教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/15 TBS系 世界遺産「恐竜時代から続く 世界最古の森」

オーストラリアの古代の森

 オーストラリアの北東部のクイーンズランドの湿潤熱帯地域は世界最古の森といわれており、木に登るカンガルーやら特殊な生物の宝庫である。


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 海岸線ギリギリまで鬱蒼とした森が迫っており、総面積は9000平方キロもある。この森は恐竜時代から変わらぬ姿で生態系も独得である。ヤドリギが15メートルもの長い根を伸ばしている。この森にはオーストラリアの有袋類の30%が生息している。この地域の固有種のカオグロキノボリカンガルーは木を登って木の葉を食べる。本来は樹上の生き物でないので、木から降りる時はお尻から降りるのだという。また背中にあるつむじが水はけを良くする仕掛けになっているという。一方、もっとも原始的なカンガルーがネズミのようなニオイネズミカンガルー。小さいネズミのような姿は一番古い種である証拠だという。乾燥してきた地域になるとマリーバイワワラビーが岩場を飛んでいる。足にある肉球で急な岩の斜面も駆け上がる。

 

 

固有種の森が生まれた理由

 この森は600種もの固有の動植物が存在する。ボイドモリドラゴンは恐竜っぽいトカゲ。これも固有種である。生きた化石であるカモノハシもここでくらし、ヒクイドリなども暮らしている。奇妙なダンスをするのがコウロコフウチョウ。のどに青い光沢があるのが特徴で、雄は繁殖のシーズンになると胸を張って翼を広げて求愛のダンスを始める。派手な動作でメスを惹きつけるのだという。

コウロコフウチョウの求愛ダンス (出典:AAK Nature Watch)

 オーストラリアが固有種が多いのは、古代大陸ゴンドワナが分裂した時に孤立したからだという。オーストラリア全体は乾燥化したが、この地域はグレートディバィディング山脈が海からの湿気を含んだ風をせき止めて雨を降らせたから太古の環境が維持された。森の栄養は海に流れ、それがグレートバリアリーフを産み出した。

 森に生物が育まれたが、中には森を育む生き物もいる。オーストラリアツカツクリは足で土を掘って巨大な盛り土状の巣を作って産卵するが、この鳥が地面を掘り返すことで土が軟らかくなって水分を保てるようになるのだという。

 

 

危機に瀕した森を甦らせた人々の努力

 しかしこの森も開拓によって危機に瀕したことがある。農地や牧草地によって森は分断され、一時期は40%の森が失われた。そこで保護活動により1987年に木の伐採が禁止され、分断された森を再生するための植林が行われるようになり、動物たちも森を行き来出来るようになった(森を回廊状の森でつないでいる)という。今も毎年10万本以上の植林が続いているという。ここは豊かな固有種などから世界遺産に指定された。

 

 この後は新コーナーとかで杏がパリを巡るというコーナーがあるのだが、今回は杏がセーヌ川のシテ島のサント・シャベル教会の島に登るというだけでさして中身はない。なおその後に先週放送のクウィの墓は日本初撮影でなかったというマヌケな訂正があって終わり。そう言えば先週、やたらに日本初撮影と強調していたが、私はそんなことはどうでも良いと思っていたから、最初から書いてなかった(笑)。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・オーストラリアの北東部のクイーンズランドの湿潤熱帯地域は世界最古の森で、固有種の宝庫である。
・ここにはオーストラリアの有袋類の30%が生息しており、木に登るカンガルーや、最古の形態を持つネズミのようなカンガルー、さらに岩場を駆け上るカンガルーなどがいる。
・この地に固有種が多いのは、古代大陸ゴンドワナが分裂の際、オーストラリアが単独で取り残されたからだという。
・その後、オーストラリアは乾燥化したが、この地はグレートディバィディング山脈が海風をせき止めるおかげで湿潤気候が保たれた。
・森が生き物をはぐくむだけでなく、オーストラリアツカツクリは地面を掘り返すことで地面の保水力が保たれて森を育む元となっている。
・この森もかつては開拓で40%が失われたことがあったが、今は植林などで森を回復しているところである。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・新コーナーについては意味不明ですね。杏がパリ旅行でもしたくなったんでしょうか? まあコロナが終わったということなったので、急にこの手が動き出し始めました。

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