教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

2/11 サイエンスZERO「未来の"船舶"開発最前線」

CO2排出削減のための電動船

 海洋国日本において、物流において不可欠の船舶(国内物流の40%を担っている)。最新の船舶開発の現状を伝える。

 まず井上咲良が取材しているのは最新鋭燃料タンカー「あかり」。この船舶の特徴は電動船舶であること。そのために機関の音もほとんどなくスッと動いているので、井上が動き出しているのに気がつかないぐらい。動力を担うバッテリーはEV100台分とのこと。これで12時間200キロ航行可能とのこと(やはりやや短い)。港でケーブルを利用して充電する。この電気にグリーンエネルギーを使用したら排出CO2が0のゼロエミッションを達成出来るということ。これは国際海事機関IMOが2050年までに温室効果ガス排出ゼロを掲げていることによるという。

 とは言うものの、全てが電動船で賄えるというものではない。そこで従来のCO2排出量の多い重油機関をLNGへの変更を進めているという。これでCO2が25%削減出来るという。さらに現在の船舶の省エネ技術の開発も進められている。

 

 

従来船舶の燃費向上技術と自動運航技術

 船の推進力の8割は実は水の抵抗で失われている。そこでこれを下げるために注目されているのは泡だという。泡を船体の周辺で起こすことで、船体周辺で発生する乱流を打ち消すことで水の抵抗が減少するのだという。実験の結果、通常の30キロの速度で泡の大きさが1~5ミリが最適と言うことが判明したという。ただこの泡をポンプで発生されているとエネルギー効率が悪いので、水中翼気泡発生器なるものを取り付けて泡を発生させることが出来る技術を開発して実証研究中とのこと。最大50%ぐらいは燃費を向上させられるのではという。さらにはコンテナ船に空気抵抗を減らすための流線型壁をつけるとか、帆を付けるとかの研究もなされているという。大きな船では一航海で1億単位で燃料費がかかるので、数%の燃費向上でも非常に影響は大きいという。

帆船タンカー

 さらに自動操縦の研究もなされている。実験船すざくの実証研究がなされて混雑する海域でも自動運行プログラムで安全に航行出来ることが確認されたという。さらにより困難な着桟(貨物船を桟橋に横付けすること)を自動で行う研究もなされていて、実験では成功を収めることも出来たという。これによって経験の浅い船員のサポートを行うことが考えられているという(人手不足の解消が目的のようだ)。2040年に実用化することが目標だという。


 以上、船舶開発の最前線について。コストなどを考えるとやはり船舶輸送は物流の要であるので、この分野の環境保護対応、さらに省力化というのは影響が大きいように思われる。海洋物流に対する依存度が高い日本こそ、こういう技術で世界の最先端を行くべきであろう。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・国際海事機関IMOが2050年までに温室効果ガス排出ゼロを掲げていることから、電動船の開発も進んでいる。最新鋭燃料タンカー「あかり」はEV100台分のバッテリーを搭載して、12時間の航行が可能。
・さらには従来船舶も重油機関をLNGにてんかんすることでCO2の削減を目指している。
・また従来船舶を省エネ化するために、泡を使った水の抵抗の削減技術の開発が進んでいる。
・さらに自動操縦の研究も進んでおり、自動着桟の実験が行われて成功している。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・泡で水の抵抗を減らすって聞いた時に「あまりに泡を出しすぎたら船が沈没する恐れがあるんだが・・・」と思ったんだが、まああの程度の量の泡だったら問題ないな。海底のメタンハイドレートの突沸なんかで船の周辺が大量の泡に取り囲まれたら、一時的に周囲の水の密度が大幅に低下したと同じ状態になって、瞬時に船が沈んでしまうという現象が起こるので(魔の三角地帯での船の突然の消失の原因の一つとして以前に挙げられていたことがあった)。

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