教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

5/25 NHK 歴史探偵「鉄道開業150年」

工事中に発掘された鉄道遺跡

 この度、高輪ゲートウェイ駅の工事に際して、日本で初めて鉄道を敷設した時の石垣が地中から発掘された。そこで今回はその鉄道開業に纏わるエピソードだそうな。

 新橋-横浜間に初めての鉄道が開業したのは150年前で29キロを53分で走ったという。なお新橋-品川間は線路は海上を走っているのだが、それにも事情がある。発見された石垣は高輪築堤と呼ばれ、当時はこの地域は海であったのだという。現地では地盤を固定するために打ち込んだ杭やイギリスから輸入していた当時のレールなども発掘されたという。

 この築堤には御台場の砲台などにも使用された日本の築城技術が活用されているという。さらにはこの石垣を固定するのにセメントの代わりに漆喰が使用されているが、漆喰は湿気に強いために海の上の築堤にはむしろ最適であると言う。

 

 

鉄道が海の上を走っていたのは西郷隆盛のせい?

 なおわざわざ海の上を通した理由であるが、産業振興のために鉄道建設を進めたのは大隈重信と伊藤博文であり、当初案は東京から神戸までを結ぶという壮大なものだったという。しかし西郷隆盛などが「鉄道建設よりも軍備を優先するべき」と猛反対したのだという。また資金不足もあり、イギリスから借金をして、とにかくまずは建設すべきと計画が縮小され、新橋-横浜間に絞ったのだという。

 しかしそれでもまだ問題があった。新橋-横浜間には軍の土地があり、鉄道建設に反対する軍はこれを絶対に譲らないと主張、測量さえも認めない強攻策に出たという。そこで大隈は海に鉄道を通すというアイディアを実行したのだという。

 結局はこうして鉄道は建設された。ちなみにこの開業式で西郷はチャッカリと乗車しているという。なお大久保利通も反対派だったのだが、実際に試乗して「百聞は一見にしかず」と自らの見解を改めたという。

 後半はあらゆる資料を調査して、当時の鉄道をCGで再現するということを行っているのだが、これについてはほとんど鉄オタを喜ばすための企画であって、あまり意味はない。なお当時の料金は新橋-横浜で一等は今の価値で1万5千円もしたという。それでも大人気で、この時代に正月は鉄道に乗って川崎大師や成田山に初詣するというのが習慣になったのだという。また24時間制の導入も鉄道のダイヤと関連しているとのこと。


 以上、鉄道黎明期のお話。西郷の反対で海上を汽車が通るようになったとかのエピソードは興味深いが、やっぱりまだまだ内容に無駄な部分が多くて、トータルとして番組内容が薄いという印象は拭えない。さらにその薄さに拍車をかける佐藤二朗の無駄話。やっぱりこの番組は基本的に感心しない。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・高輪ゲートウェイ駅の整備中に地中から鉄道開業当時の高輪築堤の遺構が発見された。
・この石垣は当時海だったこの辺りに鉄道を通すために築かれたもので、御台場の石垣の技術が使用されており、またセメントの代わりに漆喰が使用されている。
・鉄道を海の上を通したのは、西郷隆盛が鉄道建設よりも軍備を優先するべきと建設に反対し、新橋-品川間に土地を持つ軍が強硬に建設に反対したからだという。
・ちなみに西郷も鉄道開業式では乗車したらしいが、どういう見解を持ったかは残っていない。なお同じく鉄道に反対していた大久保利通は「百聞は一見にしかずだ」と自らの見解を改めたという。
・なお当時の鉄道の運賃はかなり高額にもかかわらず大人気で、正月には鉄道で川崎大師に参拝に行くという習慣が誕生し、これが今日の初詣につながっているという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・どうにもこの番組の中身の薄さが気になって仕方ないですね。なんか最近のNHKのトレンドを悪い意味で象徴している。

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