教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

12/10 TBS系 世界遺産「天空の古城とドナウの絶景」

ドナウ川に残る中世の風景

 ドイツから黒海まで全長2850キロのドナウ川。その中流の36キロほどがヴァッハウ渓谷である。ここはドナウ沿岸でもっとも美しいところと言われている。高さ300メートルほどの山々に挟まれた渓谷の沿岸には900年前ぐらいに建造された城が建つ。

 

 3月下旬になるとドナウ川沿岸にサクラを思わせるピンクの花が咲いている。10万本の木はすべて人の手で植えられた杏である。2000年前にドナウ川を通じて中国からこの地にもたらされた。今やこの地はヨーロッパを代表する杏の生産地だという。この地域は夏に昼夜の温度差が大きいことから甘味が増し、さらに川からの照り返しで木が温められて芳醇な香りになるという。

 

 

太古から交通の要衝として繁栄する

 この地はヨーロッパの東西をつなぐ交易の要衝だった。またこの地には古代ローマの防衛の拠点であり、城壁の遺跡も残っている。発掘現場からはワインを入れる容器なども発見されている。ローマがワイン造りの文化をもたらし、この地の斜面ではブドウが大規模に栽培されている。ここで産したワインは河川を通してヨーロッパ中に運ばれた。

 川沿いの山上には古城が残っている。この地は争いが絶えなかったことから、見晴らしの良い山上に城を築いて見張っていた。城を建てたのはこの一帯を支配してた貴族クエンリング家で、このような城が川沿いに9つあり、狼煙のネットワークで連絡をとっていた。

 ヴァッハウ渓谷の真珠と言われるイルンシュタインの町の背後の山にはデュルンシュタイン城が建っている。今や一部を残して廃墟となっているが、この城はドナウ川を監視して通行税を取る役割をなし、この税収が町を潤していた。今も中世の町並みが残るが、青い教会が有名で、これは船からも目立つようにと付けられた色である。

 この地には氷河期から人が暮らした痕跡がある。3万年前の地層からヴィレンドルフのヴィーナス像と呼ばれるふくよかな女性をかたどった石像が発見された。この像を造る石は遠方から運ばれたことも分かったという。太古から各地と交流していたのである。

ヴィレンドルフのヴィーナス像

 

 

忙しい方のための今回の要点

・ドナウ川中流のヴァッハウ渓谷は中性の風景が残る風光明媚な地である。
・3月になると中国からもたらされた杏の花が咲き誇る。この地は杏の大生産地となっている。
・この地は昔から交通の要衝であり、ローマ時代にはローマの防衛の拠点として城壁が築かれていた。またローマがこの地にワイン造りの文化をもたらした。
・争いが絶えなかったことから、山上には城が築かれて狼煙で連絡をとっていた。この地を支配した貴族クエンリング家はドナウ川の通行税を徴収することで繁栄した。
・またこの地で3万年前の地層から、ヴィレンドルフのヴィーナス像と呼ばれる石像が見つかっており、太古から人が居住していたことが分かっている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・ヴィレンドルフのヴィーナス像が日本で出土した縄文ヴィーナスと雰囲気が似ていることに驚いたな。やはりどこでも妊婦をモチーフとした繁栄の象徴のようなものは存在するんだな。

これがいわゆる縄文ヴィーナス

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