教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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9/25 TBS系 世界遺産「古代の傑作!ローマ水道橋の秘密」

1800年前の古代ローマの水道橋の残る町

 スペインのセゴビアには壮麗な建造物が並ぶ。ここにあるのが1800年前の古代ローマの水道橋である。


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 セゴビアは2つの川に挟まれた丘陵の上にあり、この地の利に目をつけたローマ人が1800年前にここに都市を築いた。ここに水を供給するために建造されたのが水道橋である。全長728メートルで町に向かって徐々に低くなって水が自然に流れるようになっている。傾斜が急すぎると水の圧力で水路が崩れやすくなるから、傾斜は計算されて設計されている。

 一番の難所は谷越え。ここではアーチを二段重ねて乗り越えており、橋の高さは28メートルにもなる。この橋は漆喰などは使わずに石を積み重ねただけで建造されており、それにも関わらず今日まで崩れずに残っているのである。かつて1日260万リットルもの水を運んだという。

 これを建造するための石材は12キロ離れた石切場から運んだ。硬くて丈夫な花崗岩を用いており、さらにここの石は自然に楔などで割ることが出来たのだという。2万個以上の石が使用されている。当時の先端技術が投入されたのである。

 この水路の水源は東へ15キロ離れた山地の中のフリオ川である。質の良い水が安定して流れるので理想的な水源であった。森を地下水路で潜り、距離にして15キロを高低差250メートルでゆっくりと流れて行く。そして丘の上に到達するのである。

 

 

中世にはイサベル1世の元で繁栄を極める

 1度使われなくなっていた水路だが、15世紀頃に修復されてもう一度使用されたという。その時の水路はマヨール広場の地下から発見された。水道橋から延長して町の下を横断するように中世の水路をひいたのだという。そしてその終着点は西の突端のアルカサルと呼ばれる城である。

 当時のセゴビアはイベリア半島を支配したカスティーリャ王国の都であり、女王イサベル1世の元で最盛期を迎えていた。この王国が後のスペイン王国につながることになる。城内は大航海時代の富で飾られており、イサベルはコロンブスのスポンサーとなった王でもあった。セゴビアの町の形は船の姿にもたとえられ、舳先にあるのがアルカサルである。堅固な城壁に囲まれた町は坂道や階段が多く、中央にはマストよろしく大聖堂がそびえ立つ。ここはカトリックの一大中心地であった。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・スペインのゼゴビアには1800年前に古代ローマ帝国が築いた水道橋が今でも残っている。
・この水道橋は花崗岩を積み上げて作られており、漆喰などを使用していないにもかかわらず、今日まで崩れずに残っている。
・水は15キロ離れたフリオ川から取っており、森の中を地下水路で抜けている。
・しばらく使用されていなかった水路だが、15世紀には再び修復され、地下水路を延長して西端の城郭アルカサルまで延伸された。
・アルカサルはカスティーリャ王国の最盛期を築いたイサベル女王の都であり、セゴビアは大航海時代の富で繁栄した。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・古代ローマの建築技術ってとんでもないんですが、この水道も実にとんでもないですね。これを石を積み上げるだけで作るんだから驚くばかり。またどれだけの労働力を動員したんだろうと思いますね。

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