教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/14 サイエンスZERO「自然が愛する六角形!偶然?必然?」

自然界には六角形が溢れている

 今回はサイエンスSixと名乗って、自然界に存在する六角形の秘密に迫る内容になっている。

 まず自然界に存在する六角形の1つとして昆虫の複眼が挙がっている。これらは六角形が敷き詰められた形になっているが、これは遺伝子によって決定されていると考えられていた。金沢大学の佐藤純教授はショウジョウバエを使った実験でその謎に迫った。彼も最初は遺伝子で定まっていると考えていたのだが、ある特殊なショウジョウバエに複眼が正方形のものがいることを発見したことから、発生の過程で定まるものであることが分かったのだという。そこでサナギの成長の過程を観察することで六角形になるメカニズムを解明しようとした。その結果、最初の個眼(複眼の1つ)はバラバラな形をしているのだが、それが成長していく過程で境界が六角形になっていくことを明らかにしたのである。

トンボなどの複眼は正六角形を敷き詰めた形になっている

 この六角形になるメカニズムだが、個眼がそれぞれ成長しようと周りと押し合いをする内にこの形に収まったのだという。というのも空間を敷き詰めることができる形は、正三角形、正四角形、正六角形の三種しかないが、同じ面積なら周囲の長さが一番短くなるのが正六角形であるという幾何学的な問題だという。

 同じく六角形を示すのが溶岩が冷えたときに出来る柱状節理がある。この場合も硬い岩が割れるのにエネルギーが必要なので、なるべく外周を短くするために六角形になるのだという。

 

 

六角形の蜂の巣の秘密

 そして六角形と言えば蜂の巣である。これはできる限り部屋を広くしてなおかつ壁が少なくなる形だからだという。しかし六角形であるが故の問題もあるという。それは蜂の幼虫には働き蜂の幼虫と女王蜂の幼虫があるが、後者は1.5倍ぐらい大きいのだという。そのために女王蜂の幼虫用に大きな部屋を作らないといけないのだが、それをすると六角形が敷き詰められなくなる。これの問題をどうやって解決しているのかを解決した国際研究者グループがいる。彼らの解析の結果、大きい六角形の部屋の集まりと小さい六角形の部屋の集まりの移行部分では小さい五角形と大きな七角形が隣接した部分があり、それが挟まることで小さな六角形と大きな六角形が整然と並ぶことが出来るようになったのだという。

六角形と言えば蜂の巣

 

 

 

自然界最大の六角形の謎

 最後は自然界で恐らく最大の六角形。実は土星の北極の周辺の雲の流れの形が六角形になっているという。幅3万キロもあり、地球が2つ収まるサイズである。これが六角形になっている理由だが、大気中のジェット気流が極地域では渦を発生させ、それがちょうど6つなので、その影響を受けて雲が六角形になるのだという。

土星の北極にある六角形

 なお身近なところでは煮立った味噌汁に生じる対流も六角形になったりするとのこと。

 

 

 以上、六角形という形にこだわった興味深い内容。数学的に見て六角形という形が安定性があるということは知っていたが、その結果としてあちこちに六角形が現れるということになるようである。もっとも人間が人工的に作った世界では、扱いやすい四角形が中心で、後はたまに三角形を見る程度。六角形の「頂点が多い」という性質が人が人工的に扱う場合には扱いにくさにつながるのではと感じられる。また正三角形と正四角形は、複数組み合わせた時に大きくなった正三角形や正四角形が出来ると言う相似性があるが、正六角形にはそれがないことも「収まりが悪い」ことにつながるように思われる。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・自然界には正六角形のものが意外にある。
・例えば昆虫の複眼は正六角形だが、これは実は遺伝子などで定まっているのではなく、角個眼がお互いに密集しながら成長する過程で、自然に安定な形として正六角形になるのだという。
・正六角形が安定なのは、平面を敷き詰めることが出来る正三角形、正四角形、正六角形の3種の図形の中で、正六角形が同じ面積の時には一番周囲の長さが短いことによるという。
・この理由で溶岩が冷えて出来る柱状節理も六角形をしている。
・また蜂の巣が六角形なのは、巣材をなるべく減らして部屋を広くするためと考えられるが、働き蜂の幼虫と女王蜂の幼虫とでは大きさが1.5倍ほど違うので、大きさの違う六角形を接続するのが難しいという問題が生じる。
・この問題について、途中で小さい五角形と大きな七角形を隣接させることで大きさの違いを吸収するという方法を取っていることが研究の結果判明した。
・自然界最大ではないかと思われる六角形としては土星の極地の雲の形がある。これはジェット気流の渦が極周辺に6つ出来るせいで出来上がった形だという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・蜂の巣の接続の話はなかなか感動さえ覚えましたが、あのパターンで接続出来るのは大きさが1.5倍前後に限った話でしょうから、もし女王蜂の幼虫がもっと大きかったら、違うパターンの接続が必要なんでしょうね。その辺り、数学的に考えたら面白そう。

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