教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

9/27 NHK 歴史探偵「北条100年王国の秘密」

北条氏の難攻不落の拠点小田原城の秘密

 今回のテーマは戦国北条氏。彼らはそもそも鎌倉幕府執権の北条氏とは関わりがないことが知られているが、その彼らがあのまとまりの悪い関東をいかにして5代100年に渡って治めることが出来たが今回のテーマ。

 まずは100年の間落城しなかった(最終的に秀吉も囲んで降伏させただけで、攻め滅ぼしたのとは違う)小田原城について。まず小田原城本丸の北側であるが、弁財天が祀られておりここには蓮池と呼ばれる池があったという。この蓮池とは最大幅80メートルぐらいある巨大な池で、それが城の三方を囲んでいたのだという。後の一ヶ所、西側の丘陵であるが、ここには巨大な堀切(幅40メートル、深さ20メートル)を築いて侵入を阻む構造になっていたという。しかもここの地層は関東ロームなので、これで築かれた堀切はズルズルで登れたものではないので堅固そのものだったのである。

 さらに北条氏はその小田原城の周りに惣構えという全長9キロの堀と土塁で町ごと囲んでいた。この惣構えは尾根筋を削って外壁としたり、南は海、東は湿地で防御されていたので堅固そのものであるという。なおこれらの築城は当主自らが細かい指示を出してのものだという。また北条氏は領民を守ることを重視しており、それが惣構えにも反映されているという。

 

 

鶴岡八幡宮の再建で関東の覇者と認められる

 関東の覇者に登り詰めた北条氏だが、そもそもが他国から流れてきたことから、関東の土着の勢力からは「他国の凶徒」と言われてなかなか受け入れられなかったという。それを転じさせる施策を行ったのが2代の氏綱であるという。

 氏綱が行ったのが鎌倉の鶴岡八幡宮の再建である。鶴岡八幡宮は関東の武士にとっての聖地のようなものであるが戦災によって焼失、大規模な寺院であるがために誰も手を付けられなかったのである。氏綱はこれに手を上げたのである。しかしここで問題となったのは木材の不足。そこで氏綱は房総半島の大名の家督争い(里見氏か?)に介入して勝利、その勝利した側から木材を送ってもらったのだという。

 しかしさらに瓦の調達の問題も発生したという。これは戦乱で寺院の建立などが激減していたせいで関東には優れた瓦職人が存在しなくなっていたのだという。そこで氏綱は奈良から職人を送ってもらうことにする。この時に効いたのが、実は北条氏が関東の者ではないということである。そもそも初代の北条早雲は伊勢盛時といって京にいた室町幕府のエリートだったのだという。その関係で氏綱は公家のトップである近衛尚通の娘婿であり、このコネで職人派遣を実現出来、鶴岡八幡宮の再建に成功する。こうして氏綱は「関東八カ国の大将軍となることは疑いない」とまで言われるようになる。ちなみに北条氏を名乗るようになったのは氏綱の代からだという。

 

 

北条氏の大土木工事

 さらに北条氏は後に江戸が100万都市になる基盤をも築いていたという。埼玉県の幸手市には北条氏が行った大土木工事の跡があるという。それは2キロ以上に及ぶ巨大堤防と7キロに及ぶ人工河川だという。

 この大土木工事の目的であるが、南に流れていた権現堂川の流れを東に切り替えて、関東平野を南に流れる中川と、さらには利根川に接続したのだという。北条氏の土木工事は利根川と中川を結ぶことが目的だったのだという。合流点である関宿に水運で物資を強化して最前線の重要地としたのだという。

 なおこの水路は江戸時代にも利用されており、江戸に東北からの物資を運ぶ際に海が荒れる房総沖を避けて、利根川と中川を使って物資を輸送するというルートを取ることが出来、これが江戸100万都市の基盤となったのだという。


 以上、北条氏について。戦国の実力者でありながらどうにも印象が地味で、あまり注目されないところがある北条氏であるが、あえてそれを取り上げたというのは正解である。内容的にもこの番組としては珍しいぐらいにキチンと歴史番組をしており納得出来る。番組の作り方にまだまだ無駄な部分が多いが、一応は許容範囲内だろう。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・北条氏の小田原城は3方を深い池に守られていた上に、背後の丘陵は深い空堀を削ってあり、関東ローム層の地質も相まって難攻不落の要塞となっていた。
・さらに町全体を取り囲む惣構えまで建設していたが、これは「領民を守る」という意識の反映でもある。
・氏綱は鶴岡八幡宮の再建に取り組み、房総の大名の家督争いに介入して勝者から木材を送らせたり、京とのコネを使用して奈良の職人を送ってもらうなどによって再建に成功する。
・それまで余所者と見られていた北条氏も、関東武士の聖域である鶴岡八幡宮の再建や、京とのコネを見せつけたことで関東を治める覇者として認められることになる。
・また埼玉県幸手市に巨大な堤防と人工河川を築いて利根川と中川を接続、後に江戸が100万都市へと成長するための水運ルートを建設している。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ今回は久々に見応えがあった内容と言えるのでは。本来は毎回こういう感じでないといけないんだが、この番組は大河の宣伝とかのくだらない内容が多すぎる。

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