教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/10 NHK 歴史探偵「世界史スペシャル 古代ギリシャ」

いきなりのギリシャ特集

 新年第一回目(正月にやっていたくだらない大河ドラマ宣伝企画はカウントしていない)の今回は、新春スペシャルというわけか古代ギリシャがテーマ。何かの番組との合わせ技かと思ったら、一応この番組からレポーターを送っている模様。もっともその割には別に拡大版でもなんでもない中途半端な力の入れようがどうも脱力の気配がある。

 さてまずギリシャであるが、そもそもギリシャという強力な国家ではなく、地中海沿岸からエーゲ海、さらに黒海にまで及ぶ広範な地域での都市国家(ポリス)群がギリシャである。その中で中心となっていたのがアテネとスパルタ。と言うわけで、まずは番組では近田雄一アナが現地を訪問、アテネの象徴であるパルテノン神殿を見学している。

 

 

バル手ノン神殿は白亜の神殿でなかった

 パルテノン神殿はアテネの中心のアクロポリスの丘の上にそびえ立っている。今では大理石の柱しか残っていないが、元々はアテネの元となっている女神アテナを祀った神殿であり、内部には巨大で金ピカのアテナ像が祀られていたという。なおアテナ神の正式名称はアテナ・パルテノスであり、だからパルテノン神殿なのだとか。

パルテノン神殿

 また現在は白い大理石による白亜の神殿というイメージのあるパルテノンであるが、当時は顔料で着色されており、実はその顔料の一部が今も残っているという。当時は石像も顔料で着色されており、現在の白一色とはかなりイメージの異なる煌びやかなものだったという。またこれらの顔料は赤はエーゲ海のリムノス島、黄色は地中海のキプロス島、青は遠くアフガニスタンから(要するにラピスラズリなんだろう)持たされており、アテネが海上交易で繁栄していたことを示している。

 また神殿が今日まで残ったことだが、実はギリシャも日本に負けず劣らずの地震国である(火山の噴火なども多い)。そこでパルテノン神殿に阪神大震災の揺れをシミュレーションしたところ、倒壊しなかったという。その秘密は柱で、実はこの柱はドラムと呼ばれる高さ1メートルぐらいの円筒の台を積み重ねた構造になっているのだとか。これが微妙にズレることで揺れを吸収していたという。

 

 

海洋国家アテネの実力

 次はアテネの国力の秘密だが、当時の人口構成は成人男性4万、家族が10万、在留外国人が5万、奴隷が9万であり、労働は奴隷が担って成人男性は政治に参加することが務めであった。当時のアテネは直接民主制で、議論によって政治を行う体制となっていた。そしてそんな中から哲学などが発達した。

 また近田アナがローマ市民にコスプレして(それにしてもこれが驚くほど似合わない)、当時の食文化を再現しているが、交易によって各地から食材を仕入れていたので、かなり豪華なものであったとか。

 しかしそのギリシャに危機が訪れる。それが異民族の襲来。具体的に言えばペルシア帝国の侵攻である。紀元前5世紀にペルシアはギリシャに侵攻を開始し、ギリシャはそれに対して連合して対抗した。ギリシャの港であったピレウスには当時の軍船のドックの跡が残っており、そこでは全長40メートルの巨大な三段櫂船という軍鑑が建造されており、196隻分のドックが見つかっているという。

 なお三段櫂船とは櫂が三段になっている巨大な軍船である。この軍船の最大の武器が舳先の衝角という角であり、これを敵船の土手っ腹に衝突させることで敵船に穴を開けて沈没させたのだという。しかしその攻撃のためには三段櫂船を高い機動力で操縦する必要があり、そのためにアテネ市民が徹底的な訓練で自由に操船出来るようになっていたという。そしてその結果、380隻のギリシャ艦隊は、700隻のペルシャ艦隊に大勝利を収めたのである。

 

 


 以上、古代ギリシャについて。何かかなり唐突なテーマという気がしたが、次回はハワイとのことだし、この番組も路線を変えてきたのか? もっとも今回の内容って、歴史マニアには「何を今更」レベルの内容が多く、そういう点ではいかにもこの番組でしたが。

 まあそれでも何度も大河の宣伝されるよりは、まだこの方がマシだわ。もっとも今年は紫式部だけに、年頭の「歴史系番組全て大河の宣伝に動員」のせいで完全にネタが出尽くしてしまって、今後何かをやりようもない気もするが。なんせ既に新年冒頭の段階で各番組の内容が被ってしまっていたから。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・古代ギリシャはアテネやスパルタなどの有力都市国家の連合だった。
・アテネのアクロポリスの丘にあるパルテノン神殿は女神アテナを祀った神殿で、かつては巨大なアテナ像が立っており、さらに神殿自体も各地から取り寄せた顔料で着色されていた。
・パルテノン神殿の柱はドラムと呼ばれる1メートルほどの石の台を積み上げた構造であり、そのおかげで地震の揺れを吸収出来るようになっている。
・アテネでは労働は奴隷が担い、成人男性の仕事は直接民主制で政治に携わることだった。この議論の文化から哲学などが発展することになる。
・紀元前5世紀、ギリシャにペルシャ帝国が侵攻してくる。これに対してギリシャは衝角を備えた巨大な三段櫂船を多数建造し、練度の高いギリシア市民の操船で多数のペルシャ艦隊を殲滅して侵攻を退けた。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・ギリシャって民主主義の祖であるんですが、直接民主制はさすがに今日の複雑な社会には不可能だと言うことで、代議制になっているのですが、今日のその腐敗のひどさを見れば、何か新しい方法を考える必要があるのかもしれないです。
・まあそもそも今の日本の国民の多くって、奴隷身分に等しくされて、生活に追われて政治から意図的に目をそらされてますから。だからこそ政府は必死で国民の貧困化に勤しむわけなんですが。

次回の歴史探偵

tv.ksagi.work

前回の歴史探偵

tv.ksagi.work