エリンギの知られざる魅力
キノコの中ではかなり有名であるエリンギであるが、どうも我々はまだその真価を発揮させていないのだという。
まずエリンギの魅力は何かをアンケートを取ってみると1位は食感、2位がうまみなんだが、3位にVJなるものがあり、これがポイントの一つなどと始まる。で、このVJが何かだが、very juicyだとか。番組では台湾で取材しているが、台湾で人気メニューはエリンギを丸ごと焼いたものであり、それをざく切りして楽しんでいる。実際にこのエリンギを押してみるとエキスが滲み出ている。
ジューシーさの理由とそれを引き出す方法
しかしこのイメージのある人は意外に少ない。それは日本ではエリンギは千切ったり切ったりして焼くのが普通になっているから、焼いている最中に飛んでしまうのだとか。ではエリンギがこんなに水分を持っている秘密であるが、中の成分に秘密があるという。そもそも他のキノコと比較した時にはいずれも水分含有率は90%程度で大差がない。しかし実際に焼き比べて比較してみると、出てくる水分の量は他のキノコと桁違いである。この鍵となるのが、エリンギの特徴は糖の一種であるトレハロースが多いことだという。
このトレハロースであるが、糖の回りに水を掴む手を8本も持っているのが特徴である。その特徴から非常に保水力が高い。そもそもエリンギがそのような糖を持っているのはエリンギの生息環境に理由がある。他のキノコがジメジメした場所に生えるのに対し、エリンギの原産地は地中海性気候のイタリアなど。この地域のエリンギウムという植物の枯れた根から生えるのがエリンギなのだという。この地は乾燥性で年間降水量は東京の1/3にすぎない。だからエリンギは乾燥に強い性質を持っているのだという。トレハロースは強力に水を保持するので、加熱しても水分を保持出来るのだという。
このベリージューシーを生かす調理はエリンギを丸ごと焼くことがポイント。番組で勧めているのは、下味をつけた豚バラ肉に小麦粉をまぶし、スライスチーズを巻いたエリンギに巻き付けて、200度で15分焼くという方法。名付けてファウンテン肉巻き。ベリージューシーを堪能出来るという。例によって詳細レシピは番組HPへとのこと。
エリンギの食感をフル活用する
なおイタリア取材のついでにイタリアでのエリンギの楽しみ方を紹介しているが、イタリアではエリンギの傘を調理するのがメインだという。傘には胞子を作るためのうま味が多くあるからだという。それにそもそもイタリアで食べられているエリンギは日本のものと形が違う。日本のエリンギが軸が太いのに対し、イタリアのエリンギは傘が大きい。それは日本でエリンギの形をマツタケに似せるべく暗い中で育てるという改良を行ったからだという。
で、後半はエリンギの特徴である食感を生かす方法。エリンギは部位と切り方一つで4種類の食感を楽しむことが出来るという。まずエリンギの軸の根元の部分を輪切りにするとホタテ、その上の部分を縦スライスにするとメンマ、傘の部分はぶ厚めにスライスすることでマッシュルーム、さらに縦に薄くスライスするとアワビになるという。番組ではわざわざ噛んだときの音を比較するなんてこともしているが、これは不要。
以上、エリンギについて。エリンギのジューシーは初知見で、確かに肉巻きは試してみたくなったが、番組内容としてはこれと部位ごとの食感使い分けだけなので内容的にはそう多くない。それを例によっての無駄にガチャガチャとした演出で膨らましたというやや下品な作りである。
それらの演出が分かりやすくするとかに役に立っているのなら良いんだが、結局のところは無駄な水増し感が多いのが気になるところである。エリンギでなくて番組自体が水増しが多すぎてベリージューシーというのはあまり美味しくない。
補足
後日今回紹介の「エリンギのファウンテン肉巻き」について実際に作って食べてみました。その顛末はこちらへ。
忙しい方のための今回の要点
・エリンギは実は焼いても多くの水分が残るという特徴がある。これはエリンギが持つトレハロースの強力な水分保持力のため。ただしこれを生かすにはエリンギを丸ごと薬必要がある。
・エリンギは部位ごとによって構造が異なり、切り方で食感を変えることが出来る。軸の根元の部分を輪切りにするとホタテ、その上の部分を縦スライスにするとメンマ、傘の部分はぶ厚めにスライスすることでマッシュルーム、さらに縦に薄くスライスするとアワビになる。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・またエリンギはうま味もあるという言い方をしていたが、私が以前に焼いたときには「硬いだけで味のないキノコ」という印象があった。あの時はスライスして焼いたので、それが悪かったんだろう。どうやら水分と共にうま味も逃げるようだ。
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