教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

5/14 サイエンスZERO「地球外生命の痕跡か!?火星サンプルリターンに挑め!」

火星で生命の痕跡を探す

 現在、火星で探査機パーシビアンスが生命の痕跡を求めての調査中である。その過程で謎の物質で表面を覆われた岩石が見つかるなど、生命発見につながるのではと期待されている。採取したサンプルはロケットで地球に送る計画になっている。

NASAの探査機パーシビアンス
(出典 NASA)

 火星はかつては水が存在したと考えられている。パーシビアンスは35億年前に湖だったと考えられているクレーターで調査を行っている。搭載された43本のサンプル管に既に19サンプルを収集している。パーシビアンスの周囲には堆積岩が見られており、ここにかつて水があったことの証明でもある。また堆積岩中には生命の痕跡がある可能性が高く、生命の痕跡の発見が期待されている。

 

 

生命の痕跡の可能性がある謎の岩

 その過程で表面を紫色の謎の物質に覆われた岩石が発見された。この岩石についてはロスアラモス研究所のニーナ・ランザ博士は地球にある良く似た岩石との比較から生命の痕跡の可能性があるとしている。表面の物質はマンガンが多いことが分かったが、ランザ博士によると地球にある似た岩石はシアノバクテリアの働きで出来ることが分かったのだという。つまりは火星の岩石もシアノバクテリアのような生物によって生成した可能性があるというのである。

 ただこれらのサンプルを地球に持ち帰るにはハードルがある。サンプルの回収にはロケットが火星に送られ、パーシビアンスからサンプルが移され、それが火星を周回している回収機によって地球に戻るという計画である。しかしこの計画は10年後なので、この時にパーシビアンスが故障していたらサンプルの回収が不可能である。そのためにバックアップとして、パーシビアンスに事前にサンプルを火星表面に落とさせておき、それを回収する方法が検討されている。この時の回収にはヘリコプターを使用するために開発中だという。

 

 

火星の水の研究と日本の探査機

 かつて火星には大量に水が存在したが、それがいつ頃まで存在したかは隕石の研究で推測できるという。45億年前の火星の水について分析したところ、重水素の比率は現在の地球とほぼ同じだったが、現在の火星大気中の重水素は6倍に増えているという。これは火星の水が宇宙空間に逃げていく過程で、より重い重水素は残ることによって割合が増えたと考えられるという。その結果、41億年前には半分ほどの水が失われ、現在は地表からは液体の水が消えてしまったと考えられる。ただしこの最初の4億年間は生命誕生に重要な時期なので、生命発生の可能性はあるという。

 さらに日本が計画しているもう一つ別のサンプルリターンも進められている。それはMMXという探査機で、火星の衛星のフォボスからサンプルを持ち帰ることを目指している。火星に隕石がぶつかった時に飛び散った砂がフォボスに降り積もるので、フォボスからのサンプルを集めると火星の砂が採取できるということになる。なお番組では言っていないが、火星からサンプルリターンするとなると火星は地球よりは弱いと言っても1/3ぐらいの重力があるので、ロケットで打ち上げる必要があるが、フォボスならほとんど重力はないのではやぶさで成功した小惑星からのサンプルリターンの技術の応用で可能であるという読みがあるのだろう。

JAXAのMMX
(出典 JAXA)

 

 

 以上、火星に生命の痕跡を求めるサンプルリターンについて。なおもし火星に生命が存在したときには、それが未知の危険性を秘めたウイルスだったら・・・なんてことは誰でも考えることで、井上咲楽氏もそのことにサラッと触れていた。だから当然ながら回収したサンプルは外界から完全封印されるとのこと(そもそもサンプル自体が地球の生命に汚染されたら無意味だし)。それでもやっぱりSFの古典的名作の「アンドロメダ病原体」みたいな事態を妄想したりするのである。

   
古典SFの名作です

 なお逆に地球のウイルスのおかげで凶悪な侵略者を撃退できるって話が、これまた古典SFの名作の「宇宙戦争」です。ラジオドラマがニュースと間違えられて、アメリカでパニックが起こったという有名なエピソードのある作品です。後に映画化もされてます。

   
今はコミカライズもされているようです

 ちなみに2005年にトム・クルーズ主演でリメイクされてますが、主人公がマッチョなだけで脳筋な親父に、明らかに精神不安定で足引っ張りまくりの娘と、出演者がアホばかりにしか思えないというとんでもない駄作でした。

   
体育会系親父空回りという作品でした

 

 

忙しい方のための今回の要点

・NASAの火星探査機パーシビアンスが現在生命の痕跡を求めて表面探査中だが、集めたサンプルを地球に持ち帰る計画がある。
・サンプルリータンノ計画は10年後で、地球から送ったロケットでサンプルを軌道上の回収船に送り、回収船が地球に持ち帰るという。
・なお火星にかつて大量に水があったことは隕石の分析から分かっており、重水素の分析から宇宙に地表の水は逃げてしまったと推測されている。
・また日本からは探査船MMXが火星の衛星のフォボスに送られることになっており、フォボス表面にある火星から飛び散った砂を持ち帰ることを狙っている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・はやぶさで有名になったサンプルリターンですが、いよいよ舞台を火星にということになってきましたか。パーシビアンスはまだまだ技術開発と銃なので分かりませんが、日本のMMXは実績があるだけに成功確率が高そうです。

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