教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

8/8 BSプレミアム ヒューマニエンス「"整理整頓"それはヒトの本能なのか」

整理整頓は脳を反映している?

 時折唐突なテーマの登場する本番組であるが、今回は「整理整頓」とはまた唐突な内容である。整理整頓はヒトの本能なのかとのことだが、これに対して私から答えるとNo。実際に私は整理整頓のスキルを全く持ち合わせていないから(笑)。それはともかくとして、このテーマに対しての専門家がいるというわけでないので、今回は関連ありそうなところに結構あちこちに行っている。

 まずは様々な専門家の元を訪れて、彼らがどのように整理整頓をしているかから始まっているが、やはり研究者の部屋というのは総じて乱雑に見えるもの。しかし実際に「○○の本を見つけてください」と言えば、すぐに見つけて出してくる。他人には乱雑に見えても、本人にはルールを持って整理されているのだという。一方、かなり片付いた部屋にいる研究者に論文を見付けてもらおうとしたら、見つからないという結果に。彼の場合は、必要のないものはさっさと整理してしまっていたからだという(つまりは当の論文は彼には必要のないもので、処分待ちだったということだろう)。このようにバサバサと整理していく研究者もいる。いずれにしても各人の脳内の反映だという。

 ちなみに整理整頓と言うが、整頓は整えることだが、整理とは整えるだけでなくて不要なものを取り除くことが加わるとか。これが私は苦手なんだよな・・・。どうやら織田裕二氏も似たような感覚を持っている人物らしい。

 

 

整理整頓と脳の関係

 で、ここら辺りから一応科学番組らしい展開となる。整理整頓と脳の関係を見るという。人間の思考力の高さには脳内の整理整頓が大切なんだという。脳内の記憶を意識で処理するにはワーキングメモリーが使われるのだが、このワーキングメモリーが1度に記憶から引き出せる情報は7±2しかないのだという。この少ない容量をうまく使おうとすると言葉が重要になるという。記憶を言葉でまとめることで扱いを増やすことが出来るという。つまりは「果物」という言葉で括ると、一つの項目で長期記憶内の多くの果物をサーチ出来ることになるので、情報処理能力が上がるのだという。このワーキングメモリーがうまく使えなかったら、その場その場の反射だけで行動することになるという。

 では歴史的に整理整頓がいつから始まったかだが、それはヒトが定住をするようになってからだという。狩猟採集の移動生活では転々とするので片付けの必要がなかった。それが定住して農耕をするようになると、所有するものを整理整頓する必要が生じたのだという。千葉県の加曽利貝塚では集落回りに貝殻を高さ2メートルにうずたかく積み上げた跡があり、意図的にそのようなことが行われていたという。このような整理整頓が共同体の結束を高めることにも役立ったのだという。また整理整頓から集団墓などの発生につながり、それが儀礼や祭祀につながったのではという。

 話が変わって、整理整頓は生命の発生においても起こっているという。受精卵が分裂する際にDNAの働いている部分が中央に集められるということが起こっているという。

どうしても片付けられないというのは良くあること。

 最後に片付けがなぜ難しいかだが、物に思い出が紐付いているからだという。また整理整頓は脳が過集中している状態でないと難しいという。整理のために空間を把握するには前頭連合野と視覚野が、要る要らないの判断は前頭前野、その後に運動野からの指令で身体を動かして片付け、海馬がしまった場所を記憶するというように脳のあらゆる場所を使用しているのだという。

 

 

 と言うわけで、何となく脈絡のない内容だったが、とにかく私が整理整頓が出来ない理由はやはり物に紐付いている思い出を断ち切れないのと、整理整頓に不可欠の脳の過集中が出来ないという辺りにあるのだろうということに行き着いた。

 最近は断捨離がブームだが、織田裕二氏も言っていたが「これは今は入手出来ないんだよな」というものはなかなか捨てるわけにも行かないっていうのは身に染みて感じる。どこで見切りをつけるかなのだが。

 その一方で最後に話が出ていたが、現代人はスマホやPCなどの外部デバイスで記憶を肩代わり出来るので、情報の整理整頓が不要になりつつあるということがあったが、これは一部同感、一部反対である。確かに何でもかんでもデバイスに放り込めるので、スケジュールなどはそれにお任せでいけるが、知識的なものはやはり頭で整理していないといざという時に使えない。いつでもどこでも「ググれ」では思考が深まらないのである。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・整理整頓は脳の機能と関係しているという。脳で意識として扱えるワーキングメモリーは同時に引き出せる情報は7±2しかなく、これを有効活用するには言葉という形で記憶を整理しておく必要がある。
・人類の歴史で整理整頓が始まったのは定住して農業を行うようになってからだと考えられる。また整理整頓が集団墓などにつながって、儀礼や祭祀などの行事につながった。
・整理整頓をするには脳のあらゆる機能を使うので過集中の状態が必要だという。また物に思い出が紐付けされていることが整理が難しい理由でもある。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・正直ね、うーんこのテーマは何? ってのが本音ですね。今までも首をかしげるようなテーマは多々ありましたが。特に番組の序盤は無意味、終盤はあまりに散漫すぎて、何をやりたかったんだろうという印象が。好評で番組を引っ張っているうちに、さすがにネタ切れ感が出て来た。

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