教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/1 テレ東系 ガイアの夜明け「ニッポンの安全…取り戻せ!~命を守る 知られざる闘い~」

 社会に潜む危険と闘い、人々の安全を守ることに貢献している人々を紹介。

魔の7歳児を事故から守れ

 最近問題となっているのは子供の安全。歩行中に交通事故に遭遇する年代は高齢者が多いが、7歳児も非常に比率が高い。これは小学校に入学して登校を始める年代であり、注意力が低いために飛び出しなどで事故に遭遇する可能性が高く「魔の七歳」などとも言われているという。

 千葉県の八街市では交通事故で下校中の7才と8才の命が奪われた。現場付近は渋滞の多い国道の抜け道となっていて、狭い道をスピード違反と思われる車が走り抜けていたのだという。今まで子供を守るものがなかった道にようやくガードパイプが設置されたという。さらに制限速度を60キロから30キロにし、道路の一部をわざと狭くしたり、道路に段差をつけるなどの対策がなされた。また一部の学校ではスクールバスが導入されたという。危険箇所はまだまだあるために、それが解消するまでの経過措置であるという。

 金沢大学では子供が歩行する時にどこに注意しているのかの実験が、防災を研究している藤井慎准教授の指揮の下で行われた。その結果、子供は進路だけを見て、ほとんど反対側の車など周りを見ていないことが分かったという。これが子供の事故の原因だという。

 藤井氏とこくみん共済coopが子供の事故を減らす取り組みを行っているという。こうして開発されたのが交差点に設置して、子供が持つ無線通信機が接近すると、気をつけて道路を渡るようにとの音声メッセージと映像が出るのだという。実際に実験をすると、子供はデジタル標識が出た途端に停止して左右確認を行うようになった。藤井氏はこのデジタル標識を全国に設置したいと考えている。

 

 

盛り土災害を防ぐための改質剤

 一方、熱海の土砂災害で問題となったのが盛り土。今回の土石流ではこの盛り土の崩壊が大惨事につながっている。このような盛り土は全国で5万カ所以上あるという。千葉県多古町では、把握している盛り土が13カ所で、その内の4カ所が問題があるのだという。町では盛り土の排水をチェックしている。多古町では条例で県外からの土の持ち込みを禁止し、500平方メートル以上の盛り土は町が管理するようにしたという。しかしそれにもかかわらず事故が発生した。今年6月に盛り土が崩壊して県道を塞いだのだという。明らかに条例違反の盛り土だが、業者は500平方メートル以下だから知らないと開き直っているという。罰則はあるが強制力がないのがジレンマであるという。町では国に何らかの法律を制定して欲しいとしている(と言っても土建屋と癒着している自民党ではしないだろうな…)。

 盛り土が崩れるのは排水の問題があるが、そもそもの土の質に問題がある場合があるという。岐阜県の中部縦貫自動車道の建設現場ではトンネル残土を道路の土台に転用するつもりでいた。しかし土の含水率が高くてブヨブヨで使い物にならないのだという。この問題を解決するのに呼ばれたのがHSSの竹中照明社長。彼が開発した改良材「ドクトール」を混合すると強度が最大50倍にアップするのだという。高校卒業後に地元の建築会社に就職した竹中氏はトンネル工事などの残土の処理と向き合う中で、その独自の処理法を研究し、HSSを設立したのだという。ドクトールの原料は産業廃棄物の石膏ボードや石炭灰などを利用したものだという。このドクトールを残土に混ぜることで土壌改良できて、地盤が強化されるのだという。また土であるのでコンクリートで防護するのと違って草などが生えることが出来る。

 

 

ハイテクで児童を見守る

 東京世田谷では子供を守る取り組みを開始している。今まで高齢者などが見守りをしていたのだが、高齢者がコロナ禍で出てこれなくなり、PTAの活動が限界に来ていたのだという。そこで頼ったのがottaの山本文和社長。彼のシステムは子供に発信器を持たせて子供の行動を可視化するというものである。元々は半導体用ロボットのエンジニアだった山本氏だが、2014年に今の会社を立ち上げ、見守り用の端末ottaを開発したのだという。住んでいた町で誘拐事件が発生したことから、そのような事件を防ぎたいと考えたのだという。

 子供が端末を持って出かけると、現在どこにいるのかを保護者は確認することが出来る。ottaの本社のある福岡市では既に導入されており、小学生に端末を配布し、基地局は3000カ所以上あるという。全国16都市で10万人が使用しているという。世田谷区では基地局の設置を急いでいた。無線ルーターのような装置で、半径20メートル以内に端末が接近したら位置情報が保護者に伝わるのだという。地域の自転車店など商店や公共施設に協力してもらって基地局を設置している。空白地点をどうやって克服するかが課題で、商店などを回って協力を求めている。

 さらにタクシーに基地局を搭載して、地域を巡回するということも始めている。全国で3万台のタクシーが協力しているという。もし子供が連れ去られるような事件が発生してもタクシーが情報を集めることになるのである。

 

 

 以上、人命にかかわる技術ですが、とにかくすべて地味です。しかしこういう地味な技術は実は大切なんです。土壌改良材についてはコストがポイントでしょう。もっともいくらコストが安くても、手間とコストの増加にはつながるので、悪質な業者は使用しないでしょう。ですから法律を整備して規制が必要です。

 金沢大学のシステムは面白いですが、問題はいつも同じ場所で同じ反応だと、子供が慣れてその内にスルーしないだろうかというところ。その辺りは継続的観察が必要でしょう。

 ottaについては似たようなことは携帯でも出来るように思いますが、小学生にスマホを持たせることに抵抗のある親もいるでしょうから、そういう点で使えると思います。なお小学生だけでなく、徘徊の可能性のある老人なんかにも使用することは可能なように思われます。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・命を守るための技術開発を紹介。
・金沢大学の藤井准教授が開発した電子端末は、発信器を持った子供が近づくと、映像と音声で交通に注意をするように促すメッセージを出すもの。魔の7才とも言われて交通事故の多い小学生の飛び出し対策に効果が期待できる。
・熱海の土砂災害で盛り土が注目されたが、盛り土は全国で5万カ所あり、問題のあるところも少なくないという。盛り土の崩落で問題となるのは排水の問題と土質の問題。水分が多いと雨で崩壊しやすい。そこでHSSでは土壌の強度を上げる改質剤ドクトールを開発した。
・児童の見守りが問題となっているが、ottaが開発したシステムは、子供に発信器を持たせて周辺の基地局でその所在を把握するというもの。子供の行動が可視化されるので、危険なポイントなども分かるという。現在、世田谷で基地局設置の依頼に回っている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・子供見守りなんて、昔は地域で自然に行っていたものですが、今は自治会長が変態だったなんてご時世ですから大変な時代になってきました。本来は子供に「知らない人を見たら警戒しろ」なんて教えたくないですが、今はそれを最初に教えないと犯罪犠牲者になってしまう時代ですから。社会にクズが増えたってことですかね。

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