古代ギリシア人が作った港町
今回はイタリアのシチリア島のシラクーサとパンタリカの古代遺跡。シチリア最古の港町のシラクーサは2本の橋でつながる島が港の発祥の地である。ここには真水の湧く泉があることが、2800年前に海を渡ってきた古代ギリシア人がこの小島に港を築いた理由だという。
旧市街の一角にはギリシア神殿の遺跡が残る。ここはギリシアが各地に作った都市の1つだった。小島から本土に広がった市街にはギリシア劇場の遺跡が残る。1万5千人が収容できる半円形の劇場は、石灰岩をくりぬいて作られた。観客席の後ろには人口の泉が作られている。水は地下水路で運んでいるのだという。さらに劇場の下には巨大な穴があり、これは建材のための石切場だという。石切場は劇場の横にもあり、深さは最大45メートル。膨大な量の石が運び出された。
紀元前4世紀にはアテネを凌ぐ人口30万にまで及んだ。地中海の交易路のほぼ中央という地の利が海洋貿易における重要拠点としての発展要因となり、古代ギリシアでもっとも美しい都市とまで言われるようになる。現在キリスト教の大聖堂となっている建物は、ギリシア神殿を利用して聖堂を作ったという。
先住民の遺跡とローマによる遺跡
シラクーサの内陸には深い渓谷がある。このパンタリカには3000年以上前の遺跡がある。垂直の断崖に開かれた5000もの穴は青銅器時代に先住民が築いた墓地である。人間は大地から生まれて大地に帰るという思想を持っていたという。渓谷の崖の上には王宮の跡の遺跡がある。シクリと呼ばれた先住民は高度な技術を持っていたことが分かっているが、ギリシア人が島に定住するようになると次第に衰退していったという。
シラクーサには古代ローマ人による円形競技場もある。2200年前にはギリシア人に代わって古代ローマ人がこの地を征服した。シラクーサの古い教会の廃墟の地下から巨大なローマの迷宮が発見された。長い地下通路の壁には半円形の穴が開いており、古代ギリシア時代の地下水路を利用してローマ人が築いた教会の墓地だという。様々な文明の遺跡が残るのがこの地なのだという。
忙しい方のための今回の要点
・シチリア島のシラクーサは古代ギリシア人が築いた港であり、地中海交易路の中央に位置することから、紀元前4世紀にはアテネをも凌ぐ人口30万の大都市となった。
・円形競技場の周辺は石切場となっており、都市を建設するための大量の石材はここから切り出され、古代ギリシアで最も美しい都市を形成した。
・シラクーサの内陸の深い渓谷であるパンタリカには、垂直な断崖に5000以上の横穴が掘られている。これは青銅器時代のこの地の先住民シクリによる墓地であると言う。彼らは高度な技術を有していたが、ギリシア人が定住するようになると衰退した。
・また2200年前にはシラクーサは古代ローマ人の支配下となり、ローマ式の円形競技場も建設された。また地下にはギリシア人の水路を利用した墓地が作られている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・古代ギリシアに古代ローマ、さらにそれ以前の先住民の遺跡がまとめて見学できるという地ですが、やはりそれだけ地中海において重要な拠点だったということでしょう。ということは戦乱に巻き込まれたことも多い気がしますが、その話は出ませんでしたね。
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