教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/17 TBS系 世界遺産「大西洋の真珠!マデイラ島の奇跡の森」

氷河期を生き残った照葉樹林の島

 大西洋の孤島、ポルトガル領のマデイラ島は大西洋の真珠と呼ばれている。奄美大島より少し大きいこの島の北側の森が世界遺産となっている。


www.youtube.com

 人口27万人のマデイラ島では、その半数が南側の町のフンシャルに住んでいる。緩やかな斜面に段々畑を作って暮らしてきた。火山島のマデイラ島は実は海底4000メートルからそびえる巨大な山である。海沿いには断崖が存在している。島中央の最高峰は標高1862メートルのピコルイヴォ。つまり海底から5800メートルもの高さのある火山島である。

 この山の北側には氷河期を生き残った照葉樹の森が存在する。水で削られた大地は原生林となっている。ローレルが良く生えているために森には良い香りが漂っているという。氷河期以前には照葉樹の森はヨーロッパ南部に広く分布していたが、氷河の進展でこれらは消失し、大西洋の孤島でだけ生き残ったのだという。その中でマデイラのものは規模が最大である。

 

 

森と島民を育む豊富な水

 マデイラの海沿いには固有種のプライド・オブ・マデイラが花を咲かせている。北側からは常に強い風が吹いており、この風で岩が削られる。そしてこの風が湿った空気を運び島の北側には常に霧がかかっているので、この森は雲霧林とも言われる。一方山を越えた風は乾燥し、南側には乾燥に強い竜血樹が生えており、風景は一変する。島の北側の林はこの霧から大量の水分を得ている。だから多くの木は表面にコケなどが生えている。

 こうして集まった水は滝となって流れて行く。この水を島の南側に運ぶために島の人々は長大な水路を建設した。これらの水路は16世紀から建設されており、その総延長は2000キロにも及ぶという。この水は畑に導かれ、この水を使って島の人々は痩せた溶岩の土地を豊かな畑に変えてきたのである。南部には葡萄畑が広がっている。またこの水路は整備用の道が脇を通っているので、今は格好のハイキングコースでもあると言う。今でも水路は島の大動脈だという。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・大西洋のポルトガル領のマデイラ島は、氷河期を生き残った照葉樹の森が存在し、それが世界遺産となっている。
・この島は4000メートルの海底からそびえる火山島であり、中央の最高峰は標高1800メートルもある。
・北側から吹き寄せる強い風が湿った空気をもたらし、それが島の北側に豊富な水分を与えるので、島の北側には常に霧がかかり、雲霧林が生成している。一方風が山を越えると乾燥するので、島の南側は乾燥大地である。
・島には16世紀から島民によって北側の豊富な水を南に導く水路が建設されており、総延長は2000キロに及ぶ。島民はその水で豊かな畑を作ってきた。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・断崖のすごい島なので、水路を作るのも簡単ではなかったでしょうね。重機が入れると思えないので、ほとんど手作業でしょうかね。すごいな。

次回の世界遺産

tv.ksagi.work

前回の世界遺産

tv.ksagi.work