教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/10 BSプレミアム ヒューマニエンス「"背骨"複雑精妙な進化の神髄」

背骨に秘められた精妙なシステム

 今回は人類が脊椎動物である根幹と深く関わっている背骨について。そこには独自の進化に秘められた非常に精妙なシステムが存在するという。

背骨のこの湾曲にも理由があるのである

 番組ではいきなり身体を反らしてバケツの中に入るという曲芸(逆向きに曲げたら屈葬だが)が披露されるのだが、これは身体の柔らかさを使って芸をするコントーショニストというそうな。実際に曲がった時の背骨のCTスキャンで撮影しているが、とんでもなく背骨が曲がっている。

 背骨がこのような屈曲が出来るのは、多くの骨がつながる柔軟な構造になっているからだという。背骨は頭を支える頸椎が7個、内臓と肋骨を支える胸椎が12個、重心を支える腰椎が5個、その下に骨盤に連なる仙椎・尾椎という複数の骨が癒着した物が並んでいる。そしてその間をつないでいるのが椎間板である。この椎間板が緩衝性と可動性を持っているのだという。椎間板が背骨の動きに合わせて変形しているので、背骨は柔軟に可動出来るのだという。

 さらに背骨についている突起も重要な物で、これにいろいろな筋肉が接続していることで背骨は様々な動きを出来るのだという。例えば首を回すには回旋筋が、前後に動かすには棘間筋が働いているという。これらの筋肉が身体を支えているのである。非常に精巧な構造になっている。

 

 

背骨と進化の関係

 背骨がこのような形態になるには進化が関係している。椎骨には大きな穴があるが、ここは神経の束である脊髄が通っている。人類の遠い祖先であるナメクジウオでは背骨はなく神経管と脊索があって背骨はない。それが進化と共に末梢神経が枝分かれするようになる。そして脊椎を守るために骨が出来た時には、末梢神経を邪魔しないように細かい骨の集合体となった。そして進化と共に身体を動かすための構造となっていく。は虫類の蛇では椎骨の数は多いが横方向にしか動かないという。上下に動くようになったのは哺乳類になってからだという。これは4本足で敏捷に動くためだという。

 そして人は直立することによって背骨をひねるという動きが出来るようになったという。ひねる必要が出来たのは直立二足歩行をするためだという。歩行によって下半身にひねりの運動が生じ、それを打ち消すのに上半身を逆にひねるということになったのだという。ヒトの椎骨はチンパンジーの物よりも関節突起が小さくて骨の自由度が大きいという。そしてひねることによって多様な運動が出来るようになったのである。

 

 

精妙であるが故に抱える問題

 ヒトの背骨は身体の重心を支えるためにS字型を取っているが、このような構造になったことで、ヒトに固有の腰痛という問題を抱えるようになった。多くの腰痛の原因となっているのは椎間板の髄核が飛び出して神経を圧迫する椎間板ヘルニアである。しかし必ずしも腰痛は二足歩行の宿命というわけではなく、アフリカの狩猟採集民は1日30キロを歩くにもかかわらず腰痛知らずだという。我々が腰痛を起こすようになったのは姿勢に問題があるのだという。立っている時の椎間板にかかる圧力を100とすると、仰向けでは25、座った時には140になるという。そしてさらに座って前傾姿勢を取ると185にもなるのだという。つまりこの姿勢が椎間板に負担をかける理由である。

現代人の宿命化しつつある腰痛

 

 

精妙故の成長の難しさ

 背骨が成長していく時には、骨や筋肉などが協調しながら湾曲を形成していくことで2足歩行に適したS字の形に成長していくので、完成するのは12才ぐらいまでかかるという。しかしこの時に成長の調和が崩れることで脊柱側湾という病気を発症する。背骨の前後の成長のバランスが崩れることで、背骨が左右に湾曲してしまうのだという。症状がひどい場合には手術で矯正する必要があることさえあるという。成長は難しいものなのだという。

バランスが崩れると脊柱側湾に

 

 

 以上、背骨について。背骨のことは屋台骨などとも言われるが、まさに身体の基本となる中心の柱なので、これがおかしくなると身体はガタガタになります。ちなみに脊柱側湾は100人に3人ほどいるとの話がありましたが、私も学生の頃に重い鞄を片側だけで持っていたせいで背骨が曲がっていると言われたことがあります。結構姿勢の悪さやクセのようなもので簡単に曲がってしまうもののようです。

 で、現代人の宿命のようなものである腰痛ですが、当然のように私もこれに苦しめられています。何しろ1日の内で起きている間はほぼ座っているという生活。しかもその座っている時間のほとんどはPCに向かっているので、椎間板の負担は半端でなく、もろに椎間板ヘルニアを持ってます。それも腰椎だけでなく、頸椎椎間板ヘルニアも。と言うわけで調子の悪い時には足が痺れたり、手が痺れたりなんて症状が出ることが。しかもCTを撮ったところ、私は多くの骨が癒着して1つになっているという仙骨のところが分離していて関節が1つ多いタイプの奇形(結構の割合でいるとのこと)なので、さらに腰痛を起こしやすい構造になっていると言われてしまっています。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・背骨は多くの骨からなり、それを椎間板が支えて緩衝性と可動性を担保している。
・背骨にある突起は、そこに筋肉がつながることで背骨の自由な動きを出来るようにすると同時に身体全体を支えている。
・背骨には穴があって脊椎が通っているが、そもそも進化の過程で脊椎を守るために生まれたのが背骨であり、脊椎から伸びる末梢神経を邪魔しないように小さな骨の連なりとなった。
・やがてそれが運動のためのものとなり、横の動きが出来るようになったが、哺乳類になると4足での歩行のために縦の動きも出来るようになり、ヒトは直立二足歩行することからひねりの動きが出来るようになった。
・しかしそのためにヒトは椎間板への負担が大きく、椎間板ヘルニアからの腰痛を起こしやすくなっている。特に座って前傾の姿勢を取ると、直立の時の2倍近い負荷が椎間板にかかってしまうという。
・人の背骨は骨や筋肉などが協調的に成長するが、そのバランスが崩れると背骨が横に屈曲する脊柱側湾となる。程度がひどい場合には手術による矯正が必要なこともある。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ人体にとって背骨は重要ですが、人格においても重要です。人格に背骨がキチンと通っている人は何かの時に揺らぎがないですが、それがない人は状況でフラフラとして流されてしまいます。政府に必死に媚びまくっている軟体動物のような自称文化人や学者がまさにそれ。

次回のヒューマニエンス

tv.ksagi.work

前回のヒューマニエンス

tv.ksagi.work