18世紀最大の宮殿と巨大水路
今回の世界遺産はイタリアのカゼルタの王宮と水道橋。ナポリ王がヴェルサイユ以上の王宮を作りたいと建設した18世紀最大の王宮であり、長さ3キロの庭園は水の芸術であり、そのための水を運んできているのが全長40キロの大水道橋である。
カゼルタはナポリの30キロ内陸にある。地中海貿易で栄えたナポリは過密都市だが、ここを支配したナポリ王が大宮殿を作る場所として目をつけたのがカゼルタである。1752年から30年がかりで建設したという。
建物も巨大だが、奥の庭園が人工水路が中央を貫く奥行き3キロの巨大なものである。この水路はフランス式とイタリア式の様式が取り込まれているものである。最奥には高さ83メートルの人工の滝があり、これが水路に水を注ぎ込んでいる。ここを流れる大量の水はカゼルタには水源がないので、40キロ離れたタブルノ山から地下に水道を通して運んでいる。途中には水道の点検をするためのチェックポイントが66箇所もある。この水道は山や谷などの起伏を迂回して引かれている。土地が低いところでは石の水道橋を作っているが、一番の難所はマッダニーロ渓谷だった。水道をここを越さすのに高さ55メートルの水道橋を建設した。長さ530メートルの橋は18世紀ヨーロッパの最大の水道橋だった。
高度な技術で築かれた水道橋に巨大王宮
建設したのはローマ教皇お抱えの建築家のルイージ・ヴァンヴィテッリ。宮殿や庭園も手がけている。この水道橋は10メートルに付き1センチの傾斜という精密設計がなされている。これはローマの水道橋に習ったという。幅1.2メートルほどの水道には今でも綺麗な水が流れている。この水は山の中の建物に運ばれ、そこから人工の滝が始まる。
水路の横にある庭園は美しい自然の風景のように見えるが、実はすべて人工的に作り込んだものだという。これはイギリス式庭園であり、また古代ローマ遺跡のような回廊も作られている。また宮殿は1200も部屋がある超巨大なものである(ヴェルサイユが700)。この巨大な宮殿の建設は30年かかり、建設を命じた王の子の代で完成したという。
なお王宮に引いた水道は途中で分岐させて村でも使用されるようになっていた。水が乏しい地域に水を引き、さらに水力を使って機械を動かし、毛織物工場を動かした。これでシルクの糸を毛織物にした。また葡萄が栽培され、ワインも作られるようになったという。
忙しい方のための今回の要点
・ナポリ王がヴェルサイユ以上の王宮を作りたいと建設した18世紀最大の王宮がイタリアのカゼルタにある。
・この王宮には水の芸術品の庭園があり、そこの水は40キロ離れた山から引いている。
・水路は地下を通るが、途中で55メートルの水道橋で谷も越えている。この水道橋はローマの水道橋をモデルに建設された。
・巨大な宮殿は1200室もあり、ヴェルサイユの700室よりも多い。この宮殿の建設には30年を要した。
・宮殿のための水道は、途中で分岐させて水の乏しかった村を潤し、水力で毛織物工場を動かすことで良質な毛織物が産するようになった。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・王宮なんて王族の見栄みたいなものだから、つまらないものに権力を行使するなと思ったが、さすがに商業地ナポリの王だけあって、実用にも使っていたか。まあそうでないと意味がないわな。
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