AIを活用した婚活に乗り出す自治体
コロナ禍でお籠もりを強いられることになると、必然的に出会いの機会も減ってくる。そんな中で真剣に結婚相手を探している人々と、それを支援しようとする動きについて紹介。
最初に登場するのは英語の講師をしているという38才の男性。結婚相手を探すのにネットを使った婚活を始めたという。彼が利用しているのは「恋たま」という埼玉県が運営している婚活サイト。やはり自治体が関与しているというところが信頼性があるという。
恋たまではAIを使用したマッチングをしている。AIが性格や価値観を判断して、それが合致しそうな相手を見つけ出すのだという。従来の互いの条件やスペックを元にしていたマッチングよりも幅広く本当に気が合いそうな相手を見つけられる可能性があるという。政府はAIを活用した婚活サイトに補助金を出すことになり、全国23の県がこれを活用しているという。
登録して8ヶ月、しかし彼は思うように見合いにまで進んでいなかった。そこでアドバイスを受けたところ、彼のプロフィール写真があまりにカジュアルに過ぎ、結婚に対して真剣に見られない可能性があるとのこと。確かに他の登録男性の写真はジャケットやスーツというややしっかりしたものが多い。そこで彼はプロに依頼して写真を撮り直すことに。その結果、本人も納得するような写真が上がる。そしてお見合いイベントにも参加する。そこで一応カップル成立して上々の滑り出しに。
AI婚活に真剣に取り組んでいる男女
一方、婚活サイトを活用している20代の女性も。彼女は真剣に結婚を考えているので、やはり自治体運営のサイトというので信頼性があるのと、一般の出会いサイトは結婚相手を探すと言うよりも遊びの相手を見つけたいという輩が多いので、結婚に対する真剣みがまるで違うのだという。
実際にこのAIシステムを運用している会社では、まず登録情報の保護に一番気を使っているという。さらに気を使っているのが登録者の裏付け。本人確認の運転免許証などに始まり、学歴を裏付ける卒業証明書、さらには収入を確かめる源泉徴収票まで提出してもらっているという。真剣に結婚相手を選ぶためのサイトなので、スペックを偽って遊び相手を引っかけたいと思っているような不届きものを排除するためのシステムになっているのである。
また秋田県の大潟村にもAIで婚活を始める男性がいた。35才の専業農家の彼は、いかにも恋愛に奥手な印象がある。彼が経営しているのは東京ドーム6個分の30ヘクタールの田んぼ。決して零細農家というわけではない。両親なども直接は口にはしないが、やはり息子の結婚は気にしている模様。大潟村では結婚支援センターを設置してこのような独身者の婚活に力を入れているが、やはりコロナでなかなかイベントが出来ないという。実は秋田県は出生率は26年連続、婚姻率は21年連続で全国ワースト1なのだという。
結婚支援センターを訪ねてきた彼。実は担当の女性は彼の幼稚園の先生だったとのことで、彼のことは家族丸ごとよく知っている。それだけに父親などからも息子のことを頼まれているとのことで、彼に発破をかける。それでようやく彼もAI婚活に挑戦することに。彼は役所で独身証明書を提出してAIでの性格テストに臨む。相手が紹介されたら、地元の自慢の菜の花ロードを見せたいと張り切る彼。AIに何人か相手を紹介され、今は出会いに胸を膨らませている。
この後は松下氏が実際に婚活サイトで出会って結婚を決定したというカップルを取材しているが、これは「新婚さんいらっしゃい」みたいなものであまり意味はない。
書店での出会いを演出するChapters
一方、全く変わったスタンスから出会いの場を提供しようという企業もいる。それはChaptersという会員制のオンライン書店。ここが特徴的なのは、同じ本を読んだ相手と語り合えるということ。本屋の店頭での偶然の出会いというようなものを目論んでいるという。
Chaptersを設立したのは元大手広告会社の社員だった森本萌乃氏。彼女は学生の頃から本が好きだったので出会いを演出するだけでなく、本を読んでもらいたいという気持ちもあったという。だからあえて中を紹介せずに、出版社から一推しの本を選んでもらってそれを届けるなんてことも行っている。
しかしChaptersの運営は資金的に苦労していた。森本氏は出資者を募って投資家などを回ったが「市場規模や事業の将来性が見えない」(全く素人の私の目から見ても、一番にそれが気になった)と20回連続で断られて資金繰りに行き詰まる寸前。一か八かで東販と交渉、ただ「我が社が出会い系に乗り出すということに社内同意が得られるか」との難色を示されるが、本の将来を考えている森本氏の思いは通じた模様。結局はこの時に話を聞いてくれた役員が社内を説得して、出資を承諾してもらえることに。
以上、コロナ禍の恋愛事情ですが、要は結婚前提の婚活サイトが活躍してますよとの話である。後半のChaptersの話は毛色が変わっており、単なる出会いサイトではなく、本の復権も絡んでいる。恐らくこれが数年前だったら東販は最初から聞く耳も持たなかったろうが、今は電子書籍への移行が急速に進みつつあり、それには東販もかなり危機感を持っていると思われるので、「物になるかどうかは半信半疑だが、とにかく打てる手は打っておこう」というのが本音なのではなかろうか。このような出版を取り巻く急激な状況変化については、この番組でも別途また取材して特集してもららいたいところである。既に中堅どころの書物取次業者の倒産も出ており、この業界は生き残りに必死のはずである。
35歳以上で「高齢独身者」扱いになっていたが、実際には私のようにそれよりもさらに上の「もう既に完全にゲームオーバーしてしまった高齢独身者」も多数いる。私個人のことについて言えば、まず適齢期には絶望的なまでに出会いの場がなかった上に、一番婚活に力を入れるべき時期に家の事情で縛られて完全にチャンスを逸してしまった。そうこうしている内に40を越えてしまったら、もう既に周囲の女性からは「結婚候補の男性」としてカウントされなくなってしまったというところである。で、結婚どころか既に老後の方が見えてきている現在となっては「私の人生もとうとう終わったな」という状況。
もっともどうにか結婚にこぎ着けたカップルも、3組に1組は離婚しているという状況で、かくも結婚とは大変なようである。だから結婚のチャンスのない者にそのチャンスを与えるというのも重要であるが、私のようなゲームオーバー組がこれからの人生をどう生きていくべきかという辺りも自治体にも考えて欲しいというのが本音。年齢的に考えて今から結婚なんて現実的ではないと思うが、このまま孤独死したいとも思ってないので。
忙しい方のための今回の要点
・コロナ禍で絶望的なまでに出会いがなくなる中、自治体がAIを活用した婚活サイトに力を入れ始めている。
・いわゆる巷の出会い系と違い、遊び目的を完全に排除して結婚を真剣に考えている者を対象にしており、登録する男女も増加している。
・一方、書展を核にして新たな出会いを提供しようとしているChaptersのような企業もある。書物を販売しつつ、出会いを提供しようという発想。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・昔は適当な年齢の男女がいたら、世話焼きの人が見合いを勧めて、それで何となくまとまっていたというところがありました。しかし世の中が恋愛結婚至上主義になって見合いが否定されるようになってきたら、実は恋愛の機会って意外と少ない上になかなか上手く行かないことも多いというのが明らかとなったということです。そして再び形を変えた見合い結婚時代に突入しているのが現代という時代の皮肉ですな。
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