教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

8/30 NHK 歴史探偵「家康VS秀吉 どうする家康コラボスペシャル(後編)」

前回に続いての大河の宣伝企画

 さて今回は低迷する大河ドラマのテコ入れ企画の後編。ハッキリ言って二週間もかけて放送するだけの内容もないんだが、もう無理くりの宣伝企画です。やはり家康を持ち出してあの低視聴率はどうしようもないのでしょう。しかしそもそもどうしようもない内容のドラマなんだから、視聴率低迷も当たり前と言うこと。なお既に硬派な歴史マニアから見切られつつあるこの番組の宣伝効果も未知数です。

 前回は秀吉がいよいよ家康を滅ぼす意志を固めて、大軍を出陣させる準備をしたところまででした。このまま行けば家康の滅亡はほぼ確実、どうすると言うところだったんだが、ここで全く誰も予想さえしていなかった事件が発生するのが、歴史の神秘とでも言うべきところ。

 

 

地震によって秀吉の前線基地が壊滅、戦が不可能な状態に

 ここで発生するのが天正の大地震。番組では古文書の記録に基づいて、各地の被害を現代の震度に変換するなどということをやっているが、実際のところはわざわざそんなことをするまでもなく、明暗がハッキリ分かれることになる。秀吉の領内は壊滅的な打撃を受けたにも関わらず、家康の領内はほぼ被害はないという極端な結果になるのである。特に秀吉にとって致命的だったのは、前線の拠点だった長島城は震度6強の地震で全壊、さらに兵糧の備蓄基地だった大垣城も震度7の揺れで全壊(その上に火災で焼失したらしい)と、戦どころではない状態になってしまったのである。

 そこで秀吉は懐柔策に出る。妹に続いて母親まで人質に出して家康の上洛を促す。結局は家康は上洛して秀吉に臣従することになる。

 

 

関東国替えと朝鮮出兵

 北条を滅ぼして秀吉が天下を押さえると、家康は秀吉から関東への国替えを命じられる。しかし当時の江戸は海が内陸にまで入り込んだ大湿地で、家康はしばらく町づくりに四苦八苦することになる。この時に家康が行ったのが、運河を掘って両脇に掘りだした土を積み上げるという方法だったという。これで湿地から水を抜いて強固な地盤を作ったのだという。また運河は物流の要となって、こうして後の百万都市の基礎を作ることになる。

 しかし家康が江戸に移って1年半後、家康は名護屋城に呼びつけられることになる。秀吉の朝鮮出兵である。秀吉は名護屋に黄金の茶室まで運んで来ていた。これで大名達をもてなしたのだという。これを見て家康も質素な茶室を設け、各大名の関係を調停するなどして、仲間に引き込む工作を実施したという。茶の湯を使っての外交は秀吉に学んだのだという。

 そして秀吉死去。ここで家康が力を尽くしたのは全軍撤退の手配だったという。朝鮮で苦戦に喘いでいた諸将はこれで家康に感謝することになり、これが後の家康の天下につながったという。

 

 

 以上、その後の家康であるが、どこかで見たことのあるような情報の寄せ集めで、見事なほどに中身がなく、番組自体はひたすら松潤らゲストの紹介だったという印象。松潤はまだともかく、井伊直政をやっている若手役者なんて、歴史のこともあまり知らないし、何のために出てきているのかよくわからん状態。前回に続いてというか、前回以上に「中身薄っ!」である。

 で、次回は信長、秀吉、家康の趣味について・・・って、信長は鷹狩りに茶の湯、秀吉は茶の湯、家康は自分用の薬調合ってとこか? で、信長の鷹狩りは軍団の軍事教練を兼ねていたとか、秀吉の茶の湯は家臣に対しての恩賞の意味もあったとか、家康はとにかく健康オタクでそれが功を奏して天下を取れたとかの話になるんだろう・・・いつまで三英傑で引っ張るんだ?

 

 

忙しい方のための今回の要点

・家康を滅ぼすつもりで出陣の準備をしていた秀吉だが、天正地震の発生で、前線の拠点だった長島城が全壊、兵糧基地の大垣城が全壊全焼で戦どころではなくなってしまう。
・やむなく秀吉は家康に妹に続いて母まで人質に出して上洛を促す。結局家康は上洛して秀吉に臣従を誓う。
・秀吉は北条氏を滅ぼした後、家康を関東に国替えする。当時の江戸は内陸まで海が入り込んだ湿地で、家康は運河を掘って水抜きと地固めをしつつ、町の基盤を作る。
・1年半後、家康は秀吉に朝鮮出兵のために名護屋城に呼び出される。そこで家康は秀吉が茶の湯で諸大名をもてなすのに習い、自身も茶の湯を通して大名の調停などを行って存在感を増していく。
・秀吉の死後、家康は全軍撤退のために奔走する。朝鮮で苦労していた諸大名はこれで家康に恩義を感じ、それが後の家康の天下につながる。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・本当に驚くほど中身のない内容でした。この番組って他の番組の宣伝とかが多くて、歴史番組として見る価値を感じる内容って、大体1ヶ月1件程度じゃないかな。それでも佐藤二朗の無駄話とかが多くてウザいが。
・この前、「ヒストリア」やってるのを見て、当時は結構軽い番組になったなと思っていたのに、それでも今のと比べるとずっとまともな歴史番組なのに驚いたわ。本当にNHKの番組制作力ってひどいレベル低下してるな。

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