教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

9/15 NHK ガッテン「ブドウ3大ミステリー 知ればおいしさ別次元!」

ブドウの謎に迫る

 今回のテーマはブドウ。確かにシーズンではあります。このブドウのおいしさを極めるためにブドウはいかなるものであるかを知ろうというこの番組のパターンです。

 と言うわけで今回はブドウの3大ミステリーとして、「なんだ、この美しさ!」「なんだ、この食べ方!」「なんだ、種ありが!?」だそうな。

 

 

ブドウの形を整えて味を良くするための摘粒

 ではまずはブドウの美しさであるが、確かに房を見ると大抵形が整っていて美しい。しかしこれは実は自然に出来上がっているものではないのだという。実際に産地で取材すると、ブドウ農家がまだ房が小さい内に摘粒といってブドウの粒を切り落としている。こうすることによって房の形が整うと共に粒が大きく甘くなるのだという。全体の形をイメージしながら、特に内部に潜っている粒などはそのまま成長すると割れて腐ってしまうので商品にならなくなるから優先的に除くという。さらに成長の悪い粒なども除く。これで200粒から35粒ぐらいまでに減らすという。実際にこの摘粒をしなければ、巨峰どころか昔よく見た種なしデラウェアのようになってしまう。これを2万房にするというから大変だ。

 なおこの作業を助けるためのマシンが登場しているとか。それは1つはいわゆるパワードスーツで上に上げた手を支えるもの。もう一つはバーチャルスコープで、これを通して見るとAIが摘粒すべき粒を判別して赤く表示するのだとか。つまりは熟練者でないアルバイトなどでも出来るように考えているようである(農業実習生なんかも意識しているのでは)。

 

 

食べ方で糖度が変わる

 次はブドウの食べ方。実はこれ一つで台無しになるかもしれないのだという。収穫の作業を見ていると、ブドウの房をセロハンで触っていて素手では触らない。これは素手で触ると房の表面のブルームという白い粉が落ちてしまうからだとか。このブルームはロウ成分で水をはじく効果があるので、これがあることで乾燥を防ぐのだという。だからブルームを洗ってから保存するのはダメ。

 さらに食べ方だが、一般的には軸の付いていたところから皮をむくとか、丸ごと口に入れるとかいろいろあるが、番組が掲げる正解は、粒の先端(軸の付いていたのと反対側)から剥いて食べるというのが正解だという。こうすると皮の裏の色の付いた部分が実についてくる。こうなると甘味が強くなるのだという。確かに経験的に皮の裏が一番甘いことは分かっていたが、これは目からウロコである。

 

 

種なしブドウよりも種ありブドウの方が甘い

 最後は種ありと種なしのブドウについて。やはり食べやすいということで種なしブドウが人気で、実際に種なしブドウの方が価格も3割ほど高い。しかしそれでもあえて種ありブドウを作っている農家もある。これは実は「種ありブドウの方が美味しい」のだと言う。実際に産地で聞いたり、子供に同じ種類のブドウを食べ比べてもらったところ、皆種ありの方が美味いと答える(ちなみに猿まで種ありを選ぶ)。

 種ありブドウと種なしブドウの違いは房を振ってみれば分かるという。種ありブドウの方は変化がないのに、種なしブドウの方は粒がバラバラ落ちる。種ありブドウは種のところに果芯と言う栄養を通す管がつながっているので強いのだという。そしてここから養分を取り込むので糖度が高くなる。

 そもそも種なしブドウの種は勝手に入るというものではなく、種がない粒も出来るので種ありブドウを作るには摘房といって種のない粒の混ざった房を落とす必要があると言う。これに対して種なしブドウを作るのは房が小さい内にホルモンの薬液につけるだけ。種ありブドウを作るには手間がかかって、それでいて値段は3割も安いと言うから、余程こだわりのある農家以外は作らなくなって今は絶滅寸前だという。

 

 

 以上、ブドウの秘密でした。ブドウの表面のロウ成分は何となく感じてはいたが、それの働きまでは考えてなかった。また経験的に皮の裏が甘いことは知っていても、あのむき方は目からウロコであった。なお最後の種ありブドウの件については確かに思い当たるところはあるのであるが、しかし種ありブドウってやっぱり食べにくいのは否定できないんだよな。志の輔氏が「種に気が行って味に気がつかない」というようなこと言っていたのだが、まさにその通りである。

 例によってこの番組らしい実に「実用性の高い」内容であった。それにしても毎度のことながらネタを発掘してくるのは大変だろう。そのせいか、時々ネタが胡散臭いことがあるのであるが、今回はそういうこともなくて上々の内容だったようだ。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・ブドウの常識をひっくり返すネタを提供。
・まずブドウの房であるが、実はあの形は自然に出来るものではなく、摘粒と言って農家が粒を選んで減らすことで粒が大きく甘く育つのだとか。200粒ぐらいのものを35粒ぐらいまで減らすという。
・また粒の表面の白い粉はブルームというロウ成分であり、これが乾燥を防ぐので保管前に洗うのは厳禁。
・さらに食べる時には軸と反対側から皮を剥けば、皮の裏側が実について甘味が大幅に増すことになる。
・種なしブドウと種ありブドウでは種ありブドウの方が糖度が高い。これは種ありの粒には果芯という栄養を運ぶ管が付いているので、多くの栄養が運ばれているからだという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・見ているだけでブドウを食べたくなるような内容でした。ブドウもいろいろな種類がありますが、皮ごと食べられる岡山のシャインマスカットなんてかなり高いです。最近、この苗が密かに中国に持ち出されたとか。つくづく、何でもパクる国ですあそこは。
・そう言えば種なしブドウの元祖のようなデラウェアって最近見なくなりましたね。私が子供の頃はブドウと言えばデラウェアのことだったんですが。昔は巨峰なんて高すぎて、貧乏な我が家では手が出ませんでした。

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