重機の自動化の開発最前線
今回は工事現場での人員不足を補うための、重機の自動化技術に関してのこと。なお重機をテーマにした回は以前にこの番組でもあり、その時は遠隔操作がメインであった。
まずは番組では井上咲良が細心のパワーショベルを操作体験するということをやっている(意外にセンスが良い)のだが、普通にシャベルを操作することは出来ても、上級者でないと困難という斜面のならし作業に挑戦したら当然ボロボロ。この作業は斜面に併せてバケットを一定の角度を保ったまま上げる必要があるので、アームの3つの支点をバランスを取りながら同時に調節する必要がある困難な作業なのだという。しかしここで手元の匠ボタンを押したら、簡単レバー操作でならし作業が完成。あらかじめプログラムで作業を入力しているので、一つの関節を操作するだけで後の関節の操作はコンピュータが自動で行ってくれるのだという。
さらに遠隔操作をコンピュータで補助するというシステムもある。地下での土木工事では地下水の浸入を防ぐために気圧を地上の4倍にしているので人が入ることが出来ず、すべて作業は遠隔操作のショベルで行われている。しかしモニター越しの操作は距離感の把握などが難しいので作業効率が悪い。そこでベンチャー企業がAIを活用して自動化に取り組んでいる。レーザー光による測量装置LiDARを使用して地形データを作成、掘削場所と土を捨てる場所を指定したらLiDARが刻々と変化する地形データを捉えながら、指定された作業を行うのだという。現在、実用化を目指して試験を重ねているところである。
無人重機が動き回る現場に、将来の月面基地設営まで
また大規模な無人化現場の実験が行われているのが秋田県の成瀬ダム。ここでは20台以上の重機を無人で動かしている。これらの重機はすべてコンピュータがGPSの情報に基づいて自律的に作業を連携して行っているという。ここでは9割の重機が自動化されているという。最大70時間の連続工事が可能であるとのこと。なおこの成瀬ダムの現場は典型的なモデルケースなので、以前に「目がテン」でも紹介されている。
なお自動工事が最も期待されているのが月面だという。ただし月面で使用する重機はかなり軽量化する必要があることと、月面までは電波が達するのに10秒かかるので、地球からの遠隔操縦では不可能で大規模な工事には自動化が不可欠だという。そのための技術開発として九州大学で実験が実施されている。ここの重機は一回り小さいもので、小型のホイルローダーと運搬車がペアで作業するんだが、もし事故が起こって一台が動けないというようなことが起こった時には、柔軟にプログラムを変更して対応するようになっているという。月面では直ちに修理に向かうことが出来ないので、その場合にも作業が継続出来るようなシステムだという。またさらに小型の重機の開発も進められている。
以上、重機の自動化システムについて。建設現場の人手不足はかなり問題となっているので、省力化という意味でも期待出来る技術であるし、また危険な作業を安全に行えるという意味でも重要な技術であろう。日本はまだ建設技術においては比較的世界でも優位を保っているので、それにロボット技術を組み合わせてこの分野では是非とも天下を取ってもらいたいところである。
忙しい方のための今回の要点
・コンピュータを組み合わせることでの重機の自動化の研究が進んでいる。また現状の重機でも既にコンピュータを使用して熟練の技を必要とする作業を初心者でも可能なようにサポートする機能は搭載されている。
・地下の人が立ち入れない現場での遠隔操作のショベル作業を効率化するために、レーザーで地形を測定して自動で動くシャベルの実用化が進んでいる。
・成瀬ダムでは大型重機がコンピュータとGPSを使って自動で連携作業を行っている。9割の重機が自動化されており、70時間の連続作業が可能であるという。
・また自動重機は月面での工事での運用も期待されている。現在は月面に輸送するために重機を小型化軽量化することに課題がある。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・こういうのって、やっぱりガンダムを連想させるのですが(本来はモビルスーツとは作業用の機械だった)、BGMもやっぱりその手が多かったですね。後は伊福部の「地球防衛軍」とか。
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