教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/29 テレ東系 ガイアの夜明け「"脱プラ"新たな主役たち!」

脱プラスチックを目指す段ボール素材

 持続可能な社会を目指す一環として、脱プラスチックがキーワードの一つとなっているが、ここで注目されている素材の一つが段ボールである。

 段ボールは水に弱くて強度がないというイメージがあるが、そのイメージを一新する新素材を開発したのが中小企業である日本化工機材である。同社が開発した角紙管は段ボールや古紙を原料にしたものであるが、水に強い上に束ねると車が乗っても歪まず、また火で炙ってもすぐには燃えないという素材である。今まで梱包材として使用されていたと言うが、脱プラスチックの流れからこの素材に目をつけた人物が現れた。

 伊藤忠リーテイルリンクの清水浩司氏はこの角紙管を使用して家具や雑貨を作るというプロジェクトを考えていた。伊藤忠はプラスチックの取り扱いで日本有数の企業だが、次の時代を睨んで脱プラの一環で新素材に注目したという。日本化工機材もこれをチャンスと捉えてテーブルや椅子などの試作品を製作する。これらは十分な強度もあり、廃棄も簡単であるという。

 清水氏がさらに目をつけた段ボールメーカーが九州ダンボール。ここでは以前から段ボールを使用した家具や小物などを試作していたが、販路がないことから本格製造は行っていなかったという。清水氏はここに段ボールでの雑貨を開発することを依頼すると共に、ここの技術に角紙管を組み合わせることを考えていた。

 清水氏が開催した段ボール製品の展示会では段ボールのキャリーケースなどが展示され、イオンやアパレルメーカーが興味を示す。そして九州ダンボールでは角紙管を用いたキャットハウスを試作する。この製品には清水氏の要求で色をつけることになり一般に披露されることになる。反響は上々でこの秋からネットでの通信販売を開始するという。

 

 

米を使った新素材

 一方、商品にならないくず米を使用した新素材を開発している人物がいる。バイオマスレジン南魚沼の神谷雄二社長。彼はくず米とプラスチックを混ぜ合わせたライスレジンという新素材を開発した。米は加熱すると粘りが出るので樹脂と混ざりやすいのだという。最大70%まで米を混ぜることが可能で、その分プラスチックを減らせるという。アメリカのトウモロコシ入りプラスチックに刺激を受けて、16年前に起業、紆余曲折があって何度も廃業を考えたそうだが、ついに時代が彼の動きについてきたのだという。

 今年の6月に開かれた環境に優しい素材の展示会「サステナブルマテリアル展」ではライスレジンのブースは非常に注目を浴びた。既にライスレジンを用いた弁当箱などは商品化されており、ライスレジンを用いた袋は全国の郵便局で使用されているという。

 さらにホテルなどのアメニティをライスレジンに置き換えることなどが検討されており、星野リゾートと話を進めた結果、まずはライスレジンを使用したヘアブラシを導入することが決定されたという。そしてこの神谷氏と手を組んだのが三井物産プラスチック。業務提携によって三井物産が抱える取引先と取引をすることで一気に可能性が広がった。

 そして新たに混合するプラスチックも生分解性のものに置き換えた新たなライスレジンを開発した。これは雑草防止用に地面に敷く農業用フィルムへの用途を検討している。従来品はどうしても細かいプラスチックのクズが出て、それが分解されないのでいつまでも残ることが問題となっていたのだという。宮古島で実際のテストを行って、将来は海外への輸出を視野に入れているという。

 

 

 以上、プラスチックに変わる新素材としての段ボールとライスレジンの話。段ボールについては最近になって確かに諸々の段ボール製品が出てくるようになりました。後の問題はやはり見た目でしょう。どうしても段ボール家具などはどことなくホームレスなイメージになってしまうので、安っぽさのない高級感をどうやって出させるか。もっと本格的なデザイナーとの協力を行った方が良いように思います。

 ライスレジンの方は、最後に生分解性の話が出て来たので、正直なところ「えっ?それまでのは生分解性をかんがえてなかったの?」と驚いたのが本音です。米を原料にする時点で生分解性を睨んでのことだと考えていたのだが、どうやら元々の神谷氏の発想は「プラスチック原料を減らす」ということだった模様。しかし生分解性がなかったらインパクトはかなり落ちると思うので、これは必須の機能だと思う。アメニティなんかも生分解性を正面に出せばもっと販路は広がると思うし、強度などで十分な性能を出せればレジ袋なんかの用途も広がるだろう。成功すればマスとしてはそれが一番大きい気がする。

 ところでこの番組は以前からことあるごとに星野リゾートの宣伝をするのだが、今回もそれが少々ウザい。この辺りは「大人の事情」って奴だろう。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・環境保護観点から脱プラスチックの潮流の中で新しい素材として段ボールが注目されている。
・日本化工機材が段ボールを原料として開発した角紙管は紙でありながら水に強く強度も高い。伊藤忠リーテイルリンクの清水浩司氏はこれに目をつけて、家具などを製造するプロジェクトを開始した。
・さらに以前より段ボールによる小物などを製造していた九州ダンボールも加えて、プロジェクトが実行中である。
・プラスチックにクズ米を加えたライスレジンを開発したのが、バイオマスレジン南魚沼の神谷雄二社長。プラスチック使用量を減らせることでホテルのアメニティへの使用などが進められている。
・さらに生分解性プラスチックを使用した農業フィルムを輸出を目指して試験中である。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・いずれも問題になるのはコストです。プラスチックへの法的規制などが強まる流れが追い風となってますが、コストの低減が普及へは鍵でしょう。
・神谷氏のライスレジンは16年前からやっているとのことですが、そう言えばこの話は随分昔に聞いた記憶があるんですよね。ようやく軌道に乗り始めたということのようで。

次回のガイアの夜明け

tv.ksagi.work

前回のガイアの夜明け

tv.ksagi.work