教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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11/26 サイエンスZERO「眠らない日本を救え!"睡眠"研究最前線」

睡眠のメカニズムの研究最前線

 OECDの調査では日本人の睡眠時間は33カ国中で最下位だという。アメリカの調査では日本の睡眠不足による経済損失は15兆円以上などという試算もあるとか。また睡眠不足が過度になると命に関わるという話もある。そこで睡眠に関する研究の最前線を紹介する。

睡眠の研究が進んでいる

 理想の睡眠の長さは個人差はあるが大体8時間だという。リズムがあって途中で目が覚めない、さらには毎日のリズムが決まっているというのが重要である。最近になって日本の研究で眠気のメカニズムが明らかになってきたとか。

 筑波大学の国際研究によると、睡眠時間が異常に長いスリーピーと名付けたマウスの研究の結果から、SIK3という遺伝子に異常があることが分かったという。さらなる研究でその遺伝子異常でたんぱく質のリン酸化が促されることが判明したことから、たんぱく質のリン酸化が眠気に関係するのではないかと考えたという。マウスによる実験の結果、睡眠不足になるほどたんぱく質のリン酸化が増えることが確認されたという。起きている間に脳内にリン酸化されたたんぱく質が蓄積することが眠気のメカニズムであると推測されたという。

 

 

睡眠のリズムが健康維持に必要

 なお睡眠不足は脳機能の低下に繋がり、1日4時間睡眠を5日間続けると、日本酒2合ぐらい飲んだのと同じぐらい脳のパフォーマンスが低下するとか。これが先の経済損失の試算に繋がるのだという。さらにはパフォーマンスだけでなく、感情のコントロールが上手く出来なくなるということも分かっているという。まあ確かに睡眠不足になると無性にイライラするものである。

 熊本県での睡眠改善の実証実験によると、睡眠のリズムなどを整えるための運動などを取り入れたところ、睡眠のリズムが改善してさらに血中コレステロールが低下、また腹囲も3センチ減少したので、睡眠改善がメタボ解消に繋がることも分かった・・・とのことなんだが、これってもろに睡眠改善のための運動の効果と違うのか? まあ睡眠も改善出来てメタボ解消にも繋がったら一挙両得というのは分からないでもないが・・・。なおいろいろなデバイスが開発されたことで睡眠の質の精密な解析が可能になったという。もっともそこまで精密でなくても、今は安いスマートウォッチでもある程度の睡眠計測は出来るようになっており、私も使用している。

私もこの手の安いスマートウォッチを万歩計代わりに使用している

 

 

睡眠の鍵を握るレム睡眠

 理想の睡眠を取る方法だが、静かで暗くて朝まで適温な寝室というのがポイントだという。日本の部屋は夜には明るすぎるという(私は仕事モードのためにわざと部屋を明るくしているが)。また寝付いてから冷暖房を切るというのは睡眠の観点からは良くないという。

レム睡眠時に脳内の老廃物が処理される

 また眠る場合にはレム睡眠がポイントになるという。脳内の老廃物を排出するにはレム睡眠が重要という論文が登場したとのこと。寝ているマウスの脳内の観察によると、レム睡眠時には脳内の血流が増加することが確認されたという。この時に脳内の老廃物を処理しているのではないかと推測され、レム睡眠を十分に取ることが認知症などを防ぐ可能性が考えられるという。なおレム睡眠は夜の後半に多いので、短時間睡眠だとレム睡眠が一番最初に削られるので危険だという。だから睡眠時間を仕事のために削るのでなく、睡眠時間を最初に確保した上で生活をしろと番組は提案している。

 

 

 以上、睡眠についての研究最前線。以前から日本人は労働時間はやたらに長いのに、労働生産性はかなり低いと指摘されて久しい。もろにそれが反映されているような気がする。まあ労働時間がやたらに長いのは、時間をかけるほど仕事は価値があるというアホな精神論が蔓延していたせいでもある。私が若手社員だった頃は、上司がレポートを夜の10時まで何回も無意味な修正をさせる(自分が修正させたところをもう一度修正させ、結局は何度かの修正の後に内容が一回りするなんてことが通常)ので、無意味で不合理だと抗議したら、「レポートは内容ではなくて、どれだけ作成に時間をかけたかが重要だ」と言い切られて絶句したことがある。まあ私の上司はうちの社内でもかなり無能な方に属したが、こういう体質の管理職がうちに限らず昔は少なからずいたということが未だに尾を引いていたりするそうな。

 また夜にならないと集中して作業が出来ないという体質なんかもあったりする。私なんかも執筆作業に関しては昔から、夜も更けてきて頭が半ば朦朧としだしてからが本番なんてこともあったりした(笑)。そういう状態では時にはまさに文章が「降りてくる」なんてこともあったりして、ミュージシャンが創作の時に薬物に依存したりするのはこれが原因か? なんてことも思ったりもした(笑)。もっともそれは若いうちの話であって、そういう長年の無理のせいで、今はかなり頭が劣化してきているので、そういう状態になったら降りてくるどころか思考が落ちてしまって作業自体が不可能になってきたが(笑)。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・睡眠に関する研究が近年になってかなり進んでいる。
・筑波大学の国際研究の結果、たんぱく質のリン酸化が促進されているマウスが長時間睡眠をすることから、脳内にリン酸化されたたんぱく質が蓄積することで眠気が促されるということが推測された。
・また熊本県での実証実験の結果、睡眠のリズムの安定性が重要であり、改善することによって健康が促進されたとの報告がある(私は睡眠改善のための運動が原因と見るが)。
・さらに脳内の老廃物の排出にはレム睡眠が働いているとの論文が登場した。マウスの観察の結果、レム睡眠時に脳内の血流量が倍に増えることが観察され、この時に老廃物を処理していると推測される。そのことから睡眠不足は認知症に繋がる危険も考えられる。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・睡眠不足は身体にも脳にも良くないことは重々分かってるんですが、私は昔から慢性的な睡眠不足です。その上に最近は老化のせいか睡眠力が落ちて昔みたいにグッスリと寝られないんですよね。このまま行けば遠からず認知症でしょうか。最近は目に見えて記憶力の低下があるし。

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