教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/21 サイエンスZERO「ヒマラヤ大冒険!"悪魔の谷"誕生のナゾに挑む」

前人未踏の悪魔の谷の調査

 ヒマラヤには「悪魔の谷」と恐れられる幅は数メートルなのに深さは400メートルにも及ぶ地形が存在するという。最近になってここに日本の研究者が調査に乗り込み、その結果としてこの地形の誕生の秘密が明らかになってきたという。

 ちなみにこのネタ、昨年の7/30に実はNHKスペシャルで放送されており、要はNHKお得意のネタの使い回し・・・「放送素材の有効活用」という奴である。

www.nhk.jp

 

 

悪魔の谷の生成メカニズム解明に挑む

 「悪魔の谷」はヒマラヤ中央部の7000メートル級の山がそびえるアンナプルナ山群にあるセティ・ゴルジェのことだという。長さは数キロに渡ってあるが、幅の狭いところでは人一人がギリギリ通れる程度しかなく、それでいて深さは400メートルだという。その険しい地形のために今までどの調査隊も入ることが出来なかったという。

 長年に渡ってヒマラヤを研究してきた京都大学の酒井治孝名誉教授も、今までセティ・ゴルジェ周辺の調査は出来ず、この地域は空白地域となっているという。セティ・ゴルジェ生成のメカニズムとしては、氷河に削られた土砂が蓄積したモレーンが山の出口を塞ぎ、温暖になるとここに水が溜まって湖となったが、これが地震で決壊して水と土砂が一気に流れたときに浸食されたとの仮説を酒井氏は唱えている。この仮説が正しければ湖の周辺に土砂の堆積による縞模様の地形やモレーンの蓄積が見られるはずだという。

 2022年11月に調査が開始された。世界的な渓谷探検家の田中彰氏が協力して、パートナーの大西良治氏と共にセティ・ゴルジェの谷にカメラを持ってロープで降下して調査を実施した。その中で谷の周辺で大量の土砂が発見されたが、これは酒井氏によればモレーンではないかという。2月の2回目の調査では落石などでの危機に瀕したが、縞模様の地層などを発見した。これで目出度し目出度しかと思ったのだが、酒井氏によると実はこの縞模様の地層は湖の堆積物ではなく、5億年前にヒマラヤが海中で堆積した時の地層だったという。

 

 

新たな画期的仮説の登場

 湖の地層は見つからなかったが、そこから新しい仮説が浮上したという。それはセティ・ゴルジェの上にはエベレストクラスの巨大な山があったというものらしい。広い範囲でカタクラサイトという石灰岩質の岩石が発見されており、この巨大な山が地震で山体崩壊を起こしたことで広範囲にカタクラサイトが生成したのだという。そしてセティ・ゴルジェには元々基岩に溝があったところにカタクラサイトが600メートルの厚さで蓄積、それが後に雨で浸食されてセティ・ゴルジェが生まれたのだという。土砂の量から計算したら8000メートル級というエベレストクラスの山になったという。なお山体崩壊につながる地震による断層も発見されたという。


 以上、ヒマラヤの「悪魔の谷」の生成メカニズム。非常にダイナミックな話ではあるのだが、地味だな・・・。私はいわゆる地質マニアではないので、どうしても地質学関係の話は苦手です(笑)。今回のようなダイナミックな話を聞かされても「ふーん、そうですか」で終わってしまう(笑)。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・ヒマラヤの「悪魔の谷」と呼ばれるセティ・ゴルジェの生成のナゾに迫るために、日本による地質調査が行われた。
・調査は実際に渓谷探検家の田中彰氏が深い谷にロープで降りて実施された。
・その結果、セティ・ゴルジェ生成のメカニズムは当初に立てられていた仮説と異なるらしいことが分かってきた。
・新たな仮説は、セティ・ゴルジェの上流にかつてエベレスト級の巨大な山が存在し、それが地震で山体崩壊したというものである。元々基岩に割れ目があった上に厚さ600メートルのカタクラサイトが堆積し、それが雨などで浸食された結果として狭くて深い谷になったと推測されている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・やけに「カタクラサイト」という呼称がインパクトがあったのだが、片倉さんが絡んでいるのかと思ったら、Cataclasiteとのことですから、多分関係なさそうです。

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