教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

12/11 サイエンスZERO「ノーベル賞!量子もつれ&クリックケミストリー&人類進化」

ノーベル賞についての解説

 今回は毎年ある「今年のノーベル賞の内容を分かりやすく紹介しましょう」という回なんだが、その意図に反して結局は良く分からない説明に終始することが多かったりする。実際に今回なんて、いきなり「量子もつれ」と来たもんだから説明も結  構四苦八苦している。ちなみに私も量子力学は未だによく理解できないので、うまく説明できる自信もない(笑)。

 

 

物理学賞は「量子もつれ」の証明

 まず今年のノーベル物理学賞がこの量子もつれを証明したという3人。その内容だが、電子というのは自転していることが知られているが(いわゆるスピンという奴だな)、その回転が左向きと右向きがあるが、それ以外に両方が重なり合った状態のものがある。そしてその回転の向きは測定した時に初めて確定する(いわゆるシュレーディンガーの猫状態。私もギリギリここまでは理解できる)

 そしてこの回転方向が確定していない2つの電子が接近した時に発生するのが「量子もつれ」という状態になるのだという(?)。ここで例えば「お互いが反対になる」という関係になれるのだという(?)。この関係の電子を両方向に放出したとすると、片方の電子が観測されて回転方向が決まった瞬間に、離れた場所にいる相手の電子の回転方向も同時に決まることになるのだという(???)。これが量子もつれというもので、これが存在することを証明したのが受賞した3人とのこと。

 量子もつれの存在証明としてはジョン・ベル博士が考えたベルの不等式というのがあり、これを使えば量子もつれの存在が証明できるのだという。で、実験でこの不等式が崩れることが証明できれば、量子もつれは存在するという証明になるのだとか。件の3人はこの不等式が崩れることを証明したということらしい。ちなみにベル博士が受賞していないのは、彼は1990年に既に亡くなっているからだろう(ノーベル賞は生存している研究者にしか与えられない)。なお実験の細かいことを番組が説明しているが、どうもこの説明内容が「?」。

 なおこの量子もつれであるが、最先端の量子コンピュータの原理になっているというのだから、どうも実用の方が先行している雰囲気がある。

 

 

科学賞は「クリックケミストリー」

 次は科学賞であるが、これは「クリックケミストリー」と生体直交化学の開発というものだとか。これに関連して3名が受賞している。

 何やら初めて聞く言葉であるが、クリックケミストリーのクリックとはそのものズバリのパチンと嵌まるバックルのようなものであり、材料物質に結合ポイントであるクリックをつけて、そこでしか反応しないようにするということらしい。具体的なクリックとしては、窒素が二重結合で三連したアジドと炭素が三重結合で二連したアルキンを使用するという。これを反応させると環状の構造になる。このシステムを考えたのが1人目の受賞者。ただこの反応は熱を加える必要がある上に、副生成物も出来るという問題があった。これを銅触媒を使えば室温で反応して副生成物が出来ないことを報告したのが2人目の受賞者で、3人目の受賞者はこの反応を生体内で使用するために毒となり得る銅触媒を使用せずにアルキンを環状分子に入れることで反応性が高まることを発見したのだという。

 ちなみに生体内でこの反応をさせるのは、免疫からがん細胞を保護している糖鎖をこの反応で除去することで、がん細胞を免疫で攻撃するためらしい。なお生体内にはアジドもアルキンも存在しないので、生体に対しては影響がないと言うわけでこれが「生体直交化学」という意味らしい。

 

 

生理学・医学賞はネアンデルタール人のDNA復元

 最後は生理学・医学賞。これを受賞したスバンテ・ペーボ博士はネアンデルタール人のDNAを化石中に含まれ断片的なDNAを現代人のものと参照しながら、膨大な情報処理によって復元することに成功したのだという。なお現代人のDNAと比較することで、アジアやヨーロッパの現代人のゲノムの1~4%がネアンデルタール人由来のものであることを明らかにしたという。またこのゲノムがコロナの重症化リスクとも関連しているということも発見したとのこと。


 以上、今年のノーベル賞の内容について。うーん、やっぱり私には量子もつれは理解の範疇を超えてるわ。まあアインシュタインでさえ納得できなかったって言うんだから、まあ私ごときが理解するのはそもそも無理か。化学とか生理学・医学辺りはどうにか理解できるんだが。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・今年のノーベル賞の内容について紹介。
・まず物理学賞は量子もつれについて証明した3人。
・量子もつれとは電子スピンが中間状態にある電子2つの間で生じる作用とのことで、これが量子コンピュータの原理になっているという。
・科学賞はクリックケミストリー関連の3人。
・クリックケミストリーとは化合物に特定の置換基を入れることで、その部分で選択的に結合を作るものでアジドとアルキンが用いられる。
・受賞者はこの原理を考えた人物とそれを実用化した2人に与えられている。
・生理学・医学賞はネアンデルタール人のDNAを化石中の断片から復元した研究者。なお現代人にも1~4%ネアンデルタール人由来のDNAが含まれていることと、そのことがコロナの重症化リスクと関連することも証明したという。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・量子力学って、とことん普通の感覚やら常識にケンカ売ってきますからね。理解しようとすればするほど頭がおかしくなる気がするんですよね。まあ常識人には理解不能ですわ。

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