教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

3/17 BSプレミアム ヒューマニエンス「"天体のチカラ"絶滅と進化のインパクト」

月があったから生物が存在できた

 今回は唐突に「天体のチカラ」とのことで、ん?それだと2時間後の番組のネタではと思ってしまうところだが、いかにもこの番組らしい内容が来るから心配なく。

 まず最初は月の影響。実はそもそも月が存在しなかったから、今日の我々が呼吸する大気自体が存在していないという話から。

 地球誕生は46億年前だが、その後に地球に火星ぐらいの大きさの天体が衝突し、飛び散った破片が集まって地球の近くに月が出来た。出来た当初の月は地球の極めて近くに存在したという。この月が地球の酸素生成に影響しているという。地球の酸素は30億年前に存在していたシアノバクテリアの光合成によるのだが、実は酸素が爆発的に増え始めたのはシアノバクテリアが登場してから5億年後である。この理由だが、誕生当初の地球は1日がわずか6時間という超高速で回転しており、これだとシアノバクテリアが3時間かけて日光が降り注ぐ浅い海に浮上してきてもすぐに夜になって十分な光合成が出来なかった。しかし月が潮汐力を働かせることで地球の自転にブレーキをかけ、25億年前には1日が18時間程度にまで伸びたという。こうなるとシアノバクテリアが光合成をする時間が十分にあるために酸素が爆発的に増加することになったという。

 さらに月のチカラが野菜の成長に影響を与えるという。トヨタ関連の部品会社での実験によると、レタスの人工栽培において昼と夜の照明のパターンを満潮のリズムに合わせたところ、レタスの生長が2割大きくなったのだという。もっともそのメカニズムは不明とのこと。なおトマトだと花の数が増えるという効果があったが、豆類や春菊は変化がなかったとのこと。いよいよ良く分からん。なおスッポンに月のリズムに合わせてエサを与えると1.6倍の大きさになったと言うからこれはすごい。なお番組中で月が誕生当時地球からどう見えたかの再現をしていたが、あまりに巨大すぎて恐怖で気が狂いそうな映像であった。

 

 

宇宙から飛来して人類の進化に影響を与えたもの

 さらに宇宙から飛来して我々の運命を左右したのが隕石。巨大隕石の衝突で恐竜が絶滅したのは現在の通説となっているが、この時に我々の祖先は進化をすることが出来たのである。なおこの時に恐竜が滅びなかったとしたらトロオドンのような知能が高かった思われる恐竜が進化して、恐竜人間が誕生したのではなどと推測されている。その姿は群馬県立自然史博物館で見ることが出来るそうだが、ディノサウロイドという想像生物が展示されている。指は3本(妖怪人間ベムか?)で人間のような姿である。なお番組ゲストの分子古生物学者の更科功氏は手を持つカラスのような恐竜人間を推測している。なお恐竜はその長い生命の歴史の間になぜ脳を進化させなかったかについて、更科氏は脳の巨大化はエネルギーの浪費であって、決して進化的には有利とは言えないと言っているのが興味深いところ。

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ディノサウロイド

 さらに宇宙から飛来して生命に影響を与えるものとして宇宙線もある。これらは常に宇宙から飛来している放射線である。超新星爆発などがあるとこれが大量に飛来するという。これらの影響は大気と地場によって軽減されている。しかし今から7億年前、強力な宇宙線が大量に地球に降り注いで生命進化に影響を与えたと考えられるという。この時、天の川銀河と小さな銀河が衝突して超新星爆発が大量に発生したのだという。この時の地球は全球凍結の状態で微生物が細々と棲息していたが、彼らがその影響を受けたというのである。強力な宇宙線はDNAに影響を与え突然変異を促し、これが生命の進化を加速したというのである。実際に全球凍結の前後で生命は爆発的な進化をしているという。この間に生物のサイズは100万倍となり、多細胞生物化したのだという。そして2億年後に地球は多種多様な生物を持つ星へと進化する。

 

 

地球の与える影響

 さらに地球の力を生物は感じていると言う。磁力を感じる磁性細菌が存在するが、実際に渡り鳥なども方角を感じており、それ以外にも多くの生物が磁場を感じていると考えられている。そしてその力は人にもあると考えているのが広島大学の眞渓歩氏。彼は地球磁場と同じ大きさを作り出す装置の中に人間を入れて脳波を観察した時に、磁場の影響が脳波に現れることが分かったという。磁場を感じて脳が何らかの処理を行っている証拠であるという。

 また重力も影響を与える。回転によって人工的に重力を作り出す装置でマウスを使った実証実験を宇宙ステーションで行ったところ、骨密度や筋肉の減少及び網膜の障害などもないことが分かり、人工重力が無重力による身体の問題を防ぐことが分かったという。なおこの装置は1分間に70回転以上もするということで目が回らないかが心配になるが、これはすぐに慣れるとのこと(回転径をもっと大きくすれば回転数は減らせる)。これを有人火星探査や月面探査に応用することも考えているという。なお月面の1/6の重力だと速筋の比率が増えてしまうという筋肉の変化は防げないことは既に判明しており、どこまでの重力が必要かは今後の研究だという。

 

 

 以上、天体が生物にどのような影響を与えているかの話。我々は地球という惑星上で進化して棲息してきた以上、惑星との関わりはかなり濃厚にあるのは確かである。それにしても月の影響が生物に及んでいるかもというのは興味深かった。なお私は普通に生活していたらどうしても24時間の周期からズレていってしまうのだが、もしかして私の身体は月の周期とシンクロしている? そう言えば今晩はやけに血が騒いで落ち着かないと感じたら満月だったというのは今まで何度も経験している。もしかして私の御先祖のどこかに狼男でもいるのか? もっともそうだとしてその末裔の私は超草食系なんだが・・・。

 なお重力の問題は発生の段階で身体の軸を決めるのに必要という話があり、そうだとしたら無重力空間では人間は生殖して繁殖することが不可能ということになります。この辺りは宇宙ステーションで研究していたはずですが、結局どうなったんでしょうか?

 

 

忙しい方のための今回の要点

・現在地球上の酸素が生まれるのには月が大きな役割を果たしている。原始地球に惑星が衝突して地球のすぐそばに月が生まれておかげで、潮汐力によって地球の自転周期が6時間から18時間まで遅くなり、そのことによってシアノバクテリアが光合成を行うのに十分な時間が確保できるようになったという。
・また月の周期に合わせて育てるとレタスの生長が進むという実験結果があるが、そのメカニズムは不明である。
・隕石が衝突したことで恐竜が絶滅したのは今の通説だが、このおかげで哺乳類が隙間で繁殖することが出来た。なお恐竜が絶滅しなかった場合の進化形である恐竜人間なども想像されている。
・宇宙から降り注ぐ宇宙線はDNAに影響を与え、突然変異を促すことで進化を加速した。7億年前に超新星爆発が増加した時期があり、その時に降り注いだ大量の宇宙線は単細胞生物から多細胞生物への進化を促したと考えられている。
・磁気を感知する動物は多いが人間にもその能力があるらしいことが実験で判明した。
・また人間の身体に悪影響を与えないために遠心力を利用した人工重力の研究も進んでいる。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ人間が地球という惑星の軛から完全に解放されるのはなかなか難しいでしょう。全く人類と異なる宇宙生物にでも進化しない限り、結局は疑似地球の環境を引きずって宇宙に出るしかないわけで、それにはかなりの労力と資源が必要です。人類が本格的に宇宙に居住するのはまだまだ先でしょう。

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