教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/8 NHK 歴史探偵「妖怪大国ニッポン!」

妖怪の原点「百鬼夜行」

 日本では古来から様々な妖怪が語られる妖怪大国であるので、その妖怪達の原点を探ると言うことらしい。

 まず最初に登場するのは百鬼夜行が目撃されたとされる京都の一条通。ここでは現在はモノノケ市なる妖怪マニアのフリマが開催されているとか。現在向きの妖怪なんかも紹介していたが、これはどうでもいい内容。

 で、一条通が百鬼夜行の舞台になったわけだが、人の死が今よりもあちこちにありふれていた平安時代、一条通は京都の一番北の外れということで、墓場で死体を捨てに来たり埋めに来たりするような場所だったので、勢い妖怪が出てくるという話に結びついたのだという。百鬼夜行の姿は大徳寺真珠庵が所蔵する「百鬼夜行絵巻」などに記されているが、青鬼、赤鬼などから付喪神など様々な妖怪の姿が生き生きと描かれている。この絵巻は後世に最も影響を与えたとされている。また近年になってこれに匹敵するレベルの百鬼夜行絵巻も見つかったと紹介している。

 

 

江戸時代の妖怪ブーム

 しかしそうやって登場した妖怪が江戸時代になると大きく変容を遂げるという。番組ではここで三次の妖怪専門の博物館を訪問している。ここの展示品で特徴的なものとして3つを紹介しているが、まずはおならで妖怪を退治するという絵巻。次が餅のような頭をした奇妙な妖怪が登場する人面草子(妙に感覚が現代的である)、そして136体の妖怪をかたどった像が登場する。この像などは1つ1つ造形が異なる妖怪の姿を楽しんだのではとしている(キン消しのような感覚だろうか?)。とにかくそれまでの恐ろしい妖怪から面白い妖怪に変わったという。

 その背景は江戸が大都市となって闇が薄れてきたことによって、妖怪は既に遠い存在となっていたのだという。そして恐くなくなると空想キャラとして楽しむようになり、そのきっかけとなったのが有名な鳥山石燕の「画図百鬼夜行」だという。まさに妖怪大図鑑であり、これらが人々の想像力をかき立てたのだという。こうして江戸時代に妖怪ブームが沸き起こる。

 そして最後は現代の妖怪の権威・水木しげるについての紹介だが、彼が描いた妖怪は各種の文献に取材し、姿が残っているものはなるべくそれに忠実に、残っていないものを想像力を駆使して製作したという。妖怪文化を残すという研究者的姿勢で描いていたという話・・・は良いんだが、これは歴史番組には不要。


 以上、妖怪という毛色の変わったテーマを扱うのはこの番組らしいところだが、やっぱり中身が薄くてどうでも良いような内容が多いのもこの番組らしいところである。どうでも良いネタにくだらない佐藤二朗の話で埋めているのがこの番組。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・妖怪のルーツと言えるが平安時代に多く描かれた百鬼夜行絵巻である。
・江戸時代になると大都市化した江戸では闇の恐怖が少なくなり、妖怪に対する恐怖はなくなっていった。すると今度は空想キャラとして楽しまれるようになる。
・そのような妖怪ブームに火を付けたのが鳥山石燕による「画図百鬼夜行」である。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ今更どうこう言っても仕方のないことだが、本当に中身が薄いな・・・。もうこのシリーズがパイロットで放送されたときから、「新番組をこれにするつもりなのなら、恐ろしいほどくだらん番組になるぞ」と嫌な予感がしたのだが、目下のところ見事に予感が的中してしまっている。本当に近年のNHKの番組制作力の低下はひどすぎる。

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