教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

11/5 テレ東系 ガイアの夜明け「イオン 巨大企業の裏側 知られざるコラボ大作戦」

グループ内でのコラボに未来を賭けるイオン

 アジア最大の巨大小売企業と言われるイオン。従業員数57万人、グループ全体の売り上げは8兆6000億円にも及ぶ。300を越えるグループ企業を抱えるが、その中には業績の良いところと悪いところが入り交じっており、全体の底上げがイオンの課題となっているという。そこでグループ内でのコラボを進めている。

 

 

スポーツ用品会社が農園と提携してキャンプ場運営に乗り出す

 イオングループの中のスポーツオーソリティではコロナ禍の直撃を受けて苦戦をしていた。そんな中で好調だったのはキャンプ用品、そこで同社ではキャンプ場事業を行うことを決めたという。そしてイオングループのイオンアグリ創造とタイアップ、野菜収穫体験などの出来るキャンプ場を考えた。

 しかしなかなか両社の思惑が最初からは合致しない。スポーツオーソリティの新規事業部長の鳥居裕二氏は、農園で収穫した野菜をそのままキャンプ場でバーベキューにして食べてもらうというイメージだったのだが、イオンアグリの方では予定に基づいて作付けした野菜を変更するというわけにいかず、キャンプに参加した人たちが持って帰る野菜はネギという状況に。鳥居氏はイオンアグリの担当者と直接交渉することに。

 互いに顔をつきあわせて話し合う内に妥協点が見えてくる。イオンアグリでは既存の畑の作物の変更は出来ないので、結局はキャンプ用に新たな畑を開拓してそこにサツマイモを植える。キャンプ参加者は芋掘りを満喫し、夜はそれを焼き芋にして頂く。新たな事業に手応えを感じ始める鳥居氏。

 

 

和食弁当のためにオリジン東秀と提携

 スーパーを手がけるイオンリテールでは弁当などが好調なのだが、ハンバーグなどの洋風弁当は強いのだが、季節感のある和風弁当というところが弱点であったという。そこでそれを補うために提携したのが2006年にイオン傘下に入った弁当のオリジン東秀。同社で人気の鶏五目ご飯をイオンの弁当に導入することを考えた。オリジン東秀としては、今までとは異なる客層にオリジン東秀の味を売り込もうという思惑もあるという。

 両社の担当者が顔を合わせて鶏五目ご飯の試作品を何度も製造してはテストする。最後には塩コンマ数グラムの世界になっての微調整。その結果として、季節を感じさせるゴボウを中心とした新しい鶏五目ご飯がイオンの店頭に並ぶことになり、1日に1万3000食も売れたという。

 

 

2時間楽しめるソフトクリームをという無茶ぶりにどう答えるか

 これもイオン系列のミニストップは、コンビニ業界では大手三社に水をあけられて赤字に陥っているいる。しかしソフトクリームが大人気で、ソフトクリーム専門店を作って勝負に出た。中でも台湾密芋とソフトクリームを組み合わせた商品が大ヒットで、県外から買いに来る客までいるという。

 そんな同社にタイアップを申し込んできたのがイオンシネマ映画を楽しみながら客に食べてもらう商品を考えて欲しいのだという。しかしその条件が、2時間楽しめるソフトクリーム。しかも同社のポップコーンを使用して欲しいという。

 かなり無茶ぶりにミニストップのソフトクリーム担当者は頭を悩ませるが、いろいろ試作して苦労の結果にたどり着いた結論が、イオンシネマのストロペーキャラメルでコートしたポップコーンを使って、そこにソフトクリームを入れた商品。キャラメールコートのおかげでポップコーンの食感を保て、さらにソフトクリームが溶けても苺ミルクとして楽しめるという商品を投入することになる。

 

 

 以上、イオングループ内でのコラボの話。実際にあれだけの巨大企業となると、グループ会社の中でも明暗が出てくるのでそれの底上げは死活に関わる急務であろう。実際にダイエーなどは次々と買収した挙げ句に逆に小回りがきかなくなって破綻しており、そのダイエー末期の状況に近年のイオンは類似してきたという感を私は抱いている。企業買収はコラボ効果が出なかったら事業的には意味がないのだが、ようやくそこを強化し始めたと言うことか。

 イオンの弁当に和食がないというのは、私も年を取ってくるにつれて深刻に感じることで、正直なところこの年になるとハンバーグ弁当とかオムライスはキツくて、和食を食べたくなることが多いのだが、和食となると弁当にしてもレストランにしても突然に対応しているところが減るというのが事実である。そういう意味では着眼点は間違っていないと思う。またオリジン東秀の方もイオン向けの商品は高齢者を意識したのか、アッサリ目の味付けにしたようだから、それはもろに正解方向である。

 イオンシネマのソフトクリームを2時間はかなりの無茶ぶりだったと思うが、どうやら解決はした模様。もっとも私は溶けたソフトクリームを食べる気はしないな。それと客の一人としてはイオンシネマには「もっと匂いの弱い商品を出してくれ」というのが一番言いたいところ、映画を見ている時にポップコーンや揚げ物の油の匂いが漂ってきて気分が悪くなることが多々。実はこれも映画館にあまり行かなくなった理由にもなっているのである。こういうお客の声は上には届いていないんだろうか? それともスナックを買ってくれない客は端っから客と見ていないか。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・300社以上のグループ企業を抱えるイオンでは、グループ内でのコラボを進めている。
・スポーツ用品を手がけるスポーツオーソリティが、キャンプ用品の販売を狙ってイオンアグリ創造とタイアップしてキャンプ場経営に乗り出し、野菜収穫を体験できるキャンプなどを始めている。
・またスーパーのイオンリテールでは弁当部門の弱点であった和食弁当を強化するために、イオン傘下のオリジン東秀と提携して、新たな鶏五目ご飯弁当を投入した。
・ソフトクリームが人気のミニストップではイオンシネマからの「2時間楽しめるソフトクリーム」という無茶ぶりに応えて、新しいメニューを考案した。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・買収企業のコラボがうまくいかなかったら、買収する度にグループの赤字が増えるだけになりかねませんから。実際にライザップなんかがこれで急激に本業の成績が悪化したなんてこともあった。最初からコラボをイメージして買収した場合は良いんですが、往々にして行き当たりばったりの買収する企業が多いですから。いざ終わってみたらコラボ効果は全くなく、結果としてはそれが本業に響いて本業がコケたなんて例も実は枚挙に暇がありませんので。イオンの動向には注目でしょう。

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