教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

2/11 TBS系 世界遺産「黄金の道と美しい島!ブラジル」

独自の生態系とゴールドラッシュの夢の跡

 ブラジルのグランデ島には独自の生物が生息しているが、対岸の港町のパラチーはかつてブラジルの18世紀のゴールドラッシュの時の金の輸送港である。


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 グランデ島は大西洋岸森林地帯の中にある。霧が立ちこめる森林は年中、暗く湿っている。シダが生い茂っておりいくつも固有種がいるが、地衣類も独自のものが生息している。かつては大陸の一部だったが、それが分離して孤立したものである。シロミミマーモセットなどの固有種の猿なども樹上で生活している。

通りがこのように浸水する

 対岸のパラチーは、干満の差で毎日水没するようになっている。ポルトガルが作った美しい白壁の街だが、水没システムは汚水を流せるようにするための設計だという。町丸ごとが水洗トイレというわけである。

 

 

内陸の鉱山から金を輸送して積み出していた

 パラチーは奥の山の中にある金の鉱山からの積み出し港で、ここから産出した多くの金がここからポルトガルに運ばれた。黄金の道と呼ばれた1200キロの道で入った内陸の都市がオーロ・プレット。ここに金の鉱山があった。ブラジルの黄金郷の別名もある。ここには黄金尽くしの大聖堂が残る。18世紀には世界の金の8割をブラジル産が占めていたという。黄金を積んだ運搬船は海賊の格好の標的であったので、海に睨みを効かせるための要塞もパラチーに残っている。

 パラチーにはアフリカから来た黒人奴隷のための教会もある。重労働を強いられた黒人奴隷は大抵は10年ぐらいで死んだという。あまりの過酷な労働に森に逃亡する奴隷も多く、そのような逃亡奴隷が作ったキロンボと呼ばれる隠れ村が森にあり、多い時には5000を超えたという。今でも末裔が生き残っており、ポルトガル語が強制された元でもアフリカの文化がまだ残っているという。一方、沖のグランデ島にある小さな村では先住民の子孫が伝統の漁で生計を立てている。しかしその伝統の文化も滅びる寸前であるという。ここでは先住民の文化とヨーロッパ、黒人奴隷が持ち込んだアフリカの文化が融合している。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・ブラジルのグランデ島には大西洋岸森林地帯に特有の固有の生態系が残っている。
・一方、対岸のパラチーは18世紀のブラジルでのゴールドラッシュの際に、ポルトガルが金の積み出し港として建設した。
・パラチーには1200キロの黄金の道を通って、内陸の鉱山都市オーロ・プレットから大量の金が輸送されていた。
・金の採掘などにはアフリカから連れてこられた黒人奴隷が使役されていたが、重労働のために10年ぐらいでなくなっていた。過酷な労働から逃走した奴隷達が森の中にキロンボと呼ばれる隠れ村を5000も作ったという。今でも末裔がアフリカの文化を伝えている。
・またグランデ島には先住民の子孫が暮らしている。彼らの固有文化はヨーロッパ文化やアフリカ文化と融合して独得のものになっている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・なんか番組ではかなりソフトに表現しているが、要するにヨーロッパによる凄まじい収奪の跡でもあるんだろう。そういう負の面にももっと注目すべきだろうな。

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