教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

8/10 NHK 歴史探偵「戦争とアイドル」

今回は特別ドラマの宣伝企画です

 戦争とアイドルとはこれまた唐突で突飛なテーマと思ったら、これはしっかり理由があって、戦争時のアイドルと言える明日待子を主人公にしたドラマがこの翌日に放送されるからということらしい。全くこの番組らしいというか、最近はNHKの他の番組の宣伝企画ばかりである。それと共にひたすら佐藤二朗の無駄話ばかりが長くなって、番組の内容はドンドンと薄くなっていくという次第。

明日待子

 

 

AKBの元祖とも言えるアイドルたちに重要グッズ

 さて最初に登場するのはムーランルージュ新宿。昭和6年に設立された小劇場で、ここのトップ人気女優の明日待子が例のドラマの主人公だとのこと。と言うわけでしばしはドラマの宣伝になる。

 で、ポイントは小劇場故に女優と客の距離感が近い。さらには個性豊かな女優が揃っているので、客ごとに推しがいるというわけで、もろに今日のAKBの前身。多くの若者が通っており、菊池寛などの文化人なども常連でいたらしい。

 そしてアイドルと戦争の関わりを象徴するのがブロマイドだという。実は戦意高揚のために前線の兵士への慰問品にブロマイドなどがよく含まれていたという。で、この後は突然に渡邊佐和子アナがモデルとなって当時のブロマイド調の写真を撮るというどうでも良い話が入る。とにかくポイントは目線はカメラに向いて、さらに全身写真よりもバストアップの方が良く、手先まで写すのだとか。まあ正直なところどうでも良い話だが、要はブロマイドを見た人に写真の中から語りかけてくるように思わせるということである。

 で、さらに戦意高揚のための仕掛けがあったという。軍が関与してのアイドル写真雑誌のようなものまであり、そこには彼女たちからのものと思わせる(実際は軍部のオッサン共が頭をひねって考えていたのだろうが)メッセージが添えられており、それが巧みに兵士たちの戦意を高揚させるようになっていた(お国のために頑張っているあなたの武運をお祈りしていますの類い)。戦場の兵士たちは自分の恋人からのメッセージのように感じたろうという。

 

 

戦争に巻き込まれた宝塚

 次に登場するのは戦時中の宝塚のステージの映像だが、あからさまに戦意高揚を目的としたまるで北朝鮮のような気色の悪いショーが行われているのだが、これが何かというもの。調査の結果、昭和14年の「花と兵隊」という日本軍を讃えた、まるで北朝鮮のような吐き気がするほど気色悪いショーである。

 で、なぜ宝塚がこのような気色の悪いショーをしたかというと、日中戦争が開始されての国民精神総動員という気色の悪い政策のせいだという。さらにこの直後、宝塚の一行が初めてアメリカ公演をした時に、宝塚の存続さえ揺るがす大事件が発生する。カナダで一行はカナダのバスケットボールチームと知り合いになり国際交流をしたのだという。するとカナダがイギリスの植民地で、当時は国内で反英感情が高まっていたことから、不謹慎だ国益を損なうと今でもいるようなタイプのキ印共が猛攻撃をして、参加した生徒を退校させろとか言い出すキ印まで出てきて、憲兵隊に処分を求める輩が出てくるというヒステリー状態になったらしい。その結果、宝塚は存続のためにも軍需工場への慰問などの戦争協力を強める必要に迫られることになったという。

 最後は実際に国策に巻き込まれたというアイドル達の証言。実際に2017年の明日待子氏の映像が残っているが、出征前に劇場にやって来た若者たちの手を取りながら「武運長久をお祈りします」というしかなかったという。また戦地慰問をしたという中村メイコ氏はまだ子供でありながらあちこちの戦地を慰問させられたらしいが、特攻隊を慰問した時のことは忘れられないという。今でも戦争協力に利用されたという複雑な気持ちは拭えないという。また高峰秀子氏が所有していたという彼女の写真を手鏡にしたという兵士の形見が登場。彼女もやりきれない思いを抱いていたという。

 

 

 と言うわけで戦争に翻弄された若者や、利用されたアイドル達の話。なおこの後に佐藤二朗がコメントするのだが、感極まってしまったのかボロボロで何を言っているのか分からない状態になっていたのだが、それをそのまま流していたことが、要は彼のコメントはどうでもいいんだということを現してしまっていたが。

 それにしても見ていてつくづく思ったのは、とにかく気持ち悪い。北朝鮮そのものであり、この当時の日本はかなり気持ち悪い国家になっていたんだなということを感じる。こんな時代を理想と考えて、再び日本をそんな社会にしようと考えている輩もいるようだが、一体どこに魅力を感じるのか人間性を疑う。まあ確かに、悲惨な戦場に送られるのは普通の国民ばかりで、戦争を決めた上層部は安全なところでのうのうと暮らしていて、中には戦争のドサクサでボロ儲けをした奴までいるので、そういう連中にとっては戦争とは極めて魅力的なイベントなのかもしれないが。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・戦争時には兵士たちの士気を挙げるためにアイドルまで利用された。
・戦場の兵士への慰問袋によく入れられたのがアイドルのブロマイド。また軍が関与したアイドル雑誌などは巧みに戦意高揚のメッセージが込められていたという。
・宝塚などもカナダのバスケットチームと交流したことが「国益を損ねる」と頭のおかしい連中から猛批判を受け、慰問活動など国策に沿う活動の強化を余儀なくされたという。
・しかし戦場の兵士たちを死に追いやることに協力させられた当人達には、後々まで拭いきれない思いが残っている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・今でもAKBとかなんて真っ先に動員されて、征け征け日本軍の兵隊さんなんて歌を歌うことになるだろう。もう既にそれを見越してか、今から政府に媚びを売りまくっている奴なんかもいるようだし。ああ、気色悪い。

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