DNA解析を劇的に簡単にするナノポアシークエンサー
今ではいろいろな分野に応用されているDNA解読であるが、その解読のための画期的な装置が開発された。それがナノボアシークエンサーである。
ナノボアシークエンサーのどこが画期的かと言えば、まずはその大きさ。かつてのDNAシークエンサーは冷蔵庫ぐらいの大きさがあったのに、ナノポアシークエンサーは手のひらサイズである。だからどこにでも持ち運び出来、宇宙ステーションでも使用された。さらに操作が簡単であり、番組では井上咲良がDNA解析に取り組んでいる。池で採取した水を加工し、それをセンサーの所定の場所にスポイドで落とすだけである。それだけでDNAが読み取れるので、その結果をデータベースで参照すれば、池の中にどんな魚が住んでいるかが分かるのだという。またかつては数千万円から数億円したのが、ナノポアシークエンサーは10万円台とのこと。
DNAを直接読み取れるので、医療面への応用も可能
ナノポアシークエンサーがこのサイズでDNA解析を出来る秘密はその構造にある。内部にある膜に分子レベルで1.5ナノの穴の開いたたんぱく質があるので、ナノポアだという。ここをほどけたDNAが通過する際の電流変化を解析してDNAの配列を解読するのだという。DNAを直接読み取るので長いDNAをそのまま読み取れるのが特徴だという。従来のシークエンサーはDNAを複製して断片を読み取ってからつなげていたという。だから同じパターンのくり返しであるリピート配列は従来のシークエンサーでは読み取りが困難だったが(同じパターンが続くので断片の接続が困難)、丸ごと読み取ることで解読が可能になったという。
さらにこのリピート配列の解読が遺伝子疾患の発症原因の解明に使用されている例があるという。遺伝性のてんかん患者の遺伝子を調査したところ、多様なリピート配列の違いが存在したという。これが症状や治療効果の違いに影響しているのではないかという。今後さらに多くの遺伝性疾患の診断や治療への応用が期待出来るという。また手術中に腫瘍のDNAを検査するなどという例なんかも行われているとのこと。
以上、どんどんと進化していくDNA解析の最前線。この分野の進歩の早さに驚く次第だが、番組中でも出ていたようにプライバシーの問題や倫理面の問題なども今後は大きくなりそう。下手すればもろに優生思想そのものに直結する恐れがある。銀英伝とかに出てきた「劣悪遺伝子排除法」とかが登場しかねない危険性を感じる。
忙しい方のための今回の要点
・今までのDNAシークエンサーは冷蔵庫サイズで数億円したが、手のひらサイズで10万円台という画期的なナノポアシークエンサーが登場した。
・これを使うことで宇宙ステーションなどあらゆる場所で簡単にDNA解析が可能となった。
・原理は膜に開いたたんぱく質のナノサイズの穴(ナノポア)をDNAが通過するときの電位の変化を検知することで配列を解析する。
・今まで方法と違ってDNAを断片にせずにそのまま読むので、同じ配列が繰り返すリピート配列の数を明らかにするなどが出来るのが特徴となっている。
・この特徴を利用して遺伝性疾患の診断や治療の研究に応用がされている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・いろいろと新技術の登場には驚かされるが、それにしてもあまりに画期的なのでこれいついては驚嘆だな。ただ何でも遺伝子に結びつけられる嫌な社会の萌芽を懸念しないではない。
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