ナノ粒子によるプラズモン共鳴
今回はナノ粒子が起こすというプラズモン共鳴について。プラズモン共鳴とはナノ金属粒子が特定の波長を吸収して自由電子がエネルギー振動して光の波動と共鳴する現象だそうな。金ナノ粒子の場合、その大きさや形によって固有の波長を吸収するために、七色に色を変化させられるという。薩摩切子などの着色もこのナノ粒子によるものだとか。
プラズモン共鳴を使用すると光を効果的に吸収出来ることから、これに太陽光を高効率的に吸収させて太陽電池の効率を上げるとかの研究もなされているという。そのために使用されたのかが窒化タングステン。窒化タングステンは太陽光の可視光から赤外領域までの長波長を吸収するので、これを用いて太陽光をほぼ全て吸収して熱に変換することが出来るようになったとか。
次世代エネルギーにも利用されるプラズモン共鳴
さらに次世代エネルギーとして注目されている水素であるが、運搬に難があるためにアンモニアに変換して利用しようという研究がなされている。しかし問題はアンモニアを分解して水素を取り出す過程。ここでは大量のエネルギーが必要になるために、触媒を使用してエネルギーを低下させる研究がなされているが、ここにプラズモン共鳴を使用することで触媒性能が劇的に向上したという。
現在用いられている触媒で高性能なものはルテニウムであるが、このルテニウムをプラズモン共鳴を起こす銅のナノ粒子の表面に配したところ、熱を加えずに470nmのLED光を当てただけで、従来触媒の10倍以上の能力を発揮したという。プラズモン共鳴のエネルギーがルテニウムに伝わることで、高エネルギーを有するホットエレクトロンが発生して、これが触媒作用をもたらしたという。さらにルテニウムは高価であることから、代わりに鉄を用いてみたところルテニウムよりも高い性能を発揮したという。この触媒を使用した実証実験も既に行われているとか。
なおこの技術を応用すると光を屈折させることが出来るので、光コンピュータに応用したり、柱にこの素材を用いたら光が柱を迂回する半透明の柱なんかが出来るかもしれないという(透明マントの実用化である)。
以上、プラズモン共鳴の応用について。私は化学屋だが、プラズモン共鳴なる現象は初耳である。まあ触媒が特定波長の光を吸収して高エネルギー状態になって反応するってのは触媒設計の常道であるが、その光吸収に粒子のサイズも影響するということである。これはなかなかに面白い。
忙しい方のための今回の要点
・金属ナノ粒子は特定の波長を吸収して共鳴する現象を起こすが、これをプラズモン共鳴という。
・プラズモン共鳴を利用することで太陽光をほぼ全て吸収して熱に変える粒子も開発された。これらは太陽発電の効率化につながると期待されている。
・またアンモニア分解触媒にプラズモン共鳴を利用することで、高エネルギーのホットエレクトロンが発生して触媒の効率が大幅に増強されることが分かった。
・さらにはこれを利用すると、従来の高価なルテニウムでなく、鉄などの安価な金属も使用出来ることが分かった。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・光触媒についてLED光を使用するというのもまたポイントですね。ここで光を出すのに高エネルギーが必要では意味がないので。
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