教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

9/24 テレ東系 ガイアの夜明け「ヒット商品 誕生前夜 あなたの「欲しい」を掘り起こす!」

新たな時代のメガヒット商品を開発せよ

 なかなかメガヒット商品が登場しにくくなったこの時代に、新たなヒット商品を目指して開発を進めているメーカーの現場を紹介。

 かっぱえびせんで有名なカルビー。今まで10年サイクルで売り上げ100億クラスの大ヒット商品を生み出してきたという。しかしここ最近は世の中が複雑になってきたためか大ヒット商品が登場しなくなっていた。

 そのカルビーでは新たなニーズを掘り起こすためにアンテナショップの運営を始めている。そこでいろいろなテスト商品を試してみて、お客の反応をみるという試みである。

 一方、新商品開発のための部署も設立している。カルビー創業の地である広島にカルビーフューチャーラボという組織を設置した。スタッフは総勢7名の内4人はカルビー以外の出身。彼らは消費者に対するインタビューなどから様々な生活のシーンのニーズを集め、それを新たな商品開発に結びつけようとしている。

 

 

匂いを加えることで臭いを変化させるというアイディア

 今までカッパえびせんの新しい味の開発に取り組んできたという開発担当の加藤克典氏が目をつけたのは「臭いが気になる」という訴え。確かに公共空間での悪臭などに対応する手段はない。そこでこれをお菓子で消すことが出来ないかと考えた。

 彼は香りを扱っているベンチャー企業に協力を要請して出てきたアイディアが、臭いに別の匂いを加えることで変化させるという方法。例えば靴下の不快な臭いに、バニラの香りをプラスするとチョコレートの香りになるという。これで満員電車などの不快な汗のニオイにユーカリの匂いを加えることで柔らかい匂いにするというのを思いつく。実際にソフトキャンディーにしてみて食べた後に汗のニオイを嗅いでもらったところ「和らぐ」という評価。とりあえず商品化を目指すという。

 

 

隙間家電のサンコーが手がけるお一人様家電

 一方、大手が手がけないような隙間家電で異彩を放つのが秋葉原のサンコーという家電メーカー。水道工事のいらない食洗機や、シャツを膨らまして皺を伸ばすアイロンいらずの聴きなど一風変わった機器の開発を行っている。コロナ禍で売り上げは前の年の17億円から44億円に伸びているという。

 本社では社員自らがアイディアを出して試作品を製造している。3Dプリンタで最速2日で製品を開発するという。個性派の社員が集まって様々な商品開発を行っているが、中にはアイディア倒れというものも少なくない。大手メーカーの新製品が出ると、社長自ら社員を引き連れてチェック、そこから新商品のアイディアを考える。社員も家族などから常にニーズを汲み取っている。これらのアイディアは社内の掲示板にあげられ、その数は年間2000、その中から商品化されるのは10程度という。

 社内随一のヒットメーカーという新村孝司氏がヒットさせたのは首にかけて使うネッククーラー。シリーズ累計で80万台を売り上げるサンコー一のヒット商品になったという。店には大行列が出来たという。改良を重ねつつ生産数を増やしていったという。

 サンコーではお一人様家電に力を入れており、お一人様用炊飯器などや焼き鳥メーカーなどを発売したという。こで新たなプロジェクトに取り組んだのが中途入社の向後栄氏。新村氏のようなヒット商品を生み出したいという。

 その彼が取り組んだのがお一人様用のフライヤー。コロナ禍でなかなか揚げたての揚げ物を食べるということが出来ないのと、油の後処理の大変さなどを解決しようとの考え。その結果、300ミリリットル程度の油でサクサクの揚げ物が出来、油を簡単に捨てられる構造にした。新村氏からも太鼓判をもらって商品化に挑む。

 

 

 以上、ヒット商品に挑むメーカーの最前線ですが、ヒット商品が出なくて困っているのはどこの業界でも同じです。顧客のニーズが多様化した結果、かつてのような最大公約数を狙う戦略だと、どの層からもそっぽを向かれるというこになりがちで、結局は特定の層をターゲットに絞った商品を出さざるを得ないのだが、そうするとメガヒットは出ないというジレンマに多くのメーカーが陥っています。

 どこのメーカーの開発担当者も「顧客のニーズが見えなくなった」とぼやいているのが昨今の状況だったりします。そういう意味でも大量生産大量消費の時代は終わったのではという気は私もします。そういう点ではメガヒットを狙うというよりも「そこそこの売り上げで十二分な利益を上げる」という路線に転換した方が良いのではという気が私はしています。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・各社が新たなヒット商品の開発に苦戦する中、カルビーでも近年はメガヒットが出ないことに苦しんでいる。
・同社では新たに新商品開発のための組織を結成し、消費者に対するインタビューなどから様々な生活のシーンを想定して新商品のヒントを得ようとしている。
・そんな中で浮上したニーズが「公共空間の臭いが気になる」というもの。そこで臭いに別の匂いを重ねることで香りが変化するという現象を使用し、汗の臭いにユーカリの匂いを重ねることで和らげるという商品の開発を目指している。
・様々な隙間家電で売り上げが増加しているのが、秋葉原のサンコー。同社ではコロナ禍に合わせてお一人様家電のかいはつプロジェクトを結成、そこから浮上したのはお一人様用フライヤー。揚げたてのフライを作れて廃油の処理も簡単という代物であり、商品化を目指している。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・かつてのヒット商品の法則が通用しなくなったと言われているのが近年です。本文でも言ったように、今は「最大公約数を狙う」というかつての戦術は「どの層からも外れてしまう」ということになりがちであり、よりニッチなものに向かわざるを得なくなってます。サンコーのお一人様用フライヤーなんてまさにそうだと思います。サンコー規模の会社ならこれで十分なんですが、これがカルビーとなると同じ戦略で望めないのがツラいところでしょう。

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