教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

7/25 BSプレミアム ヒューマニエンス「"乳"進化する神秘の液体」

哺乳類にとって重要な母乳

 今回のテーマは母乳。子供の成長には命の糧である。ここにまた数々の神秘が存在するという。

 まず母乳であるが、原料は血液だという。なお赤血球が除去されているので赤くないのだとか。成分は水分に脂質、タンパク質、糖質の三大栄養素が含まれている。これは乳児にとっては完全栄養食品だという。

母乳は赤ちゃんにとって重要な栄養源

 この母乳だが、哺乳類でも種によってかなり成分が異なる。白熊を人工飼育した時、人工ミルクがないためにかなり苦戦したという。最初はアザラシなどに使われる人工乳を使用したが身体に合わず下痢をしたので、様々なものを組み合わせて10日後にようやく上手くいくものにたどり着いたとか。乳の成分は生育環境どことなり、アザラシの乳は脂肪分が多くてかなりドロドロしているのに対し、シマウマは水分が多いかなりサラサラしたものである。これは極地で暮らすアザラシは脂肪分が必要なのに対し、アフリカで暮らすシマウマは乳で水分補給するからだという。なおヒトの乳の場合は糖質が多いことが特徴であり、脳の発達のためにミルクオリゴ糖が必要だからだという。ちなみにこれを子豚に与えたところ脳の海馬や脳梁の面積が増加したという報告がある。

 

 

乳とコミュニケーション

 さらに赤ちゃんはただ乳を飲んでいるだけでないのではという。乳には母親が食べたものの成分が反映するので、常にその内容が変わっているという。実際に母親がニンニクを食べるとその成分は母乳に出ているという。では赤ちゃんがそれを嫌うかと言えば、逆に吸い付きがよかったとか。日頃との変化を好ましく捉えたのだろう。また赤ちゃんは授乳を通じて昼夜の区別も学んでいくという。乳の中のメラトニンの変化を感じているのだとのこと。赤ちゃんは乳を通して世界を学んでいるのだという。

 次は乳の進化。哺乳類の祖先に近いハリモグラでは、卵で生まれた子供は母親の肌に貼り付く。そこで肌のミルクパッチと呼ばれる穴から分泌された液をなめている。これはそもそも汗だったという。そもそも我々の祖先はこの汗を栄養補給でなくて卵を乾燥から守るために使用していたという。その後、これが乳に進化したという。重要な役割としては免疫を与えること。しかし乳腺細胞にはそもそも免疫機能はない。そして授乳中の母親は腸管などから免疫細胞を借りて(血液などを通して移動する)抗体などを乳に加えるのだという。

 

 

 さらに乳が言語能力と関係するという。ヒトの赤ちゃんは1年ほどで離乳するが、この頃から言葉が発達する。ヒトの離乳は他の哺乳類と比べると離乳が極端に短いという。赤ちゃんの口の奥の構造は乳を飲みながら呼吸が出来るようになっているが、ヒトは成長すると共に舌が分厚くなるので、呼吸しながら飲むことが出来なくなるのだという。だからヒトは授乳期間が短くなったのだとのこと。授乳が短ければ言葉が早くなるというような報告もあるが、ただ授乳が長かったから言葉が遅れるというものでもないと言う。

 授乳をすることで母親にも高まる能力があるという。それは笑顔を見極める能力てあり、オキシトシンの影響だと考えられるという。これは母親が育児に協力してくれる者を見つけることに影響しているのでは・・・とのことだが、今ひとつシックリこない説明だな。

 

 


 以上、乳について。乳の成分に母親の食生活が反映するということは聞いていたが、ニンニクを食べたらむしろ赤ちゃんの食いつきがよくなったってのは驚いたな。母親がニンニク好きだったら子供はニンニクに対して抵抗が無くなるってことだろうか。確かに文化によって香辛料の類いに違いがあったりするが、そういうのに対する順応性って意外と母乳の時点で鍛えられていたのかもなんて思ったりもする。私は大人になるまでなかなかニンニクは食べられなかったが、これは私の母がニンニク嫌いのせいだろうか。

 まだ母乳には我々が理解していない成分が含まれているのではとの話だが、だからこそなるべく子供は母乳で育てた方が良いと言う話がある。ただこれって体質的に母乳の出が悪い母親を追い詰めることになりかねないんだよな。実際は母乳で育てられた子供が後々例えば能力が高くなるとかの統計的データは無いんだが。実際のところは頭の善し悪しとかは私の考えでは生まれよりも、後の生育環境の方が大きく影響すると考えている。世襲の連中の無能ップリがそれを証明している(遺伝要素は親の能力を継いでいるはずなのに、その後の何不自由ないという環境が馬鹿ボンに育て上げる)。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・哺乳類の乳はそもそも血液から出来ている。また種の生育環境で成分は変わるが、ヒトの場合は脳の成長に関係するミルクオリゴ糖が多いのが特徴となっている。
・また母乳は母親の食生活で成分が変化するので、赤ちゃんは母乳を通して環境を感じ取っている。またメラトミンによって昼夜の感覚を持つようになるという。
・哺乳類の祖先では母乳はそもそも汗の一種で、栄養を与えるよりも乾燥を防ぐものであった。
・母乳の重要な機能に免疫があるが、乳腺にはそもそも免疫細胞はなく、授乳のために腸管などの免疫細胞が移動してきて抗体を作って乳に加えるようになる。
・ヒトは他の霊長類に比べて授乳期間が短いが、これは言葉の発達と関係するという。発声のために舌が分厚くなると、呼吸と飲み込みが同時に出来なくなるためだという。
・母は授乳することでヒトの笑顔を見わけやすくなるという実験結果があるが、これは育児への協力者を見つけるためだと解釈されている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ例によって「ホンマかいな」という説も含めての内容でした。しかし免疫細胞が乳腺に血液で移動するってのは驚いたよな。この理屈で、免疫細胞をがん細胞の近くに移動させて直接攻撃って出来ないのかな。

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