教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/19 NHK ガッテン「1日4回!体温測定であなたの睡眠力がわかっちゃうSP」

体温は変化する

 平熱と何か。このコロナの時代だから体温に対しての関心も高くなっているが、意外と認識されていないのがこの平熱の定義である。

 まずはガッテンボーイの池田氏が1日の体温を4回測定するということを行っている。その結果、起床直後は36.3℃、昼食前は36.6℃、夕方には37.4℃、就寝前には36.2℃と変化している。ではこのどれが平熱かということになるが、特に体調に異常がない限りはこれのすべてが平熱と考えるべきだという。つまりは人間の体温は1日で1℃ぐらいは変化するのが普通であるという。この幅よりも体温が狂うということになれば、それが異常な状態なので自分の体温の幅を知っておくのが重要であるという。

 さらにこの4回の体温の変化が実は睡眠と密接に関わり合いがあるという。人によって体温の変化パターンが様々だが、実際に100人のデータをとってみたら千差万別だったという。しかしこれらのデータを見ると良い睡眠が取れているかが分かるという。

 

 

良い睡眠をとるための変化パターン

 良い睡眠を取れる体温のパターンとは、朝から夕方に向けて体温が上がっていって、就寝前には下がっているというのがポイントであるという。就寝前には体温が下がることで体は就寝に備えた状態になっているので、夜に向かって体温が上がっていくようなパターンの場合は寝付きが悪いということになってしまい、昼間に体温が上がらないという状態はエンジンがかからずに眠気に襲われるということになる。

 では就寝前に体温を下げるにはどうすれば良いかだが、これは番組のディレクターが実際に実験をしている。そこで試したのは睡眠の1時間以上前に風呂に入るというもの。一般に入浴すると上昇した体温が低下していくのでその時に眠気がやって来るとされている。しかし実際に実験したら確かに入浴直後に上がった体温が下がり始めたのだが、結局は入浴前の体温よりは下がらずにそこから横ばいになってしまった。

 実はこのように体温を上下させることは難しいという。それはそもそも人間の体温には一定の変化のリズムがあるので、それに従う傾向があるという。つまりは体の方がこれから体温があがるリズムになっている時に体温を下げようとしても下がらないということである。

 

 

リズム改善のための方法

 ではどうすれば良いのか。それはつまりはこのリズム自体をずらすということになる。その方法だが、実にシンプルでつまりは朝起きたときに光を浴びる(30分ほど)。さらに朝食を摂ることで効果が出る(つまりは以前から睡眠改善の方法として言われているやり方である)。実際にこれを試すと、先ほどの測定で睡眠の質が良くないという結果が出ていた人のうちの半数ぐらいはパターンが改善され、本人の実感としても睡眠が良くなったとのこと。なお2週間から1ヶ月ぐらい継続すると大体リズムが出来てくるという。なお午後3時以降の仮眠は夜の睡眠に悪影響を与えるからタブー。仮眠をとるなら昼食後から午後3時の間で30分以内とのこと。なお高齢者などで眠くなるのが早すぎるという人の場合は朝の光は逆効果になるので、その時は夕方に光を浴びるように

 なおリズムの乱れがもろに重要であるのは心因性発熱がある人とのこと。これはストレスがかかった時に発熱する人のことで、これは熱が出たときに何が切っ掛けになってるかを調べたら、ストレス源が明確となって対処が可能となるとしている。

 

 

 以上、体温のパターンから始まったが、結局のところは以前から言われている睡眠の質を改善する方法の話であり、その点では全くといって良いほど新味がなかった。新味と言えるとしたら、最後に付け足しのように登場した心因性発熱ぐらいで、後は睡眠の質低下の原因の生活リズムのズレが体温変化に出てくるという話だけである。つまりは切り口を変えただけで従来ネタの焼き直しという感が強い。

 と言うわけで今回は今ひとつの練り不足であることが感じられるのだが、これはこの番組がこの春で終わりということから、検討中のネタを慌ててまとめてツッコんできたのではという気がかなりする。この番組は今年に入ってから珍しいぐらい毎週放送しているので、手がけていたネタを急いでまとめて棚さらいしている感が強い。と言うことは、後番組はガッテンとは全く違ったテイストの番組になるということか(同じテイストの番組だったら、作りを変えてネタの流用が可能)。くだらないバラエティが始まるのではという嫌な予感がしてきた。それでなくてもここ数年のNHKの新番組はレベルの低下が著しいから(例えば歴史番組でもヒストリアから歴史探偵になって大幅に劣化した)。ましてや科学テイストのある生活情報番組という枠さえもはずれたら、恐らく最早見るべき価値のある番組が登場するとは思えん。もしかして「ウルトラアイ」の頃からこの枠を見続けたきた私も離別するときが来るのかも。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・体温は1日のうちで1℃ぐらいは変化する。とのこと。
・重要なのはその変化のパターン。日中から夕方に向けて上がっていき、就寝前には下がるというのが正しいパターン。体温が下がることで体が就寝の準備に入る。
・このリズムが乱れていると寝付きが悪くなって睡眠の質が低下する。
・リズムを修正するには朝に太陽の光を浴びることと朝食を摂ることが重要。
・なお体温の変化を調べることで、心因性発熱の人の場合はストレス源が解明できて改善の可能性もあると言う。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・それにしても最近のNHKの番組はよく「スタッフの未熟さ」を感じる場合が多いんですが、現場のレベルが低下しているのかな。番組の主旨が不明だったり、説明が回りくどくて分かりにくかったりということが増えてます。今回はそこまでひどいわけではないんですが、もっとネタの段階で一練り欲しかったという印象です。

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