友好国百済の救援のために援軍を派遣する
今回のテーマは日本国初の大規模な対外戦争といわれる白村江の戦いについて。
番組では海外調査として韓国に取材しているが、朝鮮半島で最近になって日本固有といわれていた前方後円墳が見つかっている(15基見つかっているとか)のだという。古代日本と朝鮮半島の交流があったという証明でもある。なお古代日本で流行した形態の太刀も見つかっているという。
この地を支配していたのが百済であり、当時の朝鮮半島は百済に新羅、高句麗が鼎立する三国時代であった。百済の聖王と言われる人物が日本に仏教を伝えたとされており、これは日本書紀にも記されている。百済は日本と友好国だったわけである。
それが660年に新羅と唐が手を組んで百済に侵攻、そして百済は滅亡する。日本は大化の改新の最中で天皇は斉明天皇、中大兄皇子が右腕として活躍している時代だった。百済で抵抗を続けていた百済復興軍が、日本にいた百済王子の扶余豊璋を百済王に擁立したいとの要請が来る。同時に日本に対して援軍の派遣を要請する。ここで日本は友好国だった百済を救うために兵を上げることになる。九州に宮を設けてかなり本格的に出兵することになる。
大兵力で乗り込むが計算違いが発生して大敗北を喫する
兵力については九州に向かう途中で豪族達の軍勢を徴兵して数万を集め、さらに輸送のための船については朝鮮半島式の輸送力の高い平底船を百済の技術で建造した。また現地協力者としては百済の将軍の鬼室福信が百済で奮戦していた。そこで鬼室福信の元に扶余豊璋を送り込み、日本は決戦を迎えることにする。
こうして663年に日本は白村江に大軍を送り込む。この兵は包囲されていた百済の城の救援のためだったのだが、それを唐船170隻が待ち構えていた。しかしここで日本にとって想定外のことが発生する。番組では現地を取材しているが、朝鮮半島の西岸は非常に干満の差が激しく(大きいところでは7メートルもある)、干潮時には沿岸は干潟になってしまい船が動けなくなるのだという。実際に船のコントロールが出来なくなったことは日本書紀に記されているという。また戦いの直前に扶余豊璋と鬼室福信が対立して、扶余豊璋が鬼室福信を殺害するという事件が発生していたという。一方の唐軍はかつての百済との戦いで現地の状況を知っており、地の利に決定的な違いがあったという。その結果、寄せ集めの日本軍は統制も乱れての大惨敗を喫することになる。
敗北した日本は唐軍の襲来を警戒して水城などの防御施設を築くことになる。これの建造には百済人が協力したのではないかという。また百済の再建が潰えたことで生存者は日本に渡ったという。実際に今も日本では鬼室神社なる神社があり、大学の責任者になったという。百済人が日本の改革に協力し、それによって日本は中央集権国家に生まれ変わっていくのだという。
以上、古代の白村江の戦いについて。日本はこの時に百済からの亡命者を大量に受け入れたことで、一気に文化や技術が進化したという側面もある。なお懸念されていた唐からの侵攻はなかったわけであるが、実際にこの時の唐にはそこまでの余裕はなかったろうし、唐も海を渡って侵攻してくるとなると、恐らく海岸線で日本に撃退されたのがオチだろうから、そんな無茶をする理由もなかったということだろう(唐は海を渡った日本に侵攻するぐらいなら、その前に高句麗を何とかしたかった)。
まあかように古代から日本と朝鮮の関わり合いが深かったということなんだが、その割には近年の日本の無茶のせいで両国間が未だにギクシャクしているというのは不幸の限り。そういうアホな対立はあまりに不毛であるので、そろそろ終わりにしたいところであるが。
忙しい方のための今回の要点
・660年、日本の友好国だった百済が新羅と唐の連合軍の侵攻で滅亡する。抵抗を続ける百済復興軍が日本にいた扶余豊璋を百済王に擁立したと要請したことから、日本は百済に対して援軍を派遣することを決定する。
・斉明天皇及び中大兄皇子は九州に宮を作り、途中で豪族達の兵力を吸収して数万の軍勢を集め、百済式の平底船を建造して兵を輸送する体制を作り上げる。
・また現地では百済将軍の鬼室福信が奮戦していたので、そのもとに扶余豊璋を送り届ける。
・663年、包囲された百済の城の救援のために日本は白村江に船団を送る。しかし朝鮮半島西岸は干満の差が激しいために干潮時には干潟となってしまい、日本軍は船の自由が利かない状態になってしまう。
・さらにはその直前に鬼室福信が扶余豊璋と対立した挙げ句に殺害されるという事件まで発生、百済侵攻時に現地の海岸の様子を熟知していた唐軍に日本軍は大敗北を喫する。
・百済が滅亡したことで、生存者の多くが日本に渡り、彼らは日本の改革に協力することになる。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・昔から朝鮮半島からの渡来人=高い文化を持った人々なんですよね。だから渡来人の末裔といえばエリートが多い。もっとも1000年も経てばルーツも何もないが。
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