教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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9/10 サイエンスZERO「期待の次世代エネルギー!"藻類オイル"最前線」

石油を産み出す微細藻類

 温暖化対策で再生可能エネルギーなどが求められている中、注目されている生き物が微細藻類だという。微細藻類とは肉眼で見えないミクロな生物なのだが、大気中の二酸化炭素を吸収して石油に似たオイルを生産するものがあるという。これが未来のエネルギー源として注目されている。今回はその研究最前線を紹介。

 微細藻類とは大きさが数~100マイクロメートルぐらいで、地球上に5万種の存在が知られているという。その中には人に有用な物質を作るものがおり、ユーグレナの作るオイルを使用した保湿クリームや、スピルリナを卵の代わりにマヨネーズを作ったりなども実用化されているという。オイルを作る藻類も存在し、この藻類バイオ燃料が注目されている。既にジェット燃料に藻類バイオ燃料を加えて飛行させる実証実験には成功しているという。

ボツリオコッカス

 オイルを産み出す藻類だが、普通にそこらの池などにいたりするという。目的とする藻類はボツリオコッカスというものであり、細胞を押しつぶすと中から炭化水素のオイルが染み出してくるという。トルバナイトという化石燃料はボツリオコッカスの死骸で出来ており、そもそも化石燃料の一部はボツリオコッカスに由来していると考えられるという。

 

 

実用化のための課題

 微細藻類から効率よくオイルを生産するには工夫が必要であるという。増殖とオイルを作ることの両立が困難なのだという。増殖には窒素が必要だが、TORというたんぱく質が窒素の量を感知して増殖とオイル生産を切り替えているので、これの働きを制御することで生産性を向上させる研究がなされている。

 またオイルの抽出を容易にすることも実用化には重要である。細胞内にオイルがあると抽出の際に細胞を破壊する必要があるので、シアノバクテリアを使用することでオイルを細胞の外に排出する藻類を開発したのだという。また細胞間の有機溶媒による抽出を容易にするために、有機溶媒の浸透を妨げる藻類表面の微細な毛を塩水を使用することで減らすという研究も行われている。さらに巨大プラントの実証研究なども進んでいる。

 

 

 太陽光のエネルギーで大気中の二酸化炭素から燃料を作り出せるという話なので、非常に興味深いし、将来性有望な研究である。是非とも研究の発展を望みたいところであるが、果たして日本政府がこの研究にどれだけのマンパワーと予算を投入しているかが気になるところである。

 というのも、日本政府は再生可能エネルギーが実用化されると、原子力の必要性がなくなることを恐れて、再生可能エネルギーで有望なものが登場すると意図的にそれをつぶすということを過去に繰り返して来ているからである。これも有望な技術であればあるほど、政策的意図によってつぶされる可能性が高い。その前にそんな近視眼的利権に縛られない政権に変更する必要があるのだが。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・再生可能エネルギーとして微細藻類が産み出すバイオオイルが注目されている。
・藻類の中には様々な物質を合成するものがいるが、ボツリオコッカスという藻類は石油と似たオイルを大気中の二酸化炭素から合成出来る。
・藻類は増殖とオイル生産のバランスが難しいので、遺伝子を制御してコントロールする技術も開発されている。
・実用化の課題としては効率の良いオイルの抽出がある。そのために細胞内で生成したオイルを細胞外に効率的に排出するように藻類を改良したり、有機溶媒による抽出を効率化する方法なども研究されている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・バイオ系の手法となると、大抵は問題点は効率的生産になるのが常です。この技術の場合も果たしてどのぐらいの規模の装置で、どのぐらいの維持エネルギーで、どれだけの燃料を生産出来るかが鍵でしょう。なお二酸化炭素濃度が高い方が効率的だと思われるので、火力発電所の排ガスを直結とか出来ないんでしょうか?

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