アルプス生成の秘密を語るマジックライン
スイスのアルプス山脈のサルドーナ地殻変動地帯は、アルプス誕生の秘密を物語る地域である。この地域の切り立った断崖に横一直線に伸びるライン。これがまさにアルプス生成のメカニズムを証明した。
このラインはマジックラインと呼ばれている。氷河で侵食されたこの地は多くの氷河湖が存在する。その水は青く輝いている。アルプスの絶景は氷河によってかたどられた。稜線の下を横断しているマジックラインは、近くで見るとそこだけ色が変わっているのが分かる。この全長30~40キロに及び、最高峰の標高3248メートルのリンゲルシュピッツの稜線の下から斜めに続いており、反対の端になるとかなり標高の低いところで見ることができる。
ここロッジホーデでマジックラインを観察すると、ラインの上下で地層が異なり、しかも下の地層が4000万年前の堆積岩で上の地層が2億5000万~3億年前の地層と、上の地層の方が新しいことが分かる。地層の逆転現象が起きているのである。この逆転現象を発見したのはドイツの地質学者のエッシャーだが、その理由は分からないまま100年が経過、説明がつくようになったのは大陸移動説の登場によってだった。移動するアフリカ大陸の古い地層がヨーロッパ大陸の新しい地層の上に乗り上げて隆起したことが原因だった。ウェゲナーの大陸移動説は当初は妄想と批判されたが、後にプレートテクトニクス理論の登場で彼の説は証明されることになった。
山と共に暮らす人々
この地の人々の暮らしは山と共にあり、かつてスレートの石材を切り出した鉱山の跡も残っている。スレートは薄く割れるために屋根材として珍重され、この地に富をもたらした。またチンゲルホルンの山には浸食による穴があるが、これは昔巨人に襲われた羊飼いが羊を守るために投げた槍が山に刺さってできたという伝説がある。年に2回、この穴から太陽が村の教会を照らすという。
忙しい方のための今回の要点
・スイスのアルプス山脈のサルドーナ地殻変動地帯には、マジックラインと呼ばれる地層の境界線がある。
・このマジックラインの下の層は4000年前の地層で、上の層は2億5000万~3億年前の地層と地層の逆転現象が起こっている。
・これを発見したのはドイツの地質学者のエッシャーだが、彼はこの生成理由の説明を付けることが出来なかった。
・100年後、大陸移動説の登場で初めて地層逆転の理由の説明がついた。アフリカ大陸の古い地層がヨーロッパ大陸の地層の上に乗り上げたのが生成理由であった。
・チンゲルホルンには浸食による穴がある。この伝説の穴から年に二回、太陽が地元の教会を照らすようになっている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・アルプスはとにかく地形のダイナミクスがすごすぎて日本人にはイメージしにくいです。今回もおよそ信じがたいような地形が次々と登場してます。
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