教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

2/14 NHK 歴史探偵「平将門 平安の反逆児」

将門の強さの秘密

 今回は平安時代に叛逆し、討伐されたものの未だに関東最大の怨霊とされている平将門である。

平将門像とされる肖像

 平将門は有名である割には資料が少なくてその実態が知られていないという。まずは将門の強さの秘密に迫っている。将門はまず馬の戦いに非常に長けていたという。それはこの地域に国営の馬の牧場があったからだという。関東のこの地域を掘ってみると、古い地層にはアルミニウムが多いために植物に必要なリン酸と結びつくことで、農耕には向かない土壌であるという。しかしアルミに強いススキなどは生息出来ることが出来、さらには沼知の中州に牧場を作ることで馬の飼育が容易だったから、それが関東に馬の牧場が多かった理由だという。また東北の蝦夷は馬を操るのが巧みであり、父と北方の鎮守府などに行った際にその戦術を学んだのではないかという。

 さらに将門の地元は湿地に水路が入り組んでいる地域であり、これは東北からの産物を京に送る際の重要な中継地となっており、それが将門が強力な経済力を有する理由となり、これがまさに将門の力に結びついたのではないという。

 

 

心ならずも反乱することになり、不運に倒れる

 では将門が乱に及んだ理由であるが、古代の気候を分析したところ、将門の時代には千年ぶりの大干ばつ期に当たるという。干ばつによる困窮が起こった上に、国が国司の権限を強化して国に納めた税の残りを国司が所有することが出来るようにしたことで、民から収奪する国司が地方の豪族と対立するという事件が多発したのだという。将門は国司と同じ力を持つ者としてそれを仲介する役割をなしていた。しかし常陸で起こった国司と豪族の対立の仲裁に出かけた将門が、相手の激しい挑発で国司を攻撃する事態に至ってしまい、これが反乱と取られたのだという。

 破竹の勢いで関東を支配下に収めた将門であるが、結局は2ヶ月ほどで鎮圧されてしまう。将門の敗北の理由であるが、盾が倒れるような強風の中の戦いで風下に陣取ることになってしまったからだという。番組では実際にそれを再現するべく実験を行っているが、盾が倒れるほどの風は風速10メートル/秒ぐらいの風であると推定、実際にその風に向かって矢を打ってみているが、無風状態よりも矢の射程は数メートルも短くなる上に狙いを付けること自体が難しく弓矢は力を発揮出来ない状態であることが分かったという。

 さらに合戦が農作業の時期に当たることから、多くの兵を地元に帰してしまったことで兵力も大幅に減少していたという。これらの条件が重なったことが将門にとっての不運であったという。

 なお将門を討ち取った平貞盛の子孫が平清盛であり、将門の謀反の報告をした源経基の子孫が源頼朝であることから、この事件は後の歴史につながっていくことになるのだという。

 

 

 以上、平将門の反乱について。関東の怨霊として有名になりすぎたせいで、どうも凶暴でおどろおどろしい人物のイメージが作られているが、実際は地域に根ざした実力者であり、当時の世の不条理を一身に背負って決起した人物であったと私は見ている。平将門と言えばやはり加藤剛が演じた大河ドラマ「風と雲と虹と」が記憶に残っているのだが、私の平将門像はあれで加藤剛が演じた将門に近いものである。

 そう言えば、今改めて平将門こそ大河ドラマに取り上げてもよい人物の気がするのだが、やはり忖度NHKとしては理不尽な中央権力に刃向かった人物を主人公にするのはマズいのか。まあ今時のあからさまに予算も能力も落ちているスタッフが、大幅劣化版の将門をドラマ化してかつての名作に泥を塗られることになっても苦々しいし・・・。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・平将門の強さの秘密は馬での戦闘に長けていたことだが、それは当時の関東に国営の馬の牧場が多かったことと、将門自身が蝦夷の騎馬戦術を学んでいたのではという。
・さらに関東は東北と都との交易の中継地であり、それが将門を経済的に強くした。
・当時は大干ばつ期なっており、庶民が貧困化しているのに国司の税の収奪が強化されたことで、国司と豪族との対立が激化、将門はそれを仲介する役割を果たしていたが、ある時に国司の挑発で戦闘に及んでしまい、それが反乱と取られたという。
・将門の乱は2ヶ月ほど鎮圧されたが、それは戦いの際に将門の軍勢が風下に陣取ることになってしまい、弓が威力を発揮出来なかったからだという。
・さらに農繁期にさしかかって多くの兵を地元に帰してしまっていたことも敗因となった。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・大河ドラマでは最終回に将門が乱戦の中で矢でこめかみを射貫かれて倒れるのだが、その矢が頭に突き刺さってから落馬するまでが延々と走馬燈で引っ張ったというのが有名な話です。
・あの時代の大河ドラマは見応えがあったな。セットは結構安作りなこともあったんだが、やはり役者の力量が違うし、脚本もしっかりしていた。今はその辺りが滅茶苦茶。まともに時代劇を出来る役者がいない上に、シナリオも呆れるほど稚拙。

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