヨルドの長さは70キロ。これが氷山で埋まっている。その氷の量は350億トンとも言われている。動いていないように見える氷山だが、実はゆっくりと移動している。内陸に広がる氷の平原が氷河として流れ出し、これがイルリサットのフィヨルドの奥に流れ出しているのである。その末端からは海に氷が落ちていき、これが新たな氷山となる。氷山は1年ほどフィヨルドの中を漂って外海に流れ出していく。
氷山が生み出す恵みと気候変動の影響
日本列島の6倍という面積の8割が氷で覆われている島・グリーランドの氷の厚さは、厚いところで3000メートルはあるという。この島には寒さに適応したホッキョクグマやジャコウウシが棲息している。一面の氷床の重みで島の中央部は海抜マイナス300メートルまで凹んでいる。もし全部の氷が溶けたら地球の海水面が7メートル以上上がるという。氷河は1日19メートルという世界最速の速度で流れ出している。
氷山は動かないように見えて、実はひっくり返ることが多いという。表面に滑らかな部分が見える氷河は一度海水に浸かって溶けた印だという。氷山は海面の下が巨大で、見えているのは全体の1割だという。その巨大な海中部分が溶ける時に深海から水流が湧き上がり、それが深海の栄養分を持ち上げることでプランクトンが繁殖するので、それを求めて魚が集まるという。だから近くの漁師は氷山の近くで漁をする。氷山は恵みも与えるのである。しかしこの氷山の一つがかつてタイタニック号の悲劇を起こした。ここを出た氷山は2年かけて大西洋を1800キロ流れてカナダの沖で溶けて消えるのだという。
氷の中にはかつての空気が閉じ込められているため、氷柱を切り出して過去の気候変動を調査する研究が行われている。そのグリーンランドでは近年、氷河の末端が急激な速度で後退して行っていることが確認されている。2000年以降は特に速度が上がっており、2019年にはたった1日で110億トンの氷が溶けたと言われている。地球温暖化の影響は明らかに現れているのである。
忙しい方のための今回の要点
・グリーンランドのイルリサット・アイスフィヨルドは北半球最大の氷山を生み出す海である。
・イルリサットの湾の奥にフィヨルドがあり、フィヨルドは一面氷で覆われている。その奥では氷河から流れ出した氷が海に落ちて氷山となっている。その氷山は1年ほど滞留してから外海に流れ出す。
・グリーンランドは一面の氷床に覆われており、厚いところでは3000メートルを超える。この氷がすべて溶けたら海面が7メートル上昇すると言われている。
・氷山は水中部分が9割であるが、海中で溶けることで深海からの水流を作り、それが栄養分を運んでプランクトンを増やすので、氷山周辺は好漁場でもある。
・しかしグリーンランドの氷河も地球温暖化の影響で、近年急激に後退が起こっている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・ここでも地球温暖化です。この番組は氷河ネタが多いですが、いずれの氷河でもこれが現れてますね。
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