教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/8 テレ東系 ガイアの夜明け「町工場リボーン 日本の"ものづくり"が激変!」

部品を製造している町工場の危機

 スーパーベイシアではリニューアル開店に向けて精肉売り場を増強することにしたという。コロナでの巣籠もり需要で、ちょっと高めの肉を買い求める客が増えているのだという。外食に回していた金を家庭にということらしらい。そこでベイシアでは新たに食肉スライサーを導入した。肉の塊から薄切り肉を切り出す装置である。

 この装置を製造しているのは大阪・藤井寺市のなんつね。国内シェア1位を誇り、日本で始めて食肉スライサーを開発した老舗だという。コロナ特需で前年比150%の売り上げで、過去最高の利益が出たという。肉は厚さで味が変わるのでカットには精度を求められる。そしてこの精度を支えているのが各社に製造委託している部品である。しかしこの部品を調達する町工場が年々減少しているのだという。技術力があるにもかかわらず後継者不在などで廃業する町工場が増加しており、同社も部品の調達が困難になりつつあるのだという。

 

 

町工場とメーカーをマッチングする企業・キャデイ

 そんななんつねが頼ったのがベンチャー企業・キャデイ。2017年創業の会社で社員は230人、平均年齢32才だという。社長の加藤勇志郎氏は東大卒業後にマッキンゼーに入社し、市場最若年でマネージャーに昇格するなどして、このキャディを創業したという。キャディが手がけるのは技術を持つ町工場と、その技術を必要とするメーカーとのマッチングである。技術力があっても売り込みが難しい町工場、必要な部品をどこに委託すれば良いかが分からないメーカーとの間を取り持つのである。

 キャディに登録している町工場は他にない優秀な一芸を持っているところが多く、キャディのパートナーとなったことで今までなかった分野からの仕事の依頼が来るようになって売り上げが5倍になった工場もあるという。キャディではメーカーから図面を検討して、その部品を作るのに最適の工場を選ぶと共に、妥当な価格をも推算することが出来るシステムとなっている。町工場とメーカーの双方にメリットのあるシステムとなっている。

 

 

大田区の町工場を助けるようとする信用金庫

 一方、東京の下町の大田区では多くの町工場が資金繰りなどで危機に瀕しているという。そういう町工場を救済するために奔走しているのが城南信用金庫。同社では企業に対して技術アドバイスの出来る元エンジニアなどをものづくりコンシェルジュとして採用し、取引先町工場に無料でアドバイスを行っているという。

 コンシェルジュと共に町工場を回ると、取引先企業の細かい相談などにも乗り、それらの情報は共有して売り上げ拡大に向ける提案などを目指しているという。地域に寄り添ったサービスを進めている。

 

 

 以上、町工場を取り巻く現状と、それを助けようとする企業の話なんだが、番組自体はどうにも散漫な印象を受けた。スーパーベイシアのリニューアルオープンの話から食肉スライサーに飛び、そこからスライサー製造メーカーの話に飛び、その部品を製造する町工場の現象に飛んでキャディの話につながるのだが、連想ゲーム的な接続がどうにも散漫な印象につながっている。しかも途中で出てくる城南信用金庫は話が他とつながっていない上に尻切れトンボ感が強い。

 ベイシアの話から始まって、ベイシアの話に戻ってきて締めるのは、作りとしてはストーリー性を持たせた凝ったものと言えなくもないが、この手の番組の場合にはむしろ逆に焦点ボケした感が否定できない。城南信用金庫の話も加えて、町工場が抱える現状の問題点に突っ込むなら、そこに明確に焦点を当てる構成にした方が良かったのではと感じる。今回の内容は内容自体は悪くないが、どうも番組の座りが悪い。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・現在、巣籠もり需要で食肉スライサーが売り上げを伸ばしているが、製造メーカー大手のなんつねによると、同社に部品を供給している町工場が廃業などで年々部品調達が困難となってきているという。
・そこで技術力を持つ町工場と技術を求めるメーカーをマッチングする会社であるキャディが動いている。同社は全国の町工場とパートナー契約をし、メーカーから送られた図面を元に最適の加工技術を持ち町工場を選択して紹介している。
・同社とパートナーシップを結んだことで、異業種からの依頼が来て売り上げが5倍となった工場もあるという。
・一方、東京大田区では地元密着の城南信用金庫が元エンジニアなどをものづくりコンシェルジュとして採用し、町工場からの相談などに乗る体制を整えている。同社では各工場が抱える経営上の問題に対しての解決策の提案を目指している。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・町工場である問題点はとにかく人材不足。新卒の大手志向などで町工場は採用もままならない状況です。そもそも賃金格差がありすぎるので、採用戦線でも圧倒的に不利だし。しかも日本政府は町工場は全部つぶして外資の狩り場にするという亡国政策実施中なので、町工場の状況はドンドンと悪化してます。
・キャディは良いところに目をつけたと思います。町工場の営業力不足と、メーカーの調査力不足を補う形ですから、まさにWin-Winの関係を作れます。こういうビジネスは発展し欲しいところ。一芸に秀でている町工場にとっては願ってもないでしょう。もっとも特に技術もなく、従来からの系列で守られていた工場にとっては逆風になりかねませんが。

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