実は賢い動物だったタコ
今回はタコが実は高度な知性を有しているという話。そんなことは100年ぐらい前から分かっていて、彼らの仲間が火星で暮らしているということも知られています・・・って話では当然ない。
タコの知性を示す行動として、マダコが餌を求めて飼育員に水を吹きかけたなんて話があるというが、実際に知性を調べる実験としてタコの目の前で瓶に餌を入れて蓋を閉めたところ、タコは10分後にその瓶の蓋を開けて餌を手に入れたという。さらに同じ実験を繰り返すと蓋を開けるまでの時間が短くなって、ついには12秒で開けてしまったとか。
タコの知性を支えるクロスモーダル
タコの学習能力を支えているのは目だという。タコの目の構造は脊椎動物と類似している上に、タコの脳は視覚情報処理を担当する視葉という部分が非常に大きいという。さらにタコは他のタコが学習しているのを見て、自分も同じことをするという能力さえ有しているという。なお同様の能力はイカも有しているという。
またタコは腕を学習に使用しているという。タコに電子モニターで図形を見せて学習させる実験をさせたがトレーニングが出来なかったのだという。しかし同じ図形を触れるように立体的な図形を使用したところ、学習が成立し、その後には電子モニターの図形でも反応したのだという。つまりタコは腕で触ることで学習を強化しているのだという。実際にタコの腕には全身5億個の神経細胞の内の3億個が腕に存在しているという。このような複数の感覚を組み合わせることはクロスモーダルといい、それは以前にこの番組でも扱っている。なおクロスモーダルは脊椎動物には広く観察されるが、無脊椎動物ではタコなどごく少数しか存在しないという。
タコは夢を見ている
さらにはタコは夢を見ているのではないかという報告がある。睡眠中のソデフリダコを観察したところ、激しく体色が変化する動的睡眠と、ほとんど変化しない静的睡眠が存在するという。そこで睡眠中の脳波を調べたところ、静的睡眠時は脳の活動が穏やかだったのに対し、動的睡眠では記憶などを司る部分が活性化していたのだという。これは我々のレム睡眠と非常に類似している。タコの研究自体が一般的知性についての理解に繋がるのではないかと期待されている。
以上、たこ焼きが美味いだけではないタコの能力でした。なおタコは高タンパク低脂肪なので食品としても優秀です(コレステロールが多いという話があるが、通常問題になるレベルではない)。
このタコが瓶の蓋を開けるという実験は、以前に何かの番組で見て「マジかよ」と驚いた記憶があるんだが、果たしてどの程度の知能があるんだろうか。そう言えば外国にワールドカップの予想をするタコがいたな(笑)。ただあまりタコの知性が高いと言いだしたら、どこかの過激な自然保護団体が「知的生命体であるタコを守れ」「タコにも人権を」「たこ焼きなどの野蛮な文化は根絶する必要がある」とか言い出しそうだから、それは勘弁願いたい。
忙しい方のための今回の要点
・タコは実はかなり高度な知性を持つという研究がされている。
・タコに瓶の中に餌を入れて蓋をするところを見せたところ、10分で蓋を開けて餌を入手した。しかも繰り返すと段々と早くなり、ついには12秒で蓋を開けるようになってしまった。
・タコの知性は発達した視覚によると考えられるが、同時に腕の触覚をも利用してクロスモーダル現象で知力を高めていると推測されている。
・またタコには人のレム睡眠に類似した行動が見られ、これもタコの知能の高さを示すものと考えられている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・本当にタコの知能が高いのだとしたら、デビルフィッシュってのもあながち的外れでもないかもな。デビルと言うからには知能が低かったらダメだし(笑)。
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