教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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11/19 サイエンスZERO「90%が行方不明!?海洋プラスチック汚染 最新報告」

海に流れたプラスチックの9割が行方不明

 地球環境破壊の原因として問題視されているのが海洋プラスチックであるが、実は今までに海に流出したプラスチックは2500万トンと推定されているのに対し、その9割が行方不明のミッシングプラスチックとなっているのだという。実はこのミッシングプラスチックは特定の海底に沈んでいるのではと調査が実行された。

海に流れ出たプラスチックゴミの9割が行方不明

 プラスチックは通常の状態では海水に浮くはずであるが、泥や藻類で汚れたりフジツボなどが付着することで海水に沈むようになるのだという。そのミッシングプラスチックの調査に出航したのが海洋調査船のよこすかである。リーダーを務める海洋研究開発機構の中島亮太氏によると、海洋プラスチックが生態系に与える影響が懸念されている。プラスチックを食べる貝なども出ており、自然界ではあり得なかった物質循環や生態系の仕組みの変化などが起こり得るのだという。

 今回調査に向かったのは日本近海の潮の流れから黒潮が渦を巻いている四国沖の海域である。台風に進路を阻まれたりなどのトラブルもあったが、その隙間を縫って現地に到着。潜水艇による潜行調査を実施した。6000メートルの深海をしんかい6500で調査したところ、29点のプラスチックゴミを発見し、ロボットアームでその内の4つを回収した。調査海域が狭いために、これを1平方キロに換算すると数千点のゴミが存在する計算になるという。これらのプラスチックは非常に安定であることから、いずれはプラスチックゴミの化石が出来るのではという。

 

 

海中で分解される新たなプラスチック

 これらの対策の切り札とされているのが生分解性プラスチックで、これは微生物の働きで分解されるものであるが、海水中は微生物の数が少ないので分解されないということが問題となっている。そこで群馬大学の粕谷健一教授は、海洋生分解性プラスチックという素材を開発している。このブラスチックは酸素濃度が低くなるとS-S結合が開裂することによってバラバラになるので、微生物による分解がされやすくなるのだという。しかしこれらの材も完全分解される前にマイクロプラスチックとして生物に補食されたりすることもあるし、コストの問題などもあるという。


 以上、日本近海の海洋底にプラスチックゴミが蓄積しているというなかなかにショッキングな話であった。日本ではまた比較的プラスチックゴミは回収されている方だが、問題は特に東南アジアなど、まだまだ意識の低い国が存在すること。やはり国際協力で取り組む必要がある。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・今まで海洋に流出したプラスチックの内、実に9割が行方不明であり、ミッシングプラスチックと呼ばれている。
・これらのプラスチックは泥や藻類の付着などで重くなって海底に沈んでいるのではと推測されている。
・今回、黒潮が渦を巻く四国沖の海底の調査が行われたところ、1平方キロ換算で数千点に及ぶプラスチックゴミが蓄積している可能性が示唆された。
・現在対策としては生分解性プラスチックの開発が進んでいるが、これらは微生物の少ない海洋中で分解されにくい問題がある。
・そこで現在、S-S結合を含むことで酸素濃度が下がるとバラバラになり、微生物に分解されやすくなる新しい海洋生分解性プラスチックの開発が進んでいる。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・やはり今一度、何でもかんでもプラスチックで作るのが正しいかを見直す必要があるでしょうね。コスト優先の考えが何でもプラスチックにつながってしまった面が強い。
・例えば竹製品の使用を促すなどは、生分解性の問題と、放置竹林の問題の二つを同時に解決出来る可能性がある方法だと思うのだが。

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