教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

11/23 NHK あしたが変わるトリセツショー「育菌カードで育め!腸内細菌★健康&老化防止SP」

腸内細菌で健康長寿

 今回のテーマは腸内細菌。この腸内細菌を「育菌」することで健康を保つだけでなく、老化防止の効果まであるとする。

 まず登場するのは100歳以上の人口が全国平均の3倍という京丹後市。実際に取材に行くと元気な高齢者がゴロゴロといる(筋トレに励む80代とか)。そこで調査したところ、確かに健康であると言うデータが出ているのだという。そしてその秘密が腸内細菌にあるという。特徴としては酪酸産生菌を含むグループが京都の他の地域よりも10%も多いのだという。

 この酪酸産生菌の働きであるが、それを調査するために京都の薬品会社を訪れている。ちなみにこの会社、NHKらしく社名は言っていないのだが、出てきた社員の白衣の胸には「NOSTER」の文字が読み取れるようになっており、実際に同社のHPを覗いたら『NHK「あしたが変わるトリセツショー」の番組撮影に協力しました』との記載がしっかりあるという仕掛けになっている。毎度の如くのさりげない宣伝(笑)という奴である。

www.noster.inc

 で、同社が何をやっているかであるが、腸内環境を復元した実験装置を用いて腸内細菌の培養を行っているらしい。そしてこれらの菌の働きを観測する装置・・・は同社の秘中の秘ということで取材禁止なので、もっと古典的な試験管を用いた培養で再現を行ってくれているのであるが、酪酸産生菌が行う作用とは短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸、プロピオン酸など)を生成するというものだという。この短鎖脂肪酸の働きだが、腸内の免疫をコントロールするT細胞の原料になるのだという。このT細胞が働くことで腸内の免疫が効果的に雑菌などに対抗出来るようになるので、腸内の健康が保たれるということになり、これが老化防止につながるのだという。なおマラソン選手の腸内細菌をマウスに移植したら、マウスがよく走るようになったなんて実験もあるとか。

 

 

育菌で腸の環境を保つ

 こうなると腸内細菌を育成したいということで「育菌」になる。その際に重要なのは腸内細菌の餌になる食物繊維をキチンと摂るということだという。しかし実際は日本人は食物繊維は不足がちであり必要量を下回っている。先ほどの京丹後市の元気な高齢者の食生活を見ると食物繊維が多彩で十分な量を摂取しているのが特徴になる。まあそれを見習えば良いのであるが、突然に食生活を全く変えるというのは困難。そこで平均で見ると1日当たり6グラムが必要量に足りないことになるので、その6グラムを別途追加しようというのがこの番組の胆である。番組HPではそのための育菌カードなるものを用意しているとか。とりあえず多彩な食物繊維(特定のものに偏るのは良くない)に発酵食品を加えることで腸内細菌が育菌できるという仕掛け。

腸内細菌を「育菌」する

 で、最後はお約束のように腸内環境に不安のある人達がこの育菌カードを使った食生活改善に取り組んだところ、二週間後にはほとんどの人の腸内環境が大幅改善、肌のトラブルが減少した人などまで登場して目出度し目出度しというオチとなっている。

 

 

 なんか研究が進むにつれて食物繊維の効果が段々と重要視されてきたのを感じる。一番最初はビタミン万能主義思想が強い中で「消化もされないし栄養もないので食物の中で不要な存在」扱いから始まり、「消化はされないが胃の中で膨れるので食べ過ぎを防ぐし、便をかさ増しすることで便秘を防ぐ」という消極的評価をされるようになり、今や「腸内細菌の餌となるので積極的に摂る必要がある」まで昇格である。このように健康に関する情報は研究の進展によって評価が180度変わることがあるので要注意である。またそういうリスクを考えると、あまり極端な健康法というのは害が出てくる可能性があるということにもなる。

 例えば昔は酸素を取るほど疲労が回復して若さが保たれるとして、アスリートなどで酸素カプセルとかを使用する者などが多くいたが、今は「酸素は活性酸素を生み出して老化の原因となる得るので、出来れば必要以上に接触したくない」という状況になってきている。そう言えば酸素カプセルとかを使っていたアスリートがむしろ早死にする例なんかも出て来て、スポーツは身体に悪いなんて話まで出てくる始末(私はスポーツをプロレベルでやることは身体に悪く、あくまでアマチュアレベルで行うのが身体に良いと考えているが)。とにかく極端なことは避けるが賢明である。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・健康な高齢者の多い京丹後市の調査の結果から、腸内環境が健康長寿に関係することが指摘されている。
・特に京丹後市の高齢者の腸内は酪酸産生菌が多いことが分かっており、酪酸産生菌が産み出す短鎖脂肪酸がT細胞の材料となり、腸内の免疫をコントロールすることで老化を抑止すると注目されている。
・腸内環境を良好に保つには、腸内細菌の餌となる食物繊維の摂取が重要である。日本人の平均は1日当たり6グラムが不足しているので、それを補うことがポイントになるという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・私も野菜類が少ないので食物繊維は不足がちという自覚はあります。お通じの方も慢性的な下痢なのでかなり悪いです。ヨーグルトや食物繊維を組み合わせることで改善することは分かっているのですが、意外と持続が難しいの食事改善だったりする。

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