世界最古かつ最大のウナギ養殖システム
オーストラリアの南東部のバジ・ビムの湿地帯。ここでは6000年前に世界最古で最大の養殖システムが形成されていた。ここで養殖されていたのはウナギである。
この地では今でもオーストラリアウナギが捕れるが、体長はニホンウナギと同じ1メートルほどだが、体重は倍以上もある。先住民のグンディッジマラはここに石積みの堰や水路を作った。コンダー湖から水を引いた水路に罠を仕掛け、罠を通り抜けた小さいウナギだけを池に集めて養殖したのだという。罠は芦を編んだ細長い筒状のものであり、大きいウナギは通り抜けられないようになっている(通り抜けなかったウナギは捕まえてすぐに食べたんだろう)。今でも水路の跡が見つかっている。今は使われていないが、最新の技術で地形を調べたところ水路があちこちに発見され、世界最大の養殖場であることが分かったという。
溶岩を砕いて張り巡らせた水路
このような巨大な水路を作れた秘密はこの地を形成する溶岩にある。この溶岩はバジ・ビム火山が3万年前に噴火して流れたものだという。この溶岩の流れた跡が湿地となった。溶岩は多くの空気を含んでいるために、溶岩の上で火を炊くと気泡から石が爆発して崩壊するのだという。こうして長大な水路を作った。ウナギは捕りすぎないように資源管理もしていたという。
湿地は野生動物の宝庫でもあり、野生のコアラなども存在するが、特に多いのがカンガルーでこれはウナギと共に貴重なタンパク源だったという。川の近くには先住民の住居跡も見つかっている。溶岩の上に木の枝や泥で屋根を作っていた。彼らはウナギのおかげで定住生活をしていたのだが、19世紀にヨーロッパ人が来たことでこの地を追われたという。
雨期に水位が上昇して浅瀬が広がった湿地はウナギの最高の狩り場になる。ウナギはコオロギやカエルなどを捕らえるために地上にあがるので、それを銛で捕まえるのだという。捕らえたウナギは燻製にして調理した。生木のうろを使って燻製にして保存食にしたという。保存の効く燻製は物々交換にも用いられたという。
現在、失われたウナギの文化などを後世に伝えるための活動もなされているという。
忙しい方のための今回の要点
・オーストラリアのバジ・ビムの湿地は6000年前に世界最古の養殖システムが存在した。
・養殖されていたのはオーストラリアウナギで、先住民のグンディッジマラが堤や水路を作って、途中にウナギを捕らえる罠をしかけ、罠を通り抜けた小さなウナギを池に誘導してそこで養殖したのだという。
・この地は溶岩で出来ており、多くの気泡を含むために火を炊いて加熱すると岩が割れるので、水路を作るのは容易であったという。
・先住民はここで定住していたが、19世紀にヨーロッパ人に追われて、養殖の伝統も絶える。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・伝統を伝える活動をしていた人たちが、どう見ても先住民の子孫ではないのが気になるところ。オーストラリアはかつて先住民の大量虐殺をしている(白豪主義という大人種差別政策をとっていた)ので、グンディッジマラ自身は絶滅させられている可能性があるのでは。これがオーストラリアの歴史の暗黒面です。
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