NASAが無人探査車による火星調査を開始
2021年2月、NASAは火星探査車パーシビアランスの着陸に成功した。パーシビアランスはこれから火星の生命探索などの調査を行うという。このパーシビアランスについてNASAのエンジニアである小野雅裕氏に話を聞いている。
今回探査されるのは火星赤道付近の直径45キロのジェゼロ・クレーター。ここはかつて数百メートルの水を湛えていたと考えられている。パーシビアランスはこの中のかつて川が流れ込んでいたと考えられる三角州を探査することになっている。三角州では地球でも生命の化石がよく見つかることから、火星の生命の痕跡が発見されることが期待されている。
スタジオではパーシビアランスを再現しているが、奥行き3m幅2.7m高さ2.1m重量1tとのことなので思いの外大きい。アルミ製の6輪で走行するそうだが、時速0.15キロとのことであり、かなりゆっくりと動く。これはトルクを重視したのと、やはり安全性のためだとか。
サンプルを採取してサンプルリターンを試みる
さらに地表に穴を開けてサンプルを採取する装置が付いており、このサンプルは容器に入れて内部に格納され、そのサンプルは決まった場所に集めるのだという。そして集められたサンプルはヨーロッパが送り込んだ別の探査車が回収して、ロケットで打ち出してサンプルリターンするという計画になっているという。火星の気温はマイナス80度だが、装置が安定して動くようにするには40度ほど温度を上げる必要があるので、そのために装置を温めるヒーターの設置などに工夫が必要だったとか。
またカメラが搭載されおり、さらにはレーザーで岩を溶かしてプラズマを出し、それをカメラで分析することで成分が分かるという仕掛けもあるという。また複数のカメラを搭載しているので、立体視が可能でそれによって自ら進むべき進路を自律的に判断するのだという。さらに電気で二酸化炭素から酸素と一酸化炭素を作ることも出来るとのこと。
小野氏が担当したのはパーシビアランスの自律走行だという。以前のキュリオシティは地上からの操作で走行するのが50メートル、自律的に走行するのが30メートル程度だったが、それがパーシビアランスでは自律走行で150~200メートルも走行できるようにしたという。そのために必要なのが自ら進路を判断するシステムだが、今回は人工知能の能力を高め、ちいさな障害物なら乗り越えるようにしたという。また二手三手先のルートまで3000パターンものルートを考えてルート選択するようにアルゴリズムを強化したという。6メートルぐらい先までのルートを計算し、それを1メートル進むごとに再検討するのだとか。
番組では夏休み企画と言うことで、将来宇宙関係の仕事をしたいと考えている小学生4人が小野氏に質問という形式になっていたが、以前にもこの形式をとったことがあるが、この番組に登場する小学生って賢すぎ。普通の小学生がほとんどこのレベルになれば日本の将来は明るいが、現実にはこれはトップのほんの一部の小学生だろう。どうやってこんな優秀な連中を集めてきたのかも興味深かったりする。
もし火星に生物の痕跡が見つかるとすればバクテリアの化石というところだろうか。しかしそれの直接の観察というのはかなり困難だろうから、パーシビアランスでサンプルを集めておいて、サンプルリターンということになるのだろう。成果に期待したいところである。しかし結局のところは最後は有人探査して現地で調査するしかないような気もするんだが。もっとも人間を送ってしまったら、そのことによる環境汚染が絶対発生するから、そのことも問題になるんだろうが。
忙しい方のための今回の要点
・2021年2月、NASAの火星探査車パーシビアランスが無事に着陸に成功して、生命の痕跡の調査を開始した。
・パーシビアランスが調査するのはかつて湖の底だったと考えられるジェゼロ・クレーターにある三角州の部分。
・採取したサンプルは特殊な容器に詰められ、ヨーロッパが送り込む別の無人探査機によってロケットで打ち上げられてサンプルリターンする予定。
・今回のパーシビアランスでは自律走行のアルゴリズムが強化されているので、かつてのキュリオシティよりも長距離を自律走行できるようになっている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・いずれは火星のテラフォーミングなんてことも現実的に考えられるようになるのでしょうか。もっともその時に各国が領有権を争うなどと言う愚かなことにならないことを祈りますが。人類は火星にロケットを送れるほど進化しても、相変わらず仲間で殺し合いをする愚かな生き物なので。
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