教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

9/13 BSプレミアム ヒューマニエンス「"胃"生きる喜びを創る臓器」

食事の快感を生み出す胃

 今回のテーマは胃。単なる食品消化のための器官と考えられているが、実はどっこい結構大きな影響を与える臓器である。確かに私もここのところストレス過多で胃の調子が悪い。

 胃は筋肉と粘膜の二層構造になっており、粘膜によって強酸性の胃液から守られている。そしてこの筋肉は自律神経によってコントロールされている。また胃は年を取らない臓器と言われており、日々更新されるぐらい新陳代謝が激しいのだという。

 また食べ物を美味しいと思うのは、舌と脳の働きだけでなく、そこには胃も大きく関係しているのだという。胃がんなどを患って全摘手術を受けると、小腸と胃が直結されることになる。この時には胃酸は出ないが、小腸の一部が膨れて食糧をとどめる役割を果たすようになる。このように人間は機能的には胃がなくても生きていける。しかし胃を全摘された患者は食事の喜びを失うことがあるという。これは胃がグレリンというホルモンを分泌しているからである。グレリンは摂食を促すのみでなく、食事を摂ることによる幸福感も生み出すのだという。グレリンがなくなることで、食事を促す感覚と食事による幸福感なくなる。それまでは脳でのみ分泌されると考えられていたグレリンが胃で分泌されることが分かったのは大発見だったという。さらにグレリンは成長ホルモンの生成を促し、筋肉量増加などで適正な体の維持を行う働きを持っていることが分かっているという。

 さらに大食いの人の胃はかなり拡大出来る能力を持っていると良い、まだまだ謎の多い器官のようである。また食欲を感じると胃が動いて別腹を作るなどということも分かっている。なお食欲不振に対しては医療の現場ではグレリンを投与する治療もあると言う。

 

 

生命進化にも大きな影響を与えた胃

 生命の進化を見た場合、消化管は最初の頃から存在するが、胃は比較的新しい臓器になるという。牛は4つに分かれた巨大な胃を持つことが知られているが、これは栄養分の少ない草から徹底的に栄養を摂取するためのシステムだという。人の胃の特徴は胃酸が非常に強いことだという。人の胃酸はpH1.5と他の動物(ネコは3.6、犬は4.5)に比べると極めて強力だという。これ雑食性のために口から毒物が入ることが多いために強力な胃酸が必要だったのだという。また動物が胃を持つことで食べ物を溜め込めるようになり、食べない時間を持つことができるようなり、これが人類が文化を持てるようになった理由でもあるという。ちなみに日本人は戦後に動物性タンパクの摂取量が増えたことにより、胃酸が増える傾向にあるという。そして胃酸が増えすぎたことが原因で逆流性食道炎などの問題が発生しているという。

 さらに吐くという行為には意味があるという。これは危険なものが入った時に排出するという緊急避難であるが、さらには外敵に襲われた時に体を軽くし、さらには消化に使うエネルギーを逃走に使用するのだという。このシステムの名残があるので、プレッシャーがかかった時に吐き気や胃の不調が起こるのだという。胃は自律神経に支配されているので、不安がある時などは胃が止まるという。このような状態が機能性ディスペプシア(消化不良)だという。心の傷が胃の傷を発生させるとか。自律神経をヨガなどで整えるなどの対策を行っている人もいる。

 

 

胃のトラブルのほとんどに関係するピロリ菌

 しかしこの過酷な胃の中を住処にする生物がいる。これがピロリ菌。人の胃の中にだけ生息する細菌である。このピロリ菌は胃の上皮細胞に取り憑いて発がん性物質を生じる。胃がんの9割はピロリ菌が原因だという。またピロリ菌は親から子に経口で受け継がれているので、ピロリ菌のタイプを調べると人類の歴史も分かるという。それによると世界には7つのピロリ菌がおり、これらはアフリカで生まれて、グレートジャーニーと同じ経路で広がって行っているという。日本には1万年前に大陸から渡ってきているのだが、そこで一部の沖縄だけはピロリ菌のタイプが異なるという特徴があるのだという。沖縄のピロリ菌は4万年前に人類が西アジアにいた頃に分岐したものであり、本土のピロリ菌とは全く異色だという。

 なお胃の病気のほとんどはピロリ菌が原因となっているという。またピロリ菌の除去は早いほど胃のダメージが少ないので将来胃がんにならないという。

 

 

 以上、胃についてだが、胃は思いのほか様々な影響力を持っているということだろう。食欲はともかくとして食事から来る満足感まで胃がコントロールしているというのは目からウロコ。そう言えば私の親父は、頭の方はかなりボケているにもかかわらず、食に対する執着が異様に強いんだが、脳はやられているのに胃が頑健なせいのようである。改めて納得がいった。

 ピロリ菌については早めに除菌してもらった方が良くて、40を超えてからだと既に胃が大分ダメージを負っているので、残念ながら除菌の効果が出にくいという話が出ていたが、ということは私はもう手遅れか。というかそもそも私は今まで2回もかなり激しい胃痛で救急車で運ばれており(最初は30の時)、胃は検査のためにかなり荒れていると言われる状態なので、既にダメージが半端でないようなので、今さらピロリ云々って次元でもないようだ。

 なお食欲が低下している人にグレリンを処方する手はあるようだが、食欲が増進している人の食欲を抑える方法はないとのこと。恐らく今の世界ではこちらの方こそが望まれているはずだが。もっとも食べるべきものが食べられないというのは体にとって病気と認識されるが、食べるものを食べられるということは病気と認識されないのかもしれない。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・人間が食事を美味いと感じるのは、実は脳と舌の働きだけではない。食事を摂ると胃からグレリンというホルモンが分泌されて、脳の快楽中枢を刺激することが分かってきた。
・だから胃を全摘した患者では、食事の意欲がなくなるということがあるという。
・消化管は生命進化のかなり初期に現れるが、胃が現れたのは比較的最近だという。胃に食物を溜め込めることで、食事をしなくてもいい時間が取れ、そのことが文明の発展を促したという考えがある。
・人間の胃液はpH1.5と他の動物よりも極端に強く、これは雑食性による感染を防ぐためだと考えられるが、現代人はこの強すぎる胃液のせいでのトラブルが多いという。
・また吐くという行為ができるのは、毒物の摂取を防ぐだけでなく、危険が迫った時に体を身軽にした上で消化に費やすエネルギーをも逃走に振り分けるという自衛の手段だという。だから胃は神経と密接な関係があり、プレッシャーがかかると胃が痛くなったり吐き気がするのはこの習性の名残だという。
・人の強烈な胃液の中で生きるのがピロリ菌で、上皮細胞にとりつくことで発がん物質を発生させる。人の胃のトラブルのほとんどはピロリ菌に由来しているという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・ピロリ菌の分布で沖縄の一部だけが特異だと言っていたが、やはり沖縄には南方からの渡来系の末裔がいるんだろうな。顔を見ただけでも沖縄系は明らかに本土と違うというのは感じるから。

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